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海外在住ママに聞く日本とは違う教育事情:スウェーデン編

海外在住ママに聞く日本とは違う教育事情:スウェーデン編

写真: Annie Spratt on Unsplash

海外教育事情の第1回目は、スウェーデンです。今回は、スウェーデン滞在13年目のオルソン朋華さん、滞在6年目のオルソン典子さんのお二人に、現地の幼稚園や小学校の様子、スウェーデンにおける学習に対する考え方についてお話を伺いました。

また、ますますボーダレス化が進む社会を見据えて、スウェーデンの子どもたちにとっての「グローバル」とは何かについてもお話ししていただきました。

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スウェーデン式幼児教育:森での遊びが子どもを育てる!

スウェーデンの幼児教育で最も特徴的なのは、「森での遊びを通して、認知力を養う」という教育方針です。

スウェーデンでは、保育園や幼稚園が森に隣接していることが多く、子どもの遊び場といえば森なのです。そのため、幼稚園の子どもたちは、食事やお昼寝の時間以外は、森で過ごすことが多いです。

天気が良い日が少ないこともあって、雨の日でも、マイナス20度の真冬日でも、森での外遊びは行われます。スウェーデンには、「悪い天気はない、悪いのは服装だ」ということわざがあり、学校行事なども雨天中止がありません。

幼稚園は、朝7時から夕方5時までで、ほとんどの家庭が共働きであるため、子どもたちは幼稚園が準備した朝食を食べることが多いそうです。

時間割は、7時に登園、9時に朝の会が始まり、そこで、出欠をとったり、みんなで歌を歌ったりします。10時頃には森での外遊び、そのあとは、昼食、本読み、お昼寝です。お昼寝ですが、子どもたちは自分の好きな場所で寝てもいいそうで、外にあるストローラーのなかで寝る子もいるとのこと。みんなが一斉に同じ場所で寝るのではなく、子どもたちが自分にとって居心地のいい場所を選べるというところに、子どもの目線に立った教育方針が感じられます。

午後はお絵かきやパズル、3時の軽食、その後5時のお迎えまでは、また森での外遊びとなっています。幼児教育の根底には、子どもは外で遊びながら学ぶという考え方があり、お絵描きやアルファベットの練習は、週に1回あるかないかだそうです。

小学校に入っても、森で葉っぱやキノコを使って算数や理科の勉強をしたりと、スウェーデンの幼児教育・初等教育にとって、森は遊びの場であるだけでなく、体を動かしながら学べる教室でもあり、子どもたちの学習にとって欠かせないものとなっています。

子どもに合った学年選び:学びに対する自信と主体性を重視


写真:Freepik

スウェーデンでは、子どもの学力に合わせて学年を遅らせたり、同じ学年を繰り返したりすることが珍しくないそうです。

小学1年生は7歳で始まるのですが、いわゆる日本の4月生まれの子どもたちが、スウェーデンでは1月生まれの子どもたちになります。そのため、12月生まれの子どもは体力的・学力的に不利だという考え方があり、12月生まれの子どもの親は、小学校への入学を1年遅らせることもよくあるようです。

また、入学の時期だけでなく、次の学年に進むかどうかも個人の学力に合わせて決めることができます。例えば、4年生でやった学習内容に自信が持てないと感じている生徒の場合、4年生をもう1度するという選択肢があり、本人の意思と両親の同意のもと決定されます。

日本だと、自分の子は遅れているのではないかと不安になってしまうかもしれませんが、スウェーデンの教育システムでは、他人と比べた学力の高低ではなく、学習者本人が自信とやる気をもって学習に取り組めているかどうかが重視されているといえます。

小学校高学年くらいまでは成績表もない学校が多く、「落ちこぼれ」とか「ほかの子より遅れている」という概念自体があまりないのではないかということでした。生徒一人一人の学習進捗状況の違いを個性として認め、それに合わせたサポートするという教育体制が子どもの学習意欲を引き出すことに繫がっているように感じます。

スウェーデンの子どもに人気の習い事は、サッカーとピアノ、職業では、男の子はYouTuber、エンジニア、コンピュータープログラマー、女の子では、エコノミスト、インテリデザイナー、建築家などが上位に上がっているそうです。ただ、親が子どもの将来の職業を考えたり、大人になったら何になりたいのと聞いたりすることはありません。

中学2年生になると、自分の興味のある職を体験する2週間の就職プログラムに生徒全員が参加し、中学生3年生になるころには子ども自身が進路を決め、具体的な目標に向かって勉強を始めます。また、日本の高校受験のように入学試験ではなく、日頃の生活態度と成績で進学する高校が決まります。

日本の学校のいいところも聞いてみると、給食がおいしくて、栄養バランスがいいところだそうです。スウェーデンでは、小学校もバイキング形式の昼食で、味にもあまり工夫がなく、子どもたちは自分の好きなものだけを食べているとのこと。

また、日本では当たり前のようにあるクラス替えですが、スウェーデンでは1年生から6年生までクラス替えがありません。中学校は1年生から3年生までクラス替えがなく、先生も変わりません。そのため、当たり外れがあり、いいクラスに当たればよいのですが、クラスにまとまりがなかったり、自分の子どもに学校の方針が合わない場合は大変なようです。実際、先生の言うことを聞かない子が多く、授業が成り立たないという理由で、転校する人が多数いた年もあったそうです。

グローバルなスキルは日常生活から


写真:Freepik

最後に、グローバル化が進む社会における子育てについても伺いました。スウェーデンはヨーロッパと陸続きなので、他の北欧諸国はもちろんのこと、デンマークにも橋を渡って車でいけます。そのため、外国へ行くといっても、日本で東京から大阪にいくような感覚だそうです。

また、移民も多いため、友達とのやり取りのなかで、異なる国の文化や考え方に対する理解や寛容性を育む機会も多くあるようです。

日本では、インタナショナルスクールや英会話教室に通わないと身につきにくい英会話ですが、スウェーデンの小学校では、実用的な英会話はもちろんのこと、5年生からはフランス語やドイツ語などの、第3外国語も学びます。そのため、母国語であるスウェーデン語を入れると、3か国語を話せるスウェーデン人が一般的だそうです。

また海外からの移民の子どもたちは、市から母国語教室までの送迎バスが出るなど、自分の母国語を大切に学び続けることができる環境も整っています。

社会のボーダレス化が進むなか、今後必要だとされている語学力や異文化コミュニケーション力ですが、スウェーデンの子どもたちにとっては、日々の学習や生活のなかで自然に学ぶことのできるスキルとして捉えられているようです。

日本では、スウェーデンのように気軽に海外に行くことはできませんが、今回のインタビューを通して、幼少期から身近なところにある異文化に触れる機会を積極的に作っていくことが大切なのではないかと感じました。そのような体験を積み重ねることで、異なる言葉、文化、考え方が海外旅行のような非日常ではなく、子どもにとっての日常の風景の一つとなったとき、グローバル社会で必要とされるスキルを学ぶ基盤ができるのではないでしょうか?

インタビュー協力者
オルソン朋華さん:スウェーデン在住13年目。3児の母(16歳と14歳の双子)で、高校の日本語教師、及び、フリーランス通訳。  
オルソン典子さん:アメリカに24年在住、スウェーデンは在住6年目。2児の母(14歳と13歳)で、ITコンサルタント。ITシステム構築、商品デザイン開発に携わる。

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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