【オーストラリアの国際バカロレア(IB)】小学生の放課後の過ごし方や宿題の特徴とは

今回は、オーストラリアで国際バカロレア(IB)校に通う小学生の放課後や宿題などについて紹介します。
子どもたちは放課後にスポーツや音楽、さらにIBの理念でもある「思考力」や「探求心」を育むSTEM教育など、盛りだくさんな課外活動に参加。高学年なると、IB校の特徴ともいえる創造的で分析的な思考を促すさまざまな宿題に取り組んでいます。
すべて学校内で行われる放課後の課外活動
オーストラリアクィーンズランド州のIB小学校では、通常授業が15時20分頃に終わります。週に数回、多くの子どもはそのまま学校に残り、学校が主催するさまざまな課外活動に17時前後まで参加します。
オーストラリアでは学校や習い事場所と自宅の距離が離れていることが多く、保護者の車での送迎は必須。
そのため、放課後の活動がすべて学校内で行われることによって、保護者の負担は大きく軽減されます。また、慣れ親しんだ環境で放課後も過ごせることは、子どもの精神面や安全面でも大きな利点といえるでしょう。
STEM教育のプログラムが盛ん
放課後は、学校内で多くの子どもたちがスポーツ活動に参加します。人気があるのは、水泳、テニス、サッカー、ラグビー、ネットボール、陸上競技、トライアスロンなど。オーストラリアは屋外活動や水辺のスポーツが盛んな国であり、その文化的背景も放課後の課外活動に反映されています。
芸術面では、ピアノ、フルート、バイオリン、クラリネット、トランペットなどの楽器のプライベートレッスンのほかに、オーケストラや合唱団などの活動があります。オーケストラや合唱団は小学校1年生から参加することができます。
そしてIBの小学校として特徴的なのが、STEM教育活動の課外活動が放課後にあること。たとえばロボットクラブでは、同じ学校の高校生に手伝ってもらい、一緒にプログラミングに取り組んでロボットを作成します。
化学実験クラブでは塩の結晶成長を観察したり、レゴクラブでは毎週決まったテーマで自由にレゴを使って作品を作ったりします。また、コミュニティーサービスの一環である環境保全クラブでは、自分たちでできる環境保護は何かをディスカッションし、学校の周りや校内のごみ拾いに参加することもあります。
これらの放課後課外活動は全員参加ではなくあくまで自主的なものですが、IBの小学校では放課後も子どもが成長するための重要な時間と捉え、さまざまなプログラムを提供しているのです。
宿題のポイントは「思考力」「探求心」の育成
課外活動を終えて帰宅すると、子どもたちは休憩や夕食後に宿題をします。IB小学校プログラムPYP(Primary Years Programme)の1~4年生まではほとんど宿題がありませんが、PYP最終学年の5年生になると、6年生からのMYP (Middle Years Programme)への移行準備として自宅で課題に取り組むことが多くなります。
IB校の宿題では暗記や反復練習が少なく、「思考力」や「探求心」の育成に重点が置かれ、創造的で分析的な思考を促す課題が中心となっています。小学5年生で実際に出された宿題の例としては、「自宅周辺の地図を描く」というものがありました。
一見シンプルな課題に見えますが、実際に家の周りを歩き、道路や店の名前などをメモし、ネット上の地図などで追加データを集めるなど、詳しいリサーチから始めます。
集めた情報を整理し空間を平面上に表現するという作業は、単に周辺に関する知識を身に付けるだけでは達成できません。空間認識能力や分析力、必要な情報をまとめる表現力などが必要で、複数の教科を横断する総合的な学びとなっています。
これに限らずほかの宿題も、算数、読み書き、社会、理科など複数教科の知識を使わないと完成しないものが多いのが特徴です。
このようにさまざまな教科が混ざっているため、IBプログラムの子どもたちは、現在自分がどの教科の宿題をしているのか認識していない場合もあるほどです。
自宅周辺の地図を描いた筆者の子どもの宿題、フォーマットは自由で自分で工夫する
親の工夫で可能なIBスキルの育み方
こういったIB校の宿題は難しそうなイメージもありますが、実は日本の学校で出される宿題でも、親の問いかけ次第で「思考力」や「探求心」を育むことができます。
例えば掛け算の問題でも数をたくさんこなして反復するのではなく、「3×2」ならば「3人がそれぞれポップコーンを2袋欲しければ合計何袋必要か」というような質問をします。実生活ではどういう時に掛け算を使うのか、ヒントを与えて使い方を理解させるのです。
さらに、ポップコーンはどこの国で生まれたのか、その国は世界地図でどこにあるのか、ポップコーンはどうやって作るのか、「3×2」の「×(掛ける)」は英語では何というのかなどについて、考えさせるようにします。
すると算数だけでなく、社会、ネットの検索スキル、英語といった複数の教科内容を総合的に学ぶことができます。
オーストラリアの親は自分の力で課題を完成させる姿勢を大切にしており、アドバイス程度はするものの、直接手を加えることはしません。
完成度が高い宿題を提出させたい気持ちがあっても、子ども自身が取り組み、最後まで自分の力で仕上げることが重要という考え方です。小学生時代の成績よりも、小学校で培った課題への取り組み能力が中学・高校での勉強や興味にいかにつながっていくかを重視しています。
植民地時代から現在までオーストラリアがどう変化してきたかを物語にする宿題も
まとめ
IB校小学生の多彩な放課後活動や、思考力・探求心を育むための宿題は、中学・高校のIBプログラムで求められるスキルを身に付けるために必要なステップといえそうです。
このように小学校時代から自然な形で段階的に経験を積むことが、グローバル社会で活躍できる能力の育成につながっていくのかもしれません。
<参考URL>
https://www.ibo.org/programmes/primary-years-programme/
https://www.educationtoday.com.au/news-detail/The-Importance-of-Extra-curricular-Activities-to-Enhance-Student-Outcomes-5615
https://www.pypteachingtools.com/blog/integrating-math-into-an-ib-pyp-unit-of-inquiry

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