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「遊び」のコンセプトでアプローチするオーストラリアの小学生用プログラミング教育

「遊び」のコンセプトでアプローチするオーストラリアの小学生用プログラミング教育

オーストラリアでは小学校へのプログラミング教育の導入がすでに始まっていますが、課外活動として、プログラミングを教える事業も活発な動きを見せています。

本記事では、そうした事業者のなかでも2019年に「オーストラリア中小企業チャンピオン賞・子ども教育におけるサービス」部門で受賞したプログラミングスクール「CodeCamp(コードキャンプ)」についてその教育内容をお伝えし、同社が推薦しているプログラミング用ゲームをいくつか紹介したいと思います。

日経DUAL記事

「コードキャンプ」は小学生を対象にしたプログラミング塾

コードキャンプは2013年に設立された、小学生を対象にしたプログラミング塾です。3人の子どもを持つシドニー在住の女性、ヘイリー・マーカムさんが、自分の子どもたちにプログラミングを学んで欲しいと思って始めました。最初は、自分の子どもを含めて生徒は8人しかいなかったそうです。

2013年といえば、まだオーストラリアの小学校ではプログラミングが教科として取り入れられていなかった時期です。今ではオーストラリアの全国内に広がり、350以上の小学校から10万人以上の子どもたちがコードキャンプに参加するまでに成長しました。コードキャンプはまた、米国・英国にも進出しています。

学校が休みの数日間のキャンプで年齢やレベル別に集中講義

コードキャンプの最も大きな活動は、学校の休みのあいだに開く3~4日間の「キャンプ」です。キャンプといっても寝泊まりして遊ぶキャンプのことではなく、プログラミングの「集中講義」といった内容になります。

申し込みを済ませた子どもたちはこの期間中に決められた場所に通い、そこでプログラミングを学びながらそれぞれのアプリを制作する活動に参加します。

コードキャンプではこの活動を、プログラミングではなく「コーディング」と呼んでいます。コーディングとは「コンピューターの『言語』を組んでいく」ことで、参加できる年齢は5~13歳となり、年齢やレベルによって5つのグループに分けてコーディングを学びます。

1年生の場合は完全な初心者ということで、iPadのアプリに親しむことに重きが置かれています。次のレベル2になると、スーパーマリオのようなプラットフォームゲームなどのビジュアルワールドの構築や、そこに登場するキャラクターの創出スキルを学びます。

レベル3では、ウェブページにおいて複雑な機能を可能にするプログラミング言語のJavaScriptを一部使ってコーディングを学び、レベル4では最初から最後までJavaScriptを使ってマルチレベルのゲームや3Dの世界を構築するスキルを学びます。そして最終レベルでは、自分のウェッブサイトを構築することになります。

コードキャンプは学校が休みの日以外にも、課外活動の場を提供しています。課外活動では独自に開発した「コードキャンプワールド」というソフトを使い、まずはビデオゲームのコンセプトに基づいて子どもがプログラミングに関心を持つようにします。スキルとしてもドラッグ&ドロップで始まり、最終的にはJavaScriptが使いこなせるように指導していきます。

また最近では、新型コロナウィルスの影響で外出が制限される子どもたちに向け、オンライン授業を受けられるようなプログラムも組まれています。

コードキャンプが推奨するスキルアップできるプログラミングゲーム

コードキャンプではこういったコーディングやオンライン授業などを提供していますが、同時に、家庭で遊びながらプログラミングスキルを向上できるようなゲームも紹介しています。そのなかの主なものを4つ紹介しましよう。どのゲームもオンラインで登録(サインイン)し、無料で利用できます。

1.「RoboZZle」http://robozzle.com/

RoboZZleは「社会的パズルゲーム」と呼ばれています。具体的には、ロボットが迷路のようになった道を進んで目的地にたどり着けるように、矢印のタイプやカラーを選び組み合わせてプログラムを組んでいくゲームです。

対象レベルは6歳以上で、言語は英語ですがシンプルなゲームなので、ルールを理解するのもそれほど難しくないはずです。アプリをスマホやPCに無料でインストールしてから使います。

2.「Scratch」https://scratch.mit.edu/

「Scratch」はアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)で開発されたソフトです。「グラフィカルプログラミング」と呼ばれ、独自のゲームやアニメーション、また人形劇などを作ることによってプログラミングスキルが習得できるようにデザインされています。

自分が制作した作品はネット上に公開して、他の子どもたちにも楽しんでもらうことができます。対象は8歳以上で、言語はサイトで日本語を選ぶことが可能です。

NHKのサイト(https://www.nhk.or.jp/school/programming/start/index.html)でもScratchの使い方を説明しているので参考にしてください。

3.「CodeCombat」https://codecombat.com/

「CodeCombat」はグラフィックが豊富なプログラミングゲームです。JavaScriptやPythonなどのプログラミング言語が使われており、そのなかから自分に合ったものを選んでコーディングをスタートします。

まずキャラクターを動かすことから始めますが、慣れてきたらメソッドやパラメータ、変数などの概念を取り入れ、より複雑な動きができるようスキルアップしていきます。飽きることなく楽しめるゲームで初級と中級があり、言語はサイトで日本語を選べます。

4.CodeMaster https://www.thinkfun.com/play-online/code-master/

CodeMasterはNASAのプログラマーが考案したゲームです。オンラインで無料アクセスできますが現時点では日本語版がないので、有料ですが日本語の解説書付きのボードゲームタイプがよいかもしれません。

決められた条件に基づいて最短距離でゴールできることを目指します。ゲームを楽しみながらコーディングの基本が学べるようになっていて、対象は8歳以上となります。

まとめ

学校の休みや課外活動を利用した小学生向けプログラミング塾コードキャンプの教育内容や、推奨している4つのプログラミングゲームを紹介しました。

こうした教育内容やゲームに共通しているのは、「遊び」や「楽しみ」を通して子どもたちにプログラミングを学んでもらうというコンセプトです。楽しく学ぶことによって、一見難しそうなプログラミングスキルが自然に身に付いていくことを狙っているのではないでしょうか。

【参照サイト】
https://www.codecamp.com.au/
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3-ThinkFun-%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC-Master-%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0/dp/B01LZSTPBR
https://www.kochiesbusinessbuilders.com.au/how-one-mum-brought-her-passion-for-stem-to-schools-with-code-camp/
https://www.codecamp.com.au/blog/8-best-programming-games-for-kids
https://programmercollege.jp/column/3541/
https://www.nhk.or.jp/school/programming/start/index.html
https://support.codecamp.com.au/article/84-what-is-code-camp
https://education.abc.net.au/home#!/digibook/2428153/make-your-own-game-using-scratch
https://www.codeclubau.org/projects
https://www.smh.com.au/national/nsw/coding-to-be-mandatory-in-primary-early-high-school-20180817-p4zy5d.html
https://coderangers.com.au/blog/2018/1/21/coding-is-coming-to-nsw-schools-in-2019
https://www.youtube.com/watch?v=k12BxuTMpSU
https://musfight.ru/ja/android/igrovaya-razrabotka-dlya-detei-programmirovanie-dlya-detei—metodiki-obucheniya/
https://www.nhk.or.jp/school/programming/start/index.html
https://scratch.mit.edu/
https://programmercollege.jp/column/3541/
https://qiita.com/javacommons/items/86efba2d0ce6b2a21fb9
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.team242.robozzle&hl=ja
https://scratch.mit.edu/studios/1168062/

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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