ママの「鬼くるよ」発言は逆効果!子どもの怖がりが加速する!?

ママの「鬼くるよ」発言は逆効果!子どもの怖がりが加速する!?

前号「5歳の子の怖がる心理」では、子どもがいわゆる「怖がり」になるまでの過程についてお伝えしましたが、いったん、お化けや暗闇を怖がるようになってしまうと、ママも子どもも大変です。できるだけ避けたいですよね。今回は、ママがしつけの際にうっかり言ってしまいがちな発言にクローズアップし、その有効性や恐怖心との関係について、心理学に解説していきます。 

日経DUAL記事

言う事を聞かせたくて出るあの発言が、結果的に仇となる!?

「うちの子、暗闇はだめ、お化けも怖い、本当に困っちゃう…」

しかし、そのきっかけを、ママ自身が作ってしまっていることが少なくありません。たとえば、こんなことを言ってしまうことはありませんか?

「あんまり泣いてると鬼が来るよ」


「早く寝ないとお化けが出るよ」

このような言葉を発した後、「ピタッと泣き止んだ!」「すぐに寝てくれた!」。こんな即効性が得られると、ママは、「困ったときの鬼頼み」になってしまう傾向があります。しかし、これを繰り返し使っていると、段々とその効果がなくなってくるばかりか、悪影響が出てきてしまうことがよくあります。

「お化けが来るから早く寝なさい」で早く寝るのか?

その悪影響とは、「お化け恐怖」「鬼恐怖」です。

ママは、「〇〇しないと、お化けが来るよ」とおどかせば、びっくりして言うことを聞くだろうと思って、そう言います。ママは、「〇〇」を一刻も早くやってもらいたいから、効果音的に「鬼」や「お化け」を使っているに過ぎないのですが、子どもには、それらがもっと大きなインパクトとして響くため、そこに気持ちが囚われてしまいます。そして、ママがその言葉を繰り返す度に、鬼やお化けへの恐怖心が増してしまうのです。

実際、子どもに、「早く寝ないとお化けが来るよ」と言って、子どもは早く眠りにつくことができるのかと言えば、その効果は、せいぜい数回でしょう。それ以降は、お化けが来たらどうしようということが気になって、逆に寝つけなくなるケースがほとんどです。

しかも、前号でお伝えしたように、「恐怖症」というのは簡単に拡大します。その子の中で拡大するだけでなく、たとえば、お兄ちゃんがお化けを怖がるようになると、その様子を見た弟にも伝染し、同じように「お化けが怖くて眠れない」「1人じゃ暗いところに行けない」ということが簡単に起こってしまうのです。こういう状態になって困るのは、ママ。夕方の忙しい時間に、「ママ、2階に一緒に行って」、夜中に、「ママ、トイレについてきて」と、結果的にママの首を絞めてしまいます。

8歳までに怖いものを作らない工夫を

このように、「鬼」や「お化け」などの恐怖症になりやすい対象は、しつけのときに使うと、ほぼ100%悪い方に転じます。たとえはじめのうちは効果があっても、時間が経てば、その即効性もなくなり、やがては悪影響のみが残ります。結果的に、子どもの自立や行動範囲を狭めてしまうのです。

「鬼」や「お化け」などの言葉以外にも、頻発すると、子どもの心を狭めてしまうものがあります。たとえば、「〇〇に行ったら怖いよ」「〇〇は怖いからダメだよ」もそうです。ママがあらゆることに「怖い、怖い」を多発すると、その子も、「これは怖いものなのだ」「これは用心した方がいい」と警戒心を強めてしまう傾向があります。なぜなら、言葉を覚えていく幼少期は、ママが発する言葉も覚えますが、同時に、その裏に根づくママの考え方までもスポンジのように吸収していくからです。

世の中をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかという「思考スタイル」は、生まれつきの部分もありますが、親から受ける影響、とくにママからの影響が大きいことが分かっています。その影響は、だいたい8歳くらいまでの間がもっとも大きいので、その時期にママが「怖い」と言ったものは、子どもにとっても「怖いもの」になっていく傾向が高いのです。

わが子が、世の中は怖いものだらけだなんて思っていたら、イヤですよね。本当は自立させたいのに、逆にママから離れられなくなるという事態になりかねませんので、しつけのときに使う場合は、「本当に怖いもの(例:道路に飛び出す、包丁に触る)」に使うにとどめ、余計な恐怖心をあおらないようにするのがおすすめです。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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