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全米トップ10に入る「超名門私立校」の授業を特別取材!「できる子ども」が育つ「秘訣」を紐解く!!【前編】

全米トップ10に入る「超名門私立校」の授業を特別取材!「できる子ども」が育つ「秘訣」を紐解く!!【前編】

アメリカ合衆国の進学校トップ10のうち、半分がニューヨークにありそれらはすべて「インディペンデントスクール」と言われています。キンダー(5・6歳)から8年生、または12年生までの一貫教育でマナー教育から始まり、自立を促し将来を見据えた教育に長けています。

今回はその名門校に取材許可をいただき、高額な授業料の対価として得られる教育のリアルと実際に行われている授業風景を前後編にわけてお伝えします。そこから、「できる子どもを育てる秘訣」を見ていきたいと思います。

日経DUAL記事

インディペンデントスクールとは?

インディペンデントスクールは日本でいうところの私立校の一種で、運営においても保護者が支払う授業料と寄付金(卒業生含む)で成り立っている学校です。

アメリカでは、政府や自治体の予算によってカリキュラム変更が行われることもあり得るので、学校方針や授業カリキュラムなどを学校側が独自に決定でき、安定しているインディペンデントスクールは受験をさせても入れたいと考える保護者が多いのです。

学校側に決定権があるので、対象生徒を受験によって選抜もでき、さらに在学中に基準を満たせず、不適合とみなされた生徒は停学や退学ということも当然あり得ます。

教育に関しても学習内容、例えば、歴史の年号や地理の国名、英単語・漢字などと言ったものを単に記憶させる「暗記型教育」とは異なり、遊びを学びに結び付けていく「実践型教育」という方法を取っています。

そのため、子どもが勉強嫌いになりづらく、将来的に社会で必要なスキルを身に着けていくことができるようにも工夫がなされています。

※気になる私立校受験に関しては、こちらをご覧ください。

学校で行われている授業の進め方

このインディペンデントスクールには、日本でいう「朝の会・帰りの会」のような「サークルタイム」と呼ばれる時間があります。

キンダーでは後述の科目がないので、このサークルタイムで先生がお話を読んだり、道徳心を考える質問が投げかけられ、それをみんなで考えたりします。

小学校低学年では、授業の前後に子どもたちが円を作って座り、‟今日は何曜日? 何日? 天気は? 昨日はどんなことをしたか? なにを食べたか?”などを発表して共有しあったり、指や体を使って歌ったりします。

実際、スクールで行われる授業は日本と異なり知識はともかく、より踏み込んだ本質的で実践的な学習と言えます。

ただ、暗記し知識を詰め込むのではなく、その内容の背景や根底にあるものを子どもに「考えさせる」ニュアンスです。そのため、英語(国語)の授業においては、「Reading(読解)」と「Writing(作文)」と2つにわかれています。

そして、「Mathematics(算数)」・「Science(理科)」・「Social Studies(社会)」・「Physical Education(体育)」・「Music(音楽)」・「Arts and Crafts(図画工作)」があり、その他にも季節や国民の休日イベントに合わせたクッキングなどが追加されます。

以下では、それぞれの科目がどのような流れと内容で行われているか、具体的に見ていきましょう。

それぞれの学習科目における実際の内容①『国語(英語)』

国語その1/Reading(読解)

先生が読んだ本を聞き、知らない単語の意味を学びながら「チャプター」ごとに授業を進めていきます。アメリカの国語では「クリティカルシンキング(批判的思考)」を育てることに力を注いでいます。

「クリティカル」を直訳すると「批判」という言葉で、ネガティブなイメージを持ってしまいやすいかもしれませんが、ここでの言葉の意味は「情報を分析」し、物事を「客観視」し、「本質を見抜く」ということで使われています。例えば読まれた本において、

1 登場人物がどんな性格か
2 登場人物たちの行動の理由
3 この先の物語がどう展開していくかの予想
4 読み終わった感想
5 お話の要約
6 物語のコンセプトやテーマが何だったか、そしてそれはどの文章でわかるか
7 自分が作者だったらどのように結末を結ぶか

これらを中心に、書かれている文章を分析して、書かれていない心理描写を汲み取る力、それを自分で表現する力、物語を読み進める間に次に起こることの予測、本には書かれていない創作、これらの部分にかける時間を重視しています。

日本のテストの設問は、多くが答えは1つで本文中にあり、抜き出して書くことに比べるとその「思考」を重視している内容がわかるかと思います。

国語その2/Writing(作文)

ライティングでは、アルファベットの正しい発音から言葉のスペルを導き出し、言葉の意味を学び、プリントワークでいくつかの選択肢から答えを選ぶと言ったことをします。これはベーシックで、日本の教育で言うところの漢字の読み書きや意味を理解する部分にあたります。

低学年では、習ったアルファベットから始まる言葉や使われている言葉で、短い文を書くことから始まり、中学年以降になると語彙力を伸ばすため、その日学んだ単語を盛り込んだ文章やテーマに沿った文章を書いたりします。

ここでは起承転結とまではいきませんが、物語がいつ、どこで、だれが、なにをしたかなど、話の流れを組み込むことが大事にされています。

ちなみに今回は、もし世界中どの国でも行けるとしたら、どこに行って、何をする? ということをテーマに文章と絵を描いていました。

日本の国語にも、漢字や作文の練習として「クリティカルシンキング」の要素は多少ありますが、「リーディングで討論をしライティングで作文を書く」という2科目にわかれて強化しているアメリカとは、年間カリキュラムに組まれる量が大きく違います。毎日必ずクラスがあり、学年に比例し難易度は上がっていきます。

個々が意見を持ち物事を柔軟に考え、自分の意見を主張するという、社会へ出た時にも必要かつ重要であるこのスキルを行う大事な訓練でもあります。

3、4年生ぐらいから社会や理科と絡め始め、5、6年生になると政治的なトピック、例えば、大統領選挙ではどちらに投票すると思うか、投票したいか、その理由も含めて考えた意見を文章にする課題なども出てきます。

ちなみに日本で育ち、大人になって渡米した筆者は、この「リーディング」と「ライティング」、そして「クリティカルシンキング」をニューヨークのコミュニティカレッジで学びました。

その際は、アメリカの児童文学では欠かせない小学校中~高学年向けの本で「トムソーヤーの冒険」と北欧のお話「長くつ下のピッピ」を読み解きました。

それぞれの学習科目における実際の内容②『Mathematics(算数)』

アメリカの算数は暗記や計算よりも、「自分で考え方を導き出すこと」に重点を置きます。

公式や九九などを覚えることはせず、法則を自力で見つけ出し、どうしたら解を得られるかをそれぞれで考え、その後クラスメイトとアイディアを共有し合う方式です。

例えば「48-26=?」を考えるとき、単純に計算する子もいれば、40-20と8-6をそれぞれ計算しそれを合わせる子がいたり、48と26にそれぞれ2を足して、50-28をする子もいるかもしれません。

そして、算数でも「自分のアイディアを自分の言葉で表現できること」が求められます。算数においても「国語の要素」が入っているのです。

例の引き算はまだ序の口ですが、さらに難しい分野に入ったとき、ただ説明されて公式を覚える記憶法より、自分で導き出し解いていく方が応用出来るようになります。

ただし、九九は日本式で丸暗記した方が楽だったとは思います。今回は図形を認識するために、ボードに点を書いて線で繋いでいくゲームや、身の回りにある図形を探そう! というクラスでした。

ただ席にじっと座っているだけではなく、体験・実践型となっており、日本の教育に慣れているものにとっては非常に新鮮な光景でした。

まとめ

さて、前編ではニューヨークの名門私立校(インディペンデントスクール)の基本的な授業の進め方と国語・算数における授業の内容を見てきました。

後編では理科・社会などの科目や、「できる子どもが育つ」ために必要な教育と親がすべきことを名門私立校からもらうアドバイスなどをもとに読み解いていきたいと思います。

著者プロフィール

世界35カ国に在住の200名以上のリサーチャー・ライターのネットワークをもち(2017年12月時点)、企業の海外での市場調査やプロモーションをサポートしている。

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