ドイツで不動のリスニング文化、子どもはラジオドラマやオーディオブックと共に成長

ドイツで不動のリスニング文化、子どもはラジオドラマやオーディオブックと共に成長

近年は日本でもオーディオブックが広まり、移動中や隙間時間に書籍コンテンツを音声で聴く人が増えました。ドイツでは昔からテレビを観る代わりにラジオドラマやオーディオブックを聴く習慣があり、子育てにも大いに活用されています。ドイツにおけるこれらリスニング文化や、大人気の子ども向けオーディオボックスについて紹介します。

日経DUAL記事

ドイツ国民に愛されている音声メディア

子育てにおいて、多くの親は「本をたくさん読んであげたい」「できるだけテレビや動画は見せたくない」と考えているでしょう。しかし、共働きなどさまざまな事情により読み聞かせの時間がとれず、テレビを見せすぎてしまうこともあると思います。

そのような時にドイツで活用されているのが、子ども用の音声コンテンツ。昔からドイツの子どもはラジオドラマやオーディオブックを聴く習慣があり、現在も大人気です。これら音声コンテンツは、ラジオ、CD、カセット、ポッドキャスト、アプリなどの媒体や機器を通じて幅広く普及しています。

アニメ番組や絵本、物語を音声で聴けるオーディオブックの歴史は比較的古く、1954年に視覚障害者のために録音された本をきっかけに一般の読書愛好家にも普及しました。また、子ども向けラジオドラマは、ドイツで最も人気があるコンテンツの1つ。ドイツのオーディブル誌が手がけた調査によると、国内の3歳から8歳までの子どもの約91%がラジオドラマとともに成長していることが明らかになっています。

■ドイツ国民に愛されている音声メディア

音声コンテンツが子どもの脳の発達に与える効果

音声コンテンツのメリットについては、教育関係者や家族療法士の間でも認められています。テレビや動画とは異なり、子どもが登場人物やストーリーを頭に思い浮かべることで脳が刺激を受け、想像力が促されるとされています。さらに、下記のような効果があるそうです。

・集中力、注意力、リスニングスキルが身につく。
・言語の発達をサポートし、語彙を増やし、文法と文構造の理解につながる。
・子どもが登場人物の感情を理解することで、共感力の発達を促す。
・物語を通じて子どもがまだ知らない行動やマナー、問題解決方法を学ぶのに役立つ。

フィギュアを置くだけで聴けるオーディオボックスが人気

さらに、2016年には新しい形の子ども用オーディオボックス「Toniebox (トニーボックス)」が登場しました。 傷ついたCDがプレーヤーに詰まって再生できなくなったのをきっかけに、父親2人が試行錯誤しながら開発したそうです。

「就学前の子どもでも操作できる」というシンプルな構造の「トニーボックス」は、聴きたいお話が入ったフィギュアをボックスにただ乗せるだけ。いつでも簡単に音楽やラジオドラマを聴くことができる仕組みで、発売と同時に大ヒットし、現在も売れ続けています。

専用フィギュアには異なるコンテンツがインストールされており、ボックス上に置くことで再生されます。子どもはディズニーやグリム童話、人気の絵本など300種類以上あるフィギュアのなかから自分でお気に入りを選び、親の手を借りずに楽しむことができます。各フィギュアには対象年齢が設定されているので安心です。

子ども用オーディオボックス「Toniebox (トニーボックス)」
子ども用オーディオボックス「Toniebox (トニーボックス)」

使ってみて感じた単語や語彙の広がり

ドイツ在住の筆者は2人の子どもに日本語とドイツ語のバイリンガル育児を実践していますが、上の子が2歳の時から「トニーボックス」を活用。子どもたちは、物語に登場する新しいドイツ語の単語や語彙を頻繁に使う場面が増えました。

彼らが実際に「トニーボックス」を聴くのは、リラックスしたい時、退屈している時、作業(工作や片付けなど)をしている時などさまざま。置かれている状況を理解し、その時々に合わせて活用しているのを感じます。

子ども向けでもテレビや動画の番組は刺激が強すぎる場合がありますが、音声コンテンツならば想像力を駆使し、自分がイメージする映像を創り出すことができます。脳の処理能力を超える情報量を五感から受け取ってしまう「感覚過負荷」も映像を観るより軽いので、子どもにとって安心です。

まとめ

時代の変化と共に音声コンテンツを聴く機器やメディアは進化してきましたが、ドイツにおける昔ながらのリスニング文化の存在は揺るぐことはありません。

音声コンテンツを通じて子どもは楽しみながら新しい知識や言語を習得し、想像力や共感力を培っています。教育と娯楽の両方に役立っており、今後の幼児教育にますます生かされていくと思われます。

執筆/ドレーゼン志穂

<参照URL>
https://www.sprachgold-online.de/post/h%C3%B6rspiele-f%C3%BCr-kinder
https://blog.sigikid.de/hoerbuecher-fuer-kinder-auch-zuhoeren-will-gelernt-sein-3783/
https://de.wikipedia.org/wiki/H%C3%B6rbuch
https://www.capital.de/karriere/toniebox–wie-zwei-vaeter-ein-digitales-abspielgeraet-fuer-kinder-erfanden-31110844.html
https://tonies.com/de-de/tonieboxen/
https://amzn.to/3Laye1f
https://www.ardaudiothek.de/rubrik/fuer-kinder/42914714/

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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