本来はサンタクロースもクリスマスツリーもなかった?イタリアのクリスマスはやや独特

本来はサンタクロースもクリスマスツリーもなかった?イタリアのクリスマスはやや独特

キリスト教徒にとって最も大切なイベント、クリスマス。カトリック教会の大本山バチカンを擁するイタリアのクリスマスは、さぞ豪華だろうと想像する方が多いと思います。ところが、歴史が長いだけに独特の伝統や風習がいくつかあるのです。他の欧米諸国とはやや異なる、イタリアのクリスマスについて紹介します。

日経DUAL記事

クリスマスイブの食卓、肉類はあがらず魚介類のオンパレード

プロテスタントの国や日本では、クリスマスといえば12月24日の夕食がメイン。日本でもクリスマスイブには、ローストチキンやクリスマスケーキでお祝いをする家庭が多いことでしょう。

一方イタリアでは、クリスマスイブには肉類を食べません。これはキリスト教会が禁止しているわけではなく、あくまでも民間に伝わる伝統のひとつなのです。

日本と同様にイタリアも海に囲まれた国なので、魚介類をよく食べるイメージがあります。ところがこれは海に面した街に限った習慣で、国全体では私たちが想像するほど魚介類の消費は多くありません。

ところがクリスマスイブには、前菜に生ガキやイワシのマリネが登場し、アサリやサーモンを具にしたパスタを食べることになります。肉類を使った豪華な料理は、クリスマス当日である25日のランチに登場。ラザニアや揚げ物など、ボリューミーなメニューでお腹を満たすことになります。

クリスマスイブの食卓、肉類はあがらず魚介類のオンパレード

イタリアのクリスマス菓子は生クリームなし

日本独自の生クリームたっぷりのクリスマスケーキとは異なり、欧米諸国にはそれぞれの食文化から生まれたクリスマスのお菓子があります。イタリアも地方によってクリスマスのお菓子は異なりますが、全土で食べられるのがパネットーネです。

言い伝えによれば、パネットーネは15世紀の終わりにミラノで生まれたとされ、日本でもよく知られるドイツのシュトーレンをふんわりさせたような食感。食料の調達が困難だった当時、クリスマスのお菓子はドライフルーツやナッツ類を使うのが一般的でした。パネットーネにも、干しブドウやオレンジピールがたくさん入っています。

また、ロミオとジュリエットの舞台となったヴェローナ生まれのパンドーロも、パネットーネと並ぶ代表的なクリスマス菓子。高さがあるふわふわとしたお菓子で、ドライフルーツが苦手な人にも愛されています。パネットーネにもパンドーロにも、生クリームは使われていません。

イタリアのクリスマス菓子は生クリームなし

他国から持ち込まれたクリスマスツリーやサンタクロース

イタリアのクリスマスシーズンは12月8日の「無原罪の聖マリアの祝日」に始まり、1月6日の「エピファニア(公現祭)」で幕を閉じます。エピファニアは、聖書に登場する東方三博士がイエスの誕生を祝うために贈り物をした日です。これにちなみ、かつてイタリアではクリスマスではなく、エピファニアの日に子どもたちが贈り物を受け取るのが本来の姿でした。

贈り物を配るのはサンタクロースではなく「ベファーナ」という魔女で、良い子にはお菓子を、悪い子には灰を置いていくと言われていたのです。今でも、言い伝えのような石灰をかたどったお菓子が存在しています。

南イタリアにゆかりのある聖人ニコラがモデルで、クリスマスイブに子どもたちに贈り物を持ってくるサンタクロースは、もともとドイツやオランダで広がった風習。後世に持ち込まれたものですが、現在のイタリアでサンタクロースは他の欧米諸国と同様にクリスマスに欠かせない存在になっています。

また、クリスマスツリーも本来はドイツのもので、イタリアでは「プレゼーペ」と呼ばれる人形の模型が伝統的な飾りです。

その起源は古く、カトリック教会の聖人のなかではピカイチの人気を誇る聖フランチェスコが提唱。1223年に聖フランチェスコがイエスの降誕シーンを飾ったのが最初とされ、当時の人びとの間で大人気になりました。

以来800年、イタリアではクリスマスの飾りといえばプレゼーペが主流となっています。プレゼーペは家のなかだけではなく、教会や役所、広場、駅などあらゆるところに飾られています。

クリスマスツリーをイタリアに初めて持ち込んだのは、イタリア王妃マルゲリータでした。ピッツァ・マルゲリータの名前の由来にもなっている王妃の人気は高く、19世紀半ばに彼女が王宮にクリスマスツリーを飾ったことで国内に広がったといわれています。

他国から持ち込まれたクリスマスツリーやサンタクロース

最も大事なものは親族一同の団らん

美味しい食べ物や美しい飾り付けにも増してイタリアのクリスマスで大事なものが、一族による団欒です。

イタリアのクリスマスは日本のお正月に近い感覚で、普段は離れている親族一同が会し、食事やおしゃべりを楽しみ、ゲームに興じます。時間をかけてご馳走を堪能したあとは、老若男女が参加できるカードゲームやボードゲームを夜が更けるまで楽しみます。子どもたちもこの日ばかりは夜更かしを許され、どの家の窓からも温かな灯りが漏れる、それがイタリアのクリスマスの光景なのです。

最も大事なものは親族一同の団らん

まとめ

このように本来はサンタクロースもクリスマスツリーもなかったイタリアのクリスマスには、今でも他の欧米諸国とは異なる独自の伝統や風習が残っています。一般的なクリスマスのイメージとは少し違っていますが、国民の約8割がカトリック教徒ということやバチカンの存在、歴史の古さを思えば、しごく当然と言えそうです。

<参照URL>
https://www.lacucinaitaliana.it/news/in-primo-piano/ma-perche-si-mangia-il-pesce-alla-vigilia-di-natale/
https://www.gamberorosso.it/notizie/panettone-storia-e-curiosita-sul-dolce-del-natale-per-eccellenza/
https://www.treccani.it/enciclopedia/presepe/
http://www.monzareale.it/2019/12/19/albero-natale-regina-margherita/

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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