オリーブオイルにチーズ!地中海色が濃いイタリアの離乳食は将来のグルメを育てる?

オリーブオイルにチーズ!地中海色が濃いイタリアの離乳食は将来のグルメを育てる?

「郷に入ったら郷に従え」というように、国が変われば風習は変わり、出産や子育てのあり方も変化します。離乳食も例外ではなく、イタリアの離乳食はおそらく将来のグルメを育てるであろうと思われる食材で構成。

その一方で、政府は赤ちゃんの頃から子どもの肥満化について憂慮する姿勢を示しています。日本とは異なるイタリアの離乳食などについて紹介します。

日経DUAL記事

かかりつけの小児科医が離乳食について伝授

イタリアには、日本の「お食い初め」のような儀式はありません。

ただ、赤ちゃんが最初に口にする食事は「プリマ・パッパ(Prima Pappa)」という可愛らしい名称で呼ばれています。Pappaはイタリア語で「おかゆ」のことです。

赤ちゃんが生まれると、イタリアでは月に1回は小児科医の検診を受けることになります。

5カ月の終わり頃にはかかりつけの小児科医から離乳食のための説明を受け、その作り方を伝授されます。イタリアの保健省も生後6か月までには離乳食を開始することを推奨していて、この時期については日本と大差ありません。


(イタリアの離乳食コーナーは豊富な品揃え)

オリーブオイルやパルメジャーノチーズ、ウサギの肉を生後半年で!

5か月の終わりごろにイタリアの赤ちゃんが口にするのは、バナナやリンゴ、プルーンなどの果物を柔らかくしたもので、地中海的な特徴としてはこれに数滴のレモン汁を落とすという点でしょうか。

そしていざ本格的な離乳食が始まると、小児科医のレシピを参考に最初にマンマたちが作るのが「野菜スープ」です。

イタリアにおける小児科の権威バンビーノ・ジェズー病院のサイトでは、野菜スープの作り方が次のように紹介されています。

・野菜(主に人参・ジャガイモ・ズッキーニなど)と水を鍋にたっぷりと入れて塩なしのスープを作る
・スープに赤ちゃん用のタンパク源ペーストを加える
・最後にオリーブオイルを垂らす

これが最初の離乳食のレシピで、やはりオリーブオイルが用いられています。

そのほか、生後半年ほどから口にできるもののリストには、ウサギ、七面鳥、鶏、子牛、牛などの肉類やパルメジャーノチーズがあります。

極小のパスタは7か月から、リコッタチーズが8か月からといった具合に、いかにも地中海的なグルメ食材が離乳食リストに載っているのです。


(離乳食コーナーにあるパスタもいろいろ)

米は日本のおかゆとは全く違う食べ方で

日本で離乳食といえば、おかゆや白身の魚が思い浮かびます。実はイタリアでも米を使った離乳食が存在するのですが、日本とはまったく異なる形で赤ちゃんの食卓に登場します。

米を使った離乳食は「クリーム状の米(Crema di Riso)」と呼ばれ、スーパーでも薬局でも赤ちゃん関連の商品コーナーに行くと必ず売っています。米をパウダー状にしたもので、野菜スープに溶かしたりそのままお湯に溶かしたりして赤ちゃんに与えます。

米だけではなく、小麦が原料のセモリナ粉や、トウモロコシ、タピオカを粉にしたものなど、種類はいくつかあります。こうした穀類のパウダー類は液に溶かせばドロドロになり、粘りが身上の日本のおかゆとは全く違う食べ物です。

では、魚はどうでしょうか。日本の離乳食では初期に登場するタラなど白身の魚は、イタリアでは8か月まで待つことになります。日本では離乳期のタンパク質を主に豆腐や魚から摂取しますが、イタリアでは肉やチーズで補うというわけです。

保健省が懸念する子どもの肥満

イタリアが誇る「地中海式食事法」は、2010年にユネスコの無形文化遺産に認定されるほど高く評価されています。全粒の穀物、緑黄色野菜、果物、豆類・ナッツ、きのこ類を多く食べ、赤肉の摂取は少量で魚介類を多くし、油はオリーブオイル主体というこの健康長寿のための食事法によって、イタリアは日本と肩を並べる長寿社会を築いているのです。

ただその一方で、イタリア保健省は子どもの肥満について深く憂慮しています。イタリアにおける子どもの肥満度はヨーロッパでもトップクラスで、3人に1人が肥満とされています。

離乳食について触れた保健省のサイトには、「離乳食を進めるに当たって重要なことは、タンパク質の量を制限し、塩分を加えないこと。将来的に食の好みに大きな影響を与えるこの2つの成分の過剰摂取は、肥満の原因となるためである」と明記されています。

まとめ

このように離乳食の頃から肥満防止についての健康的指針はあるものの、なんといってもイタリアは料理上手なマンマたちの国。子どもや家族に美味しいものをたっぷり食べさせることを喜びとしている風習が、まだまだ残っているのです。そのため、我が子を愛するあまり、離乳食も必要以上に食べさせてしまうケースは多いようです。

保健省が心配するように離乳食も「子どもへの愛VS肥満」という構図のなかにあり、試行錯誤している母親が多いのが実情といえるでしょう。

<参照URL>
https://www.salute.gov.it/portale/allattamento/dettaglioContenutiAllattamento.jsp?lingua=italiano&id=5253&area=allattamento&menu=comefare
https://www.ospedalebambinogesu.it/svezzamento-80539/
https://www.pianetamamma.it/il-bambino/svezzamento/svezzamento-dei-bambini-la-tabella-degli-alimenti.html
https://www.mellin.it/creme
https://www.nakano-med.or.jp/kosodate/images/rinyushoku_book.pdf
https://www.unesco.it/it/patrimonioimmateriale/detail/384
https://ameblo.jp/olivejournal/entry-12644484803.html
https://workingholiday-net.com/magazine/weblog/article-201004023271.html

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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