聞く、聴く、訊く。正しく使えばぐずりも解消! 育児に大切な「きく」 の3種類とは?

聞く、聴く、訊く。正しく使えばぐずりも解消! 育児に大切な「きく」 の3種類とは?

子どもの話を「きくこと」は大事と言われていますが、同じ「きく」でも3種類の「きく」があります。どれをすべきで、どれをすべきでないか、そして、育児においてもっとも大切な「きく」を実践するポイントは? 子育て心理学を交えてお伝えしていきます。

日経DUAL記事

やっているのは3つの「きく」のうちのどれ?

日本語は同じ音でも、漢字によってニュアンスの異なるものがたくさんあります。たとえば、「みる」。パソコンで入力すると、見る、診る、観る、視る、看ると5つも候補が出てきます。目を使った行動ということは共通しつつも、少しずつニュアンスが違います。

「きく」も同様です。育児では、「子どもの話をきくのは大事ですよ」と言われていますが、では、その「きく」って、どんなきくなのでしょうか?

育児に関係する「きく」には、聞く、聴く、訊くの3種類があります。

●「聞く」とは、音や声を耳で感じとること
●「聴く」とは、心を落ち着け注意して耳に入れること
●「訊く」とは、たずねて、答えを求めること

それぞれの意味を改めて並べてみて、気づいた方もいると思います。そうなんです。3番目の「訊く」は、他の2つの聞く、聴くとは大きくニュアンスが違うのです。普通、何かをきくというと、自分は耳を傾ける側です。でも、訊く場合は逆で、自分は質問を投げかける側。相手がその質問に耳を傾けてくれている状態です。

普段の親子のコミュニケーションを振り返ってみましょう。一番多いのは、聞く、聴く、訊く、どれでしょうか?

「今日はどうだった?」「何したの?」と質問攻めに

子どものことで何か気になることがあると、ママは、「訊く行動」が増える傾向があります。

「幼稚園どうだった?」「楽しかった?」「今日は何したの?」

園での様子が気になるあまり、矢継ぎ早に質問をしたくなります。ママは敏感に子どもの様子を察し、「あ、今日、幼稚園で何かあったな」とか、「今日ちょっと、元気ないかも」と気がつく分、その不安や心配が先に立ってしまい、上のような質問を次々と投げかけてしまうのです。でも、このパターンだと、親子間の会話のほとんどをママが主導している状態に……。子どもの話をきくのが大事なのに、いつのまにか立場が逆転してしまいます。

そして実際には、このような質問をしても、子どもが元気になったり、笑顔になったりということはあまりありません。むしろ、「わかんない」「よかったよ」のようなつかみどころのない返事が返ってきてしまい、ママのモヤモヤ感は晴れぬままの方が多いかもしれません。

このように、3番目の「訊く」は、ママの不安解消材のように使われることが多く、その割には実際の問題解決には役立たないことがほとんど。では、育児に大事な「きく」とは、どれを指すのでしょうか?

「耳」「目」「心」で聴く

育児でもっとも大事なのは、子どもの話をよく聴くことです。この「聴く」という漢字を分解すると、「耳」「目」「心」が入っているのが分かります。

●子どもの声に「耳」を傾けましょう
●子どもと「目」をしっかり合わせましょう
●子どもの「心」の言葉を聴きましょう

と言っているようです。もう1つの聞くだと、自然に耳に入ってくる声を拾うニュアンスですが、「聴く」はもっと気持ちを傾けて声を拾いに行きます。

心理学では、これを「傾聴(けいちょう)」と言います。具体的には、子どもの「ママ、聞いて聞いて!」という言葉を、興味を持って聴くことを指します。そこには、小手先のテクニックは要りません。

子どもの目を見て、耳と心を傾ける、それがすべてです。

「聴く」が子どもに自信や安定をもたらす理由

ぐずりがひどい、言うことを聞かない、友だちとケンカをしてしまう……。こんなとき、「もう泣かないの」「いいかげんにしなさい」「ケンカしないの!」と言っても、たいがい効果はありません。カウンセリングでよく出会うのが、ママが傾聴を意識したことで、それらの悩みが解消されたというケース。子どもの話を、おやつの時間、お風呂の時間、寝る前の時間にしっかりと聴くようにしたら、ぐずらなくなった、言うことを聞くようになった、ケンカをしなくなったという話は本当によく聞きます。

「聴く」を通して、ママに自分の存在を肯定してもらっている感覚を得られるため、自信が出てきたり、気持ちが落ち着いてきたりするからです。育児で悩むと、その困っている行動に対して直接的に働きかけて改善しようとしてしまいますが、「聴く」を使った間接的なアプローチの方が、結果的に子どもの心を動かすことはよくあります。ぜひ、「聴く」を取り入れてみてください。その際は、「今晩のメニューどうしようかな」とか、「あとでメールの返事をしておかないと」など、気持ちがフラッと外に行かないように意識し、しっかりと真剣に聴くのがコツです。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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