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壮絶なアメリカ大学受験【学力+人間力+財力+時の運】が鍵を握るシビアな事情

壮絶なアメリカ大学受験【学力+人間力+財力+時の運】が鍵を握るシビアな事情

USの公立高校キャンパス

アメリカの12年生(小中学校8年、高校4年の最終学年)の3月は、大学受験の結果が届きはじめ、受験プロセスの最終段階を迎えています。

アメリカでは公立であれば高校まで入試はありませんが(一部の特殊選抜公立高校・私立高校を除く)、大学受験は5,000校以上あるといわれる全米の学校から志望校と専攻を絞り、願書を提出する長期プロジェクトです。

1.住む地域の選択から受験準備がスタート

アメリカでは、大多数の家庭が居住地域の公立高校に通いますが、試験なしで入学できる公立高校にもランキングや評価が存在します。優秀校の学区は不動産価格が高く、固定資産税(物件評価額の1.5~2%、年間)が学校運営の財源で、不動産を通じて学費を払っている構図です。

一方、独自のカリキュラムや宗教をバックグラウンドにした私立校、ボーディングスクール(寄宿舎高校)という選択肢もありますが、学費は年間数万ドルです。

ランキングの高い優秀高校ならばいい大学に入りやすいかというと、そうとも言いきれません。これは、かえって学校内相対評価の成績が取りにくい、大学側が多様性重視の観点からいわゆるエリート校からの合格者を制限する傾向にある、などが理由です。

2.総合力が評価されるAO(アドミッション・オフィス)入試

アメリカの大学受験は試験一発でなく、AO入試、つまり出願者の人物像を学校側の求める学生像(アドミッション・ポリシー)と照らしあわせて合否を決める方法で、以下の5本柱で出願します。

①高校の成績(GPA, Grade Point Average、全科目の平均点)
②SAT, ACT, PSAT等、学外機関が実施する大学能力評価テスト
③学校外のスポーツ・芸術・社会活動等における実績
④推薦状
⑤エッセイ

高校の成績と標準テストの点数で受験する大学のレベルが概ね決まりますが、同じ大学には同じような成績の学生が出願するため、そこで差はつきません。なので、③、④、⑤が総合的に判断され、合否が決まります。

学校によって異なる基準、多様性の観点からのバランス(人種、高校、出身地域など)、そしてアドミッション・オフィサー(入試担当官)の主観もあり、“偏差値”的な指標で合否を予測するのは困難です。

こんな完璧なのに不合格?なんでこの人が合格?と、一般的な受験の感覚からはほど遠い様相を呈しています。

3.知力・体力・戦略が問われる高校4年間

上記の①~⑤をそろえるべく、9年生(日本の中学3年生)から始まるアメリカの高校生は多忙を極めます。

まず、学校の平均評点(GPA)に関しては、得意分野、将来の専攻、先生の評判(評点が厳しいか)なども考慮して選択科目を選び、学校内クラス分けテストを経て、レポートなどの課題、期末テストで評価されます。

成績優秀者は、AP(Advance Placement)という大学の単位として認められる上級選択科目を履修します。論文形式の課題など内容は高度で、受験する大学・専攻によっては条件となっている科目があったり、難易度が高いためかえって成績が落ちる可能性もあったり、選択には戦略が問われます。

同時進行で、微妙に異なるSAT、ACT、PSATといった複数の大学能力評価テストへの対策には、塾や家庭教師を活用するケースも多いです。何度か受けて最もよい点数を大学に提出します。

そして、勉強以外に情熱を持って取り組んだ活動が必要です。スポーツ、芸術、サイエンス系などの大会での実績は鉄板で、生徒会活動、地域活動でのリーダーシップ、ボランティア活動などでの差別化も効果的です。

とくにスポーツで傑出した学生には大学のチームから声がかかる『スカウト』というシステムもあります。

受験準備が本格化する11年生(高校2年生)になると、推薦状とエッセイにとりかかります。推薦状を書いてもらう学校の先生やクラブ活動のコーチには、日頃から自分をアピールし、良好な人間関係を構築しておくことが重要です。

肝となるエッセイには、学校内外の活動や実績、自分の育った環境や人格などを折りまぜながら、ドラマティックに、しかし盛りすぎず、読み手の心を震えさせるべく何度も校正を重ねます。

4.最後のハードル:学費援助の獲得

ここまででも目が回りそうですが、最後に避けて通れないのが『学費』です。アメリカの大学は私立で年間約500万円(居住州の州立大学の場合は150~200万円)プラス寮費・生活費、4年間トータルでざっと2,000~3,000万円はかかります。

アメリカでは公費(国や州)または各大学からの学費援助(支給)があり、各大学の原資、家庭の財政状況、成績によって、平均すると学費の30%前後、場合によっては全額補助がでます。

公費支給と大学支給、両者とも申請には税務申告書をベースとした膨大な記入事項があり、より多くの援助を獲得するために、大学受験年の世帯課税所得をさげる指南本まであるほどです。

支給額は合格と同時に通知され、額の増額を交渉したり、まかなえない部分は学生ローンを組み、財政面のハードルを越えて晴れて入学となります。

学力のみならず人間性と戦略、そして巨額な学費の工面までも問われる大学受験は、高校生そして親にも壮絶なプロジェクトですが、その後社会で生きてくための「訓練」という意味では、試験一発の日本よりも優れた制度かもしれません。

大学受験に関する指南本

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著者プロフィール

世界35カ国に在住の200名以上のリサーチャー・ライターのネットワークをもち(2017年12月時点)、企業の海外での市場調査やプロモーションをサポートしている。

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