自己主張が強い子どもは自立しやすい?わがままとの違いや対応策を解説
子どもの自己主張の強さに悩むご家庭は多いものですが、「自己主張が強い方が、自立がスムーズ」という意見もあるようです。そこで今回は自己主張の強さにフォーカスを当てながら、その後の成長とのつながりについて見ていきたいと思います。
目次
自己主張とわがまま、癇癪の違いとは?
はじめに、今回のテーマである「自己主張」とそこに関連するキーワード「わがまま」「癇癪」をそれぞれ辞書的な定義で見ていきましょう。
・自己主張:自分の意見や考え、欲求などを他人に伝えること
・わがまま:他人や周囲の都合や事情を考えずに、自分勝手にふるまったり発言したりして、欲求を通そうとすること
・癇癪:感情を抑えきれないで激しく怒りだすさま
とあります。
「どこまでが自己主張で、どこからがわがままなのかがわからない」という方は多いと思いますが、この定義を見ると、その違いは見えやすいかと思います。この2つは、自分の意見や考えが通らない余地を残してあるかにおいて大きな違いがあります。自己主張は自分の考えを述べることなので、相手の考えも聞く耳を持ち、「そういう考えもある」と受け入れることができます。一方のわがままは、自分の考えを無理にでも通そうとし、時に癇癪を起こしてでも思い通りにしようとします。
このように、実は別物の2つですが、一般的には、両者を1つの線状に捉え、自己主張が強過ぎること=わがままと捉えている人が多いように思いますので、ここではその認識も加味しながら、子どもにとって望ましい自己主張の形をお伝えしていきたいと思います。
自己主張の強い・弱いを決める2つの要因
どこまで主張するかはその子それぞれ大きく違いますが、その違いは何にあるのでしょうか。ここでは、自己主張の強い・弱いはどこから来るのかを見ていきましょう。
その1 その子の持って生まれた気質によるもの(気質型)
まず1つは、その子の持って生まれた気質によるものです。頑なに粘る子、こだわりが強い子は主張が強くなる傾向があります。「これ!」というものがはっきりしているため、そこへの執着が主張につながりやすくなるのです。逆に、気質的にもともと穏やかで切り替えが容易にできる子がいますが、そういう子はイヤイヤ期であっても主張の強さが目立たなかったりします。
その2 制限がなく育ち、欲求を抑制されることが苦手になった(環境型)
2つめは、気質的には頑ななタイプではないのに、自己主張が強いタイプの子です。私の相談室でもよく見られるケースで、親が振り回されてしまっていることが多いです。この場合、親御さんにお話を伺うと「甘めに育ててきた」とおっしゃる方が圧倒的に多く、制限のない中で日々を過ごしているうちに、欲求を抑制することが苦手になってしまい、何でもかんでも思い通りに押し通すのがその子のテンプレートになってしまうのです。
このように見ると、自己主張の強さは気質的要素が大きいですが、日々の環境要素も大きいことがわかります。
自己主張は強い方がいいの?自立がスムーズって本当?
では、自己主張が強いのはいいことなのか、自立がスムーズという話は本当なのかについて見ていきたいと思います。
結論から先に言うと、正当な自己主張であれば強いことは望ましく、それがその子の自立の助けになると言えると思います。
「正当な」というのがポイントです。
自己主張は、英語でセルフ・アサーションと言われ、心理学でもアサーティブであることは人間関係を円滑にする上で大事なスキルの1つとされています。会社で働いている方の中には、研修などで「アサーティブ・コミュニケーション」や「アサーション・トレーニング」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、相手にも相手の考えがあることを踏まえた上で自分の気持ちを伝えるコミュニケーションのことです。上記でお伝えした自己主張の定義とかぶりますね。
・自分の意見を一方的に押しつける→主張し過ぎ
・自分の意見を飲み込んでがまんする→主張しなさ過ぎ
このどちらでもなく、思いを相手に伝えられる主張が、正当な自己主張と言えます。
今回は自己主張の強さにフォーカスを当てていますが、実際に社会に出ると、自己主張の弱さも問題になります。言いたいことを言えずに1人で抱え込むなどはその典型です。要は、主張し過ぎも、しなさ過ぎも問題で、それゆえアサーティブなコミュニケーションが求められるのです。
相手をリスペクトしつつも、自分の意見を言うことに慣れている子は、自分の軸がしっかりしていて、自らの足で歩んでいける分、親からすると頼もしく、それゆえ、自立がスムーズだったと感じやすいのだと思われます。
自己主張が強い子の特徴と親がとりたい対策
「自己主張が強いと自立が早い」、この言葉を鵜呑みにしてしまうのは望ましくありません。もし、「うちの子は自己主張が強いから将来的には大丈夫。今だけの辛抱」とか「ひたすら我慢、通り過ぎるのを待つのみ」というような対応になってしまうと、逆に主張がエスカレートしてしまうことさえあるでしょう。単なるわがままでは、自立しようにも無理があるのは明白です。
上記で、「甘めに育ててきた」というパターンを述べましたが、家庭のルールとか、親子間の決まり事のようなものがない、もしくはあってもなし崩しになっている場合は、そこを再考することが正当な自己主張につなげる上でとても大切なポイントになります。さもないと、その子は、“状況に応じて気持ちを制御する”という大事なことを学ばぬまま大きくなってしまうからです。ルールやお約束のような親子間の決まりごとがあることで、
「今は○○することができない時間だ」
「こういう場合はスイッチを切らないといけない」
という“状況に応じた気持ちの制御”が練習できるのです。それをせぬまま自己主張が強くなり過ぎれば、親も感情的に言い返したりすることが増えてしまいますし、正当な主張からはますます遠ざかることになってしまいます。
自分の欲求を押し通そうとしがちな子は、「昨日はOKだったのに今日ダメと言われた」というシチュエーションがとても苦手です。もれなく親の限界までプッシュしてくることでしょう。
ですので、
・昨日と今日が同じルールになっているか
・パパとママで違うことを言っていないか
・そもそもルールがあるのか
ここは振り返るべきポイントになります。家庭内の習慣は長くなればなるほど変えるのが大変なので、できるだけ小さいうちに改革をすることをおすすめします。
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育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/