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中国のIT都市深セン生まれのプログラミングトイ「Mabot」に学ぶ、3歳からできる!プログラミング的思考の組み立て方とは?

中国のIT都市深セン生まれのプログラミングトイ「Mabot」に学ぶ、3歳からできる!プログラミング的思考の組み立て方とは?

中国国内で1,000教室以上を展開するBell Education Groupが開発したプログラミングトイ「Mabot」が、日本に上陸! パーツをつなぐだけでロボットが簡単に組み立てられ、すぐに動かせるMabotは、「2018年度グッドデザイン賞」「CES 2019 Innovation Awards」「ToyAward 2019」など、数々のアワードを受賞し早くも話題沸騰中。そこで、Mabotの日本正規代理店である㈱ニューシークエンスサプライの代表取締役社長・柿岡歩さん(一般社団法人STEM教育協会会員)とECサイト「J-Robo」を運営する株式会社ジェットシステムの佐藤大樹さんに、Mabotの魅力はもちろん、中国の最新プログラミング教育事情や日本のプログラミング教育の足りないもの、3歳からでも始められるプログラミング的思考などをお聞きしてきました。

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男の子は道具として、女の子は擬人化して遊べる!

__Mabotがこれまでのプログラミングトイと違うところは?

佐藤さん:何と言っても一番の魅力は工具が要らない手軽さです。加えて、ごつごつしたメカ的なロボットとは違って、レモンイエローとアイボリーカラーの丸い形状が可愛らしいので、女の子にも手に取ってもらいやすい点だと思っています。ワークショップでもかなりの率で女の子やお母さんにご参加いただくことが多いです。あとは、ロボットを動かせるデバイスがスマホやiPadなどのタブレット、パソコンと幅広いので使い勝手がいいと思います。

__Mabotで遊ぶとどんないいことがありますか?

柿岡さん:立体で動くので、空間認知力がつきます。前後左右のXY軸に加えて、上級向けのデラックスキット以上になると、アームが上下するZ軸の動きが加わります。このXYZ軸を使って動かすのは大人でもなかなか難しいものです。ですが、幼児期から遊ぶことで、立体的な発想力が養われていくはずです。

アームを使ったロボットは動きも複雑に。

__プログラミングにおける男女の能力差はあるのでしょうか?

柿岡さん:つい先日、IT先進国であるインドの大学で教鞭を執っている日本人の先生と話したのですが、インドでも女性のSEがかなり増えてきたそうです。幼少期はどうしてもロボットやブロックで遊ぶ機会が男の子の方が多いので、男の子=プログラミングが得意というイメージなのかもしれませんが、男女の能力差はないと思っています。ただ、玩具という視点で見た場合、男の子はMabotを戦わせたり速さを競ったりと「道具」として使うのに対し、女の子は色やデザインを可愛くするなど「擬人化」する傾向があると思います。その点、Mabotは二輪走行もできるのでペットのような感覚で擬人化しやすいんだと思います。男女問わず直ぐに使えるようになるのが人気の秘密かもしれませんね。

二輪走行でゴリラをイメージ。

LEGOブロックと連結させて遊ぶこともできます。

1,000教室以上のロボティックスクール、6,000名以上の講師、10万人以上の生徒たち!

__中国でのプログラミング事情を見てこられて、どんなことを感じますか?

柿岡さん:Mabotを開発したBell Education Groupは中国国内に1,000教室以上のロボティックスクールを展開し、6,000名以上の講師が在籍、10万人以上の子供たちが学んでいます。

もともとはレゴを使ったプログラミング教室だったのですが、そこに新たな教材として独自に開発したMabotも使っているという状況です。中国での教育熱はものすごいですね。中国人の平均月収(15万円くらい)の値段を月の教育費に投入している家庭も多い印象です。中でもSTEM教育をベースにしたプログラミング教室は人気で、大型のショッピングモールに入っているケースが多いようです。習わせる理由としては、「子どもの将来を考えた際の、最低限のスキル」という認識のようです。もちろん、中国全人口でいうと数%にすぎず、教育格差は否めませんが。

中国国内に1,000教室以上あるロボティックスクール「Bell Education Group」。

日本でも2020年から始まるプログラミング教育、リアルな課題とは?

__日本でも2020年から始まるプログラミング教育、リアルな課題とは?

柿岡さん:間違いなく言えるのが先生方の情報不足、そして、予算が少なすぎることだと思います。

中国や他国ではIT教育は国策の一つと考えられていますので、予算も相応に確保されていることも多く、公立小学校にもMabotのようなプログラミング学習教材が広く導入されています。日本ではなかなかそこまではいかないので、やはり公立と私立小学校とでの格差が出てきてしまうのは間違いないでしょう。

佐藤さん:また、教える人が足りないのも事実。民間ベースでプログラミング教室を拡大したくても、教える側の教育が追い付いていないのが現状です。英語のように明確な資格や基準がないのも指導者にとって悩ましい点かもしれません。私たちは、有料のオンラインレッスンを活用していますが、そうした取り組みももっと出てくるのではないでしょうか。

柿岡さん:それと、これは案外知られていないのですが、2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されるといってもプログラミングという科目は設けられていません。理科や算数などの授業に組み込むわけですが、結果的には学校側に任せるということになり、先生方の負担も多くなると思います。

ロボコン世界大会で見た、日本の課題点

__昨年、中国・広州で行われたロボコン世界大会2018に同行されたそうですが、いかがでしたか?

柿岡さん:日本代表の小学生を率いて大会に臨んできたわけですが、結果は惨敗でした。子どもたちは日本の中ではトップクラスであり、とても一生懸命やってくれましたが、世界を見て感じたことは、「残念ながら大人のスキルの低さが子どもに影響している」こと。中国や台湾、シンガポールなどは、もう次元が違う状態でした。参加チームを引率する指導者たちに話を聞くと、スパルタ教育的なトレーニングで大会の準備をしてきたそうなので、日本の「考える力を養うプログラミング」という概念とはまた別のようでしたが。

佐藤さん:世界では、「英語×プログラミング」がスタンダードなのも、今後の日本でのプログラミング教育の課題のひとつです。あえて日本語に訳さなくてもいいという考えと、理解力を深めるためにはまず日本語でという考えがあるので難しい所なんですね。

ロボコンの様子。

3歳から始められる!身近な生活の中にプログラミング的思考を取り入れてみよう

__家でできるプログラミング教育はありますか?

佐藤さん:たくさんあります。まず、親御さんに知ってほしいのが、TV番組、電車の時刻表、運動会のプログラム…これら全部がプログラミングだということ。どれも予定通りに進まなかったら困るものばかりですよね。そのために必要なのがプログラミングなんです。

それを理解した上でおすすめなのが、「朝起きてから寝るまでの行動を、自分でプログラミングしてみること」。これは、自分で効率のいい行動を考える訓練になります。他にも、たとえば子どもが「釣りに行きたい」と言ったら、「何を釣りたいのか」じゃあ「どこに行けばいいのか」そのためには「何が必要なのか」。こうした筋道を立てた考え方こそプログラミング的思考なんです。あとは、わが家でも5歳の息子とやるのですが「ママに怒られないためのプログラミングを考えてみよう!」これは結構盛り上がりますよ。

__プログラミング的思考は何歳からできますか?

柿岡さん:プログラミングは「実行する順番を組み立てること」ですから、3歳からでも始められます! 考えて行動する癖をつけるために、ご家庭でも、お子さんにできる限り明確な指示を出すこと。「あれとって!」じゃロボットは動かないですからね。

いかがでしたか。「プログラミングは勉強じゃないから、嫌いにならないでほしいんです!」という言葉が印象的でした。日本では、まだまだ親自身がプログラミング=難しいものと捉えすぎているのかもしれませんね。まずは親子で遊びながら行う身近なプログラミング探し、ぜひわが家でも試してみたいと思います。

今後のMabotワークショップのご案内等は以下のHPでご確認ください。http://promotion.j-robo.jp/

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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