「〇〇もうやった?」でなぜ子どもはへそを曲げるの?

「〇〇もうやった?」でなぜ子どもはへそを曲げるの?

ママが子どもに何か言ったら、「今やろうと思ってたのに」「もうやーめた」。強く叱ったわけでも、怒鳴ったわけでもないのに、急にへそを曲げられて困った経験はないでしょうか?

今回は、ママの些細な言葉で、なぜ子どもはカチンとくることがあるのか、その心理現象についてお伝えしていきます。

日経DUAL記事

子どもがへそを曲げるのには、ある心理現象が関係していた

子どもにちょっとばかり催促を…と、「宿題は?」「歯磨きは?」「お片づけは?」と言ったら、予想外の勢いで、
「うるさいな(怒)」
「今やろうと思ってたのに」
「そんなこと言うならもうやらない」

そんなに強く言ったつもりはないのに、へそを曲げられ、
「ホント、面倒くさいわ~」

こんな経験、ありませんか?

実は、この怒りは、普通にイライラしたり、怒ったりするのと少し違い、「心理的リアクタンス」という名前がついた心理現象です。一般的な怒りとは、脳の動きが違うことも分かってきています。

実はママ自身もよく経験している「心理的リアクタンス」とは?

「心理的リアクタンス」とは、今から50年ほど前に、アメリカの心理学者・ブレーム博士が提唱した心理用語です。特徴は、「説得されると、抵抗したくなる」ということで、子どもだけでなく、実は私たち大人も、よく経験している心理現象です

たとえば、ショッピング中。「あ、このワンピース、いいかも」と思い、早速お店に入り、手に取って見ていたら、店員さんが声をかけてきたとしましょう。「これいいですよ」「絶対に買いですよ」と強く勧めてきます。すると、その押しが急に不快になってきて、結局は、「ちょっと考えます」と買わずにお店を出てきてしまった……。こんな経験はないでしょうか?これが、心理的リアクタンスというものです。

では、さっきまでは気に入っていたはずのワンピースなのに、なぜ心理的リアクタンスを起こしたのか……?

人間は、もともと「自分の意思で自由に決定し、行動したい」という欲求があるため、自分の自由度が奪われた感覚に陥ると、とっさに反抗、反逆し、奪われかかった自由を取り戻そうという心理が働くのです。自己防衛の一種とも言えるでしょう。

実際には、お店の店員さんは、お客さんの自由を奪おうなんて思っていないのですが、当人が奪われた気がすれば、それが作用し、瞬時に壁を作るのです。

「買いましょうよ」⇒「いや、買わない」
「とってもいいですよ」⇒「いや、よくない」
と説得された方向とは逆方向のリアクションをして、自分を保とうとする心理です。相手に言われた内容とは反対の態度を取ることで、自分で意思決定しているという感覚を得ているのです。

心理的リアクタンスを起こしがちな言葉とは?

普段のお子さんの様子を思い浮かべ、「あ、これ当てはまるかも」と思った方もいるのではないでしょうか。冒頭に書いた、「今やろうと思ってたのに~!」というリアクションは、まずこれでしょう。

一般的には、
・説得するような強い言い回し
・操作しようとする言葉
・決めつけた言い方

が、心理的リアクタンスを起こしやすいと言われています。

親子間で言うなら、
・「〇〇すべき」「〇〇しなくちゃダメだよ」のような許容範囲を限定する言い方
・「子どもは勉強をするものなの」「ママの言うことを聞くのは当たり前」のような子どもの自由度を狭める言い方
・習い事や教材など、「〇〇が絶対いいよ」「これやりなよ」「今すぐやった方がいい」と一方的に話を進める言い方

などが挙げられるでしょう。

あとは、
「歯を磨いた?」「宿題やった?」「片づけた?」

これでも、捉え方によっては、リアクタンスを起こす子がいるでしょう。とくに日ごろ、これらのことで散々叱られていると、「宿題やった?」と言われただけで、子どもは、詰め寄られている気がしてしまうもの。ママからしたら、子どもにやって欲しいことを促しているにすぎなくても、子どもは、「ママはボクがどうせやってないと決めつけて、そう言っているんだ」と解釈するため、反抗心を起こしてしまうことになります。

子どもがその気になる声かけのコツ

小さいうちは、いったんへそを曲げると、余計に面倒なことになってしまうことも多いですよね。では、どういうアプローチが望ましいのでしょう?

上に書いたショッピングの例でイメージすると分かりやすいと思います。店員さんがどんな風に接してくれれば、私たちは、そのワンピースを実際に買おうと思うでしょうか?

・おすすめポイントをさらっと言ってくれるだけでいい
・押しを弱くしてくれたらありがたい
・「よかったら、ほかもご覧になってくださいね」だとなお嬉しい

どれくらい踏み込んできてもらいたいかは、個人差がありますので、好みの距離感はそれぞれだと思いますが、いずれにしても、「自分で決めたい」、そう思うのではないでしょうか。子どもも同じです。ガツガツ行かず、子どもが、「自分で決めている」と感じられるようにすることです。

「これやった方が絶対いいよ」よりは、「こんなのもあるんだね」
「さっさとやっちゃいなさいよ」よりは、「調子はどう?」

とくにやっていないのが明らかな場合、わざわざ「〇〇した?」と確認しても、事がややこしくなるだけ。

「歯磨きした?」よりは、「お、今、歯磨きに行くところ?さすが~」
「いつまで食べてるの」よりは、「あと二口だね」

のように、できているところから、認めてあげることで、軌道が作られ、事がスムーズに進みやすくなります。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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