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NYの私立小学校の子どもの必須スキル?!この夏、実践したいあの脳トレゲームとは?

NYの私立小学校の子どもの必須スキル?!この夏、実践したいあの脳トレゲームとは?

NYの富裕層、とくに私立校に通っている子どもたちの必須スキルといえば、チェス。授業後のアフタースクールにも組み込まれていたりと、メジャーな習い事でもあります。

チェスはボードゲームの一種ですが、脳にもよく、日本でいう将棋に近いものです。夏休みにはチェスのトーナメント戦が毎年、全米で行われることもあり、定期的に自分の実力を試す機会にも恵まれています。

オンラインゲームなどのデジタルを使ったゲームが主流とみられがちなアメリカですが、アナログで伝統的なゲームも根強く残っています。この記事では現地ならではの事情とともに日本でもこの夏取り組めそうな実践法をお伝えします。

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1. 欧米の子どもたちとチェスの関係性とは?

チェスは古い歴史を持ち、古代インドの戦争ゲーム、チャトランガがそれぞれ東西に渡り、東洋では将棋、西洋ではチェスになったといいます。ルールや形状が異なる部分も多いため、将棋とは似て非なるものであり、日本では子どもの教養として学ぶ人は少ないのではないでしょうか。

なお、将棋界のスターである羽生棋士はチェスでもその実力を発揮していて、国内では最強クラスだそうです。ゲームを制すためには、戦略と戦術が必要であり、知的なスポーツ、芸術、科学ですらあると考えられています。

2019年現在、世界で2,500万から3,000万人の競技人口を誇るチェス。NYでは、公園にチェス台がいくつもあり、休日には知らない人同士が対戦し、交流している姿を見かけます。

私立校の教育熱心な両親の間では、ピアノやバイオリン、その他スポーツと並んで、チェスはアフタースクールや習い事としても非常に人気です。それはチェスを習うことは、知能の向上と関連があると考えられているからです。

また、チェスはゲーム感覚で学べるので、子どもたちも楽しみながら、さまざまなスキルを身につけることができます。

6月に年度末を終えて、アメリカの子どもたちは2カ月強の長い休みに入ります。宿題はないため、1〜2週間ごとにスポーツ系、芸術系、言語系などあらゆる種類のサマーキャンプに参加するのが主流です。

そのなかでも毎年人気なのがチェスのキャンプ。朝、指定のところに子どもたちを送り届けると、朝から夕方まで先生からの指導、先生や友だちと対戦プログラムという1日チェス漬けの日々。

グランドマスターと呼ばれるチェス選手の最高位の称号があり、そのタイトルを勝ち取ったコーチ陣が指導する特別なチェスプログラムもあります。

2. チェスの魅力って何?

まず、幼い頃からチェスにふれることで、並外れた記憶力を身につけることができます。子どもたちはチェスを通して、ルール、駒の役割、特性などを、おぼえていきます。

塾などに通ってアルファベットや数字を詰め込むよりも、無理なく、自然に楽しく記憶力の幅を拡げていけるのです。

また、ドイツでは、チェスプレイヤーがチェスの位置や幾何学的形状を確認するときに、脳の左右の半球が活発になったという調査があります。チェスの位置を脳で迅速に判断し、駒を置く決断をすることで、左右の脳を使い、自然に脳トレをしているのです。

この調査では、暗記や論理的思考のために使う左脳と、感覚的、空間認知能力を司る右脳が素早く反応していることが明らかになりました。

また、チェスは集中力と学力の向上を助けます。チェスなどの脳を使うボードゲームは、脳のニューロン細胞からシグナルを送り出し、身体の成長を刺激します。その樹上突起が多いほど、脳内の神経伝達が向上し、早くなります。

チェスはこの発達をも助けるという研究がアメリカ国内で発表されています。さらに、IQの向上の可能性も考えられます。4,000人のベネズエラ人学生を対象にした調査では、4カ月間のチェス指導後、男女ともにIQのスコアが大幅に上昇しました。

チェスで遊ぶうえで必要なことはたくさんあります。

自分の頭のイメージを具現化すること、相手の表情や仕草を考えて察する力、盤面上の駒の動きを分析する力、自分の番になったときにどの位置に駒を置くかを決める力、それに伴う先を読む想像力と判断力。これらが身につくとIQが高くなるのはもちろん、人生における問題処理能力、論理的考察力、子どもたちが成長して大人になるうえで必要な力を育てることにつながっていきます。

加えて、精神面でもよい効果が見られています。

機械ではなく人と対峙し、対戦することで得られるコミュニケーション力、自尊心、勝ったり負けたりすることで得る自信や悔しさから学ぶセルフコントロール力が子どもたちの成長過程において、人間関係の構築に役立つといいます。青年期に発達する脳の最後の1つに判断力や自己管理を司る部分が前頭前野にあります。

チェスをするには戦略と、クリティカルシンキング(批判的思考)が必要であるため、その部分の発達を促し、青少年による無責任な行動などを防ぐという意味でも、チェスは最適と考えられています。

最後に、親や祖父母世代にもメリットがあります。チェスはアルツハイマー病などの予防にもなるのです。

メディシンオブイングランドジャーナルによると、75歳以上の人々でチェスなどのボードゲームをしない人よりもする人の方が、痴呆症やアルツハイマー病の進行が遅くなるという統計が出ています。

脳は使わなければ衰えます。このことから、身近な大人たちが子どもたちにチェスを教えて、共に対戦することがどちらにもいい影響を与えてくれるといえます。チェスは 子どもたちの成長発達、大人たちの老化退行に影響をおよぼす、魅力的なアクティビティなのです。

3. でも日本でどうやって取り入れる?チェスはハードルが高いのでは?

冒頭でもふれたように、日本版チェスともいえるのが、将棋と囲碁です。この2つはチェスと同じような効能があることが証明されています。

脳科学者の茂木健一郎氏も5歳のときから囲碁をたしなみ、今でも1日5分はしているそうです。優先順位を考えるのが難しく視野を広く持つ必要のある囲碁は、経営や人生に必要なことを学べます。

また、論理的な思考を育てる将棋は、理系向きと言えるでしょう。最近では、東大を含む6大学に加え、国立の埼玉大、青学など、囲碁を授業に取り入れている大学が増えています。

また、中央区の小学校でも導入されています。クロスワードや楽器の演奏、読書に加えて、チェス、囲碁、将棋などを遊びに取り入れることが記憶力や脳の発達や衰え防止に効くのです。

ルールを学ぶ必要は事前にありますが、対戦は今やコンピュータやオンラインでも気軽にできます。受動的なテレビや攻撃的で過激なオンラインゲームに夢中になる前にこういったゲームを教えてあげられるとよいのではないでしょうか。

両親が子どもたちとともにゲームをするのも家族の絆を深めるのによいでしょう。あるいは、仕事が忙しく、なかなか難しいという方はぜひ、おじいちゃん、おばあちゃんとお子さんが将棋や囲碁に取り組んでみるのはいかがでしょうか。この夏休み、ぜひトライを。

参考文献: https://www.healthfitnessrevolution.com/top-10-health-benefits-chess/

著者プロフィール

世界35カ国に在住の200名以上のリサーチャー・ライターのネットワークをもち(2017年12月時点)、企業の海外での市場調査やプロモーションをサポートしている。

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