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子育て

気になる1歳半検診の不安感、心理学でアドバイス!

気になる1歳半検診の不安感、心理学でアドバイス!

赤ちゃん時代を抜け、社会性が身についてくる1歳半前後。日々の成長もめまぐるしいですが、その分、発達面でよそのお子さんと比べてしまい、思い悩んでしまうことが増える時期でもあります。そしてこの時期にある1歳半検診では、受ける前から不安だったり、受けた後も心配ごとが絶えず、親にとってはストレスがかかることが多くなります。ここでは、1歳半検診にまつわる不安感をどうしたらいいか、心理学の側面からアドバイスしていきます。

日経DUAL記事

1歳半検診の役割

まずは1歳半検診ではどんなことをするのかを見ていきましょう。0歳のころと比べると、1歳半検診では確認する項目が増えます。身体測定、歯科検診などの体の発達から、栄養状態、運動や言葉についての反応を見る検査、精神発達の状況も診ていきます。

その中でも特徴的なのは、社会性の発達を見る検査でしょう。

1歳半検診で記入する問診票には、

 何か欲しいものがある時、指をさして要求しますか
 お母さん(お父さん)が名前を呼ぶと反応しますか
 お母さん(お父さん)のすることをまねしますか
 お母さん(お父さん)が見ているものを、お子さんも一緒に見ますか
 いつもと違うことがある時、お母さん(お父さん)の顔を見て反応を確かめますか

 

このような質問が並んでいます。これらは、M-CHATと呼ばれる心理検査から引き出されたものです。これは、自閉症スペクトラムの第一段階のスクリーニング尺度として用いられている検査であり、日本ではその一部の項目が全国の1歳半検診で必須チェック項目となっています。自治体によって質問の内容に多少の違いはありますが、大枠ではその子の社会性の発達状況を知る問いにまとまっています。

親御さんのなかには、1歳半検診を「発達障害について何か言われるところ」と捉え、受診前から大きな不安を抱えてしまう方もいますが、1歳半という年齢は、歩いたり、言葉が出たりと他者と関わるための社会性が大きく伸びる時期のため、このような検査が加わるのです。あくまで現段階での社会性の発達を見るもので、医学的な診断をする場ではありませんので、過度に心配せずに、子育ての不安や悩みを相談できる場としてのぞみましょう。

気になることを言われショック、どうしたらいい? 

診断の場ではないと言っても、検診中に他の子ができることが自分の子はできず成長の違いを感じたり、先生から何か気になることを言われたりすると、家に帰っても気持ちが落ち着かず、不安にかられてしまうこともあるでしょう。

そんなとき、思わずネットで調べたくなりますが、結果的には、不安解消のためにしたネット検索で余計に悩みが増してしまうことが大半です。こうなりやすいのは、そもそもネットで調べるときのキーワードに、自分が不安に思っていることを入力してしまいがちだからです。「1歳半、歩かない」「18か月、指さししない」など。それによって出てくる情報は、不安な気持ちをなだめてくれる質のものではなく、ほとんどがそれをあおる内容ばかり。調べたい気持ちはとてもよくわかりますが、でも多くの場合、不安が増してしまうということを心に留めてほしいと思います。

それよりは、前進できるための働きかけをしていくことが賢明です。もし検診で引っかかっても、結果的に問題はなかったということはよくあります。次にご紹介するのは、この時期のすべてのお子さんの心理発達を促すアプローチです。検診結果にかかわらず大事なポイントですので、ぜひ意識して取り入れてみてください。

1~2歳の心理発達を促すためにするとよい3つのこと

■その1 親以外の人との関わりを持つ

1歳半検診で見られるのが、人見知り、場所見知りが激しくて、普段はできていることができないというケースです。持って生まれた性格も大きく関係していますが、場数も影響します。1歳半だとまだまだママオンリーな気がしますが、アタッチメントに関する研究によると、子どもはこのくらいの時期から人間関係の枝葉を広げやすくなるのだそうです。

0歳代はまだママじゃないとダメという子も、だんだんパパも、そしておじいちゃん、おばあちゃんもと懐いていくことができるんですね。なんとなく、まだ1歳半だと親以外の人を敬遠するのではないかと守りに入ってしまいがちですが、人馴れ、場所馴れをするためにも、積極的に外に出ていくことをおすすめします。ママ、パパと一緒に出かけた先で、親を安全基地にし、目視確認をしながらだんだんと外に世界を広げていきますので、親はそれを促すように接してみましょう。

■その2 先回りせずに子どもからの発信を待つ

グレーゾーンと言われたり、検診で引っかかっても、実際には問題がなかったということもあります。よくあるのが、親が常日頃から、なんでもかんでもやってあげてしまうために、子どもから発信する機会を失わせてしまっているケースです。たとえば、欲しいものを指でさしたり、片言で言おうとしたりする前に、ママが察して、「のどかわいたね」「お水ね」とか、「ブロックね」「わかった、はいどうぞ」と先回りしてしまうと、子どもの欲求はそこで満たされてしまうため、コミュニケーションが促されなくなってしまいます。

これまで他の記事でも親の行き過ぎた先回り行動については書いていますが、子どもが何の苦労もなく過ごせる環境を提供することが親の仕事ではありません。上げ膳据え膳状態にしてしまうと、学びや成長のチャンスを逃してしまうことにもなりますので、やりすぎは厳禁です。かといって、ほったらかしはダメだし……、このあたりのさじ加減が難しいのが育児ですが、子どもが欲しいものを発信できるように待ってあげることも大事なんだよということを覚えておいてくださいね。

■その3 アタッチメントをしっかり強く育む

また、1歳半検診に限ったことではありませんが、成長のどこかの過程で、多動の傾向があると指摘された場合でも、関わりを変えることで改善することがあります。実際には子どもに問題がないのに、その子をかこむ家庭環境に何らかの問題があったり、子どものかかわりが不十分だったりすると、それが原因で情緒不安定になり、注意引き行動を頻発したり、多動となるケースです。

こういう場合、アタッチメントと言われる親との精神的な絆を強めると、だんだんと落ち着きを取り戻すことがあります。子どもと外にお出かけしたときに、落ち着きなくバタバタ動きまわられてしまうと、「いいかげんにしなさい」「じっとしてなさい」とその場の動きを抑えることに気持ちが向きますが、むしろ子どもが求めているのは親との精神的な絆です。アタッチメントがしっかり形成されることで、精神的な不安感が減り、落ち着きのなさが改善されることがあります。

アタッチメントは、子育ての土台です。これが欠けると多動に限らず、その他多くの問題となって子どもの行動に表れてきますので、幼少期の関わりで何より大事な部分として意識されることをおすすめします。ポイントは時間の長さ以上に質です。スキンシップや遊びはそれを濃くする効果がありますので、同じ30分でもいかに濃密にするかにこだわって過ごしてみてください。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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