【公認心理師監修】ヘリコプターペアレントにカーリングペアレントetc. 子どもの成長を阻む4つの「○○ペアレント」とは?

【公認心理師監修】ヘリコプターペアレントにカーリングペアレントetc. 子どもの成長を阻む4つの「○○ペアレント」とは?

「○○ペアレント」と呼ばれる問題親にはさまざまなタイプがあります。たとえば、モンスターペアレントやヘリコプターペアレント。聞いたことはあるし、気になるけれど、どれも似たような印象で、その違いは明確ではないかもしれません。そこで今回は、「子どもをダメにする親」を4タイプ取り上げ、その共通点や違い、さらには陥りやすさについても言及していきます。

日経DUAL記事

まずは4タイプの“○○ペアレント”それぞれの特徴を比較

その1 モンスターペアレント(発祥:日本)

学校や教職員、または塾などに対し、非常識で自己中心的な要求を突きつけてくる親のこと。
「取り合いになるような遊具を幼稚園に置かないでほしい」
「うちの子を発表会の主役にしてほしい」
「風邪を引いたので運動会を延期にしてほしい」

などの理不尽な要求をしてくる姿をたとえ、モンスターペアレントと呼ばれるように。自分の子どもが優位になるように、周りの大人に非常識な干渉をするのが特徴。

その2 ヘリコプターペアレント(発祥:アメリカ)

自分の子が傷ついたり、困難にぶつかったりすることを嫌い、失敗から守ろうとするあまり、子どもにつきまとい続けること。親が常に子どもを観察し続ける姿が、ヘリコプターがホバリングしている様子に似ていることが由来。もとは、高校生、大学生くらいの子に対する親の過管理に使われていたが、今ではどの年齢に対しても用いられている。幼少時であれば、
「子どもがチャレンジする姿につい手を出す」
「子どもができない宿題を親がやる」
「子ども同士のもめごとにすぐに干渉する」

など、子どもがイヤな思いをしないよう、そばで観察し続けるのが特徴。

その3 カーリングペアレント(発祥:デンマーク)

スポーツ・カーリングでは氷の上の“ストーン”ができるだけスムーズに進むように、ブラシで道をならす姿から、子どもが進む道をならしてしまう親に例えている。そのまま進んだら立ち往生するであろう困難や失敗、イヤな思いをぬぐうべく、「親が先回りして、スムーズで通りやすい道を整えておく」というのが由来。ヘリコプターペアレントと同義とされ、デンマークではカーリングペアレントと呼ばれている。

その4 トキシックペアレント(発祥:イギリス)

日本でいう「毒親」のこと。子どもの人生を支配し、悪影響を及ぼしていく親を指す。毒親は「子どもにとって何がいいのか」よりも「自分の欲求を満たすこと」を一番に考えるため、たとえ子どもにとっていいことでも、親が気に入らなければ干渉する、暴言を吐く、ひどいケースでは世話をしないことも。他に、親の「こうあるべき」という思想を子どもに強く植えつけるため、その子は常に親の理想とする子ども像を追いかけているケースも多い。親の自己愛によって、子どもの人生を支配していくのが特徴。

こんな行動しちゃってませんか? 4つのシーン別、〇〇ペアレントの事例!

ここでヘリコプターペアレントやカーリングペアレントの具体的な事例を見ていきましょう。

シーン① 積み木が崩れないように手出ししてしまう

子どもが積み木を1つ、2つと積み上げている。より高く積もうとしているけれど、よく見ると段々とずれていっているのがわかり、このまま行けば、あと1つでガラガラと崩れてしまう……。子どもがその1つを乗せようとしたときに、「このままだとまずい!」とアンテナが起動し、なんとか崩れないように土台部分を手で整えなおしたり、「ここに乗せてごらん」と正解を教えてしまう。

シーン②子どものお絵かきに指図してしまう

お絵かきやぬり絵など、イメージする“完成形”や“お手本“がある場合、できるだけそこに近づけようとする。「そこは赤がいいんじゃない?」「ここはもっと太いかも」など、子どもがより上手な絵を描けるよう力が入ってしまう。そのため、つい指示的になってしまい、子どもの自由度を奪ってしまうことに……。いつのまにかその場を乗っ取ってしまい、結果的に親の作品になってしまうことも。

シーン③忘れ物を学校や園に届けてしまう

「学校で困らないように」という思いから、忘れ物がないようにと、子どもの持ち物を親が揃えてしまう。もし忘れ物をした場合、仕事に遅れてでも学校に届けることがある。

シーン④こぼした後始末は全部ママがやってしまう

家族で外食中、子どもが自分の洋服に飲み物をこぼしてしまった。ママがあわてて染み抜きをする。子どもは自分でやる様子はない……。

以上は、実際にあった事例ですが、ここで大事になってくるのは年齢です。
たとえば、事例の③と④において、これらが4歳の子だったら問題視はされないと思います。まだまだ親にサポートしてもらうことが多い時期だからです。でも中学生だったらどうでしょうか? 「中学生だったら、もっと自己管理できていないとまずい!」そう思う方が多いと思います。

しかし、中学生になったから、「はい、自分でやって!」とうまくいくわけではありません。幼少時にどう接してきたかがどうしても影響してしまうのです。

〇〇ペアレントが子どもに与える影響

ヘリコプターペアレントとカーリングペアレントに共通するのは、
・子どもに失敗をさせたくない
・イヤな気分にしたくない
・のびのび楽しく過ごしてほしい
・できた!という体験をたくさんしてほしい

という思いです。これらは間違っているものではありません。
しかし、それが過度になってしまうと、子どもの成長にも影響を及ぼしかねません。

【幼稚園、小学校低学年くらいだと……】
・イヤなものを避ける
・代わりに親にやってもらう
・物事は簡単に進むものと捉えがちになる
・踏ん張りがきかない
・飽きっぽい
・簡単にあきらめる
・失敗に弱い

【思春期になると……】
・自分で決められない
・自己管理が苦手
・親のせいにする
・やってもらうことが愛情だと感じている
・実年齢よりも幼い印象を与える

思春期にこのような悩みを抱える方に幼少時の接し方をお聞きすると、お膳立て+先回りで大事に大事に育てきたことが大半なので、少なからず要因にはなっていると思われます。親がその子の人生を整えてきた場合、どうしても自分で自分の身の回りのことをする経験が不足してしまうため、自立を試みようとする思春期で様々な矛盾が露呈してしまうのです。そのためか、「思春期の反抗が大きい」のも私がよく感じる印象です。

「うちの親ってモンペかも」と気づけるのは後になってから

「問題親」の問題は、その時点では子どもが気づけないところにあります。
子どもは、自分の親がすべてでありそれを当たり前と捉えています。そのため、親が支配的で子どもが従属的であっても、小さいうちはこういうものだと思ってしまうことが多いのです。
私のところで相談されるママの中でも、自分が母親になって改めて自分の親の接し方が普通ではなかった、気づけなかったとおっしゃる方が多いのです。親自らも自分は良かれと思ってやっていることが多いので、気づきにくく発覚が遅くなってしまうのです。

ここで挙げた4つのタイプは、「親がその子の代わりに決断してしまう」という点で共通していて、そのまま育つとその子が大きくなってから決断力や判断力のなさに困る傾向があります。
また、失敗や困難を知らずに育つことで、社会に出たときに太刀打ちできなくなってしまうケースも見られます。子どもが失敗から学ぶことや食いしばって困難を乗り切る経験は、その子の大きな糧になります。

親の接し方によっては、子どもが自分の足で自分の人生を歩む力を奪ってしまう恐れがあることを深刻に捉え、親自ら、気づこうとすることが大事です。

自分が「〇〇ペアレント気味かも」、と思ったらまずすること

これまで手を出し過ぎてきたかもしれない、先回りし過ぎたかもしれないと感じた方は、少しずつ見守る方向へシフトしていきましょう。

○○ペアレントは、結局のところ、親ががまんできずに動いてしまうことで起こります。
たしかに子育てでは、「こうなったらいいのに」「ああした方がいい」という願望もありますし、わが子に託す夢もあります。でも、それが前に出過ぎてしまうと、将来の自立の足かせになってしまうので「やり過ぎないことも愛情」と自分に言い聞かせていきましょう。

「できた!」という経験をたくさんしてほしいけれど、それは親がすべてお膳立てして達成する質のものではありません。自分で失敗して試行錯誤して、ようやく「できた!」にたどり着けることが重要です。

失敗しないように手はずを整えてあげるのが愛情ではなく、失敗したときに寄り添ってあげるのが愛情と捉えられると、いい距離感が生まれやすくなると思います。

やってもらうことに慣れている子は、いきなりママが「自分でやってごらん」と言うと、強い抵抗感を示すこともありますので、その場合は「すでに今できていること」をほめて、自分でできることを段々と増やしてみてください。

日々の振り返りの参考に!〇〇〇ペアレントチェックリスト

この記事を読んでくださる方は、自分の立場を客観視できて、自分を振り返ることができるまじめな方が多いので、過剰に心配することは不要ですが、参考までにチェックリストを作成しました。

□ 学校や先生へのお願いが個人的で平等性を欠いていないか
□ 塾や習い事で「お金を払っているのだから何でもあり」の姿勢になっていないか
□ 子どものご機嫌取りに奔走していないか
□ “甘えさせる”と“甘やかす”を混同していないか
□ 子どもに注ぐ目が“見守り”ではなく“監視”になっていないか
□ 子どものあらゆる行動を親が決めてしまっていないか
□ 「あなたのため」と言いつつ、自分の理想像を押しつけていないか

こちらのチェックリストで今一度、自らの関わり方を振り返ってみましょう。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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