世界の富裕層が注目する“将来への投資”!? スイスのサマースクール留学事情

世界の富裕層が注目する“将来への投資”!? スイスのサマースクール留学事情

豊かな自然、美しい湖、国際都市としての洗練、そして何より質の高い教育。今、世界の富裕層の間で、スイスの名門ボーディングスクールおよび、そこが開講するサマースクールに注目が集まっています。中欧の一国であるスイスのサマースクールが国境を超えて支持される理由は何なのか。3歳から高校生までのスイス留学の専門家である田山貴子さんにご説明いただきます。

※本記事は、田山貴子による寄稿です。
内容は筆者個人の見解であり、SHINGA FARMおよび伸芽会の公式見解を示すものではありません。

田山貴子
「日本の子どもたちに、スイスの教育環境を活用していただきたい」という想いのもと、日本の子どもたちが将来、国際社会の中で、充実した生活を送ることができる成人になるための最適な教育環境を提供すべく、日本とスイスの架け橋となるなど、留学サポート活動を行っている。
https://swiss-ryugaku.com/
https://swiss-ryugaku.com/about-us/ceo-message

イギリス王室や貴族の子息も学んだ「寄宿学校」

ボーディングスクールは「寄宿学校」のことで、欧米を中心に世界各地にあります。世界的に大ヒットした『ハリー・ポッター』の舞台であるホグワーツ魔法魔術学校も、魔法使いの世界におけるボーディングスクールです。

基本的には全寮制で、生徒たちは親元を離れて「ハウス」と呼ばれる寮で同級生たちと寝食を共にし、昼間は学校でさまざまな教科を学んでいきます。

ボーディングスクールの制度は、15〜16世紀にかけて創設された寄宿学校が基になっています。学業面だけでなく上流階級において必要なマナーや知識、社交性なども教育されるため、歴代のイギリス王室や貴族の方々もここで学ぶことが伝統となっており、近年ではチャールズ国王とその子息のウィリアム皇太子とヘンリー王子も、名門ボーディングスクールを卒業しています。対象年齢は、3歳から高校生までです。

一方、スイスのボーディングスクールは戦後に設立されたところが多く、その大きな特徴は、イギリスのボーディングスクールは留学生の割合が4分の1ほどなのに比べて、スイスのボーディングスクールはほぼ全員がスイス国外からの留学生です。しかも、少ない学校でも20ヵ国、多いところでは120ヵ国からの留学生が集まっています。

特にヨーロッパのフランス、ドイツ、イギリス、北米のアメリカ、カナダ、アジアの中国、日本、韓国、そして中東のサウジアラビア、アラブ首長国連邦などからの留学生が数多く見られます。

留学生たちのもう一つの大きな特徴は、富裕層のご家庭の子息がほとんどだということです。というのも、スイスのボーディングスクールの場合、1年間を通して学んだ場合、留学費用は年間2000万円〜3000万円ほどかかるからです。この高額な教育費を「投資」できる富裕層の子息が集まっているのがスイスのボーディングスクールなのです。

サマースクール参加者の国旗を持つ子どもたち。画像:田山貴子氏提供

スイスのボーディングスクールの「3つの特徴」

世界の富裕層たちが子息をスイスのボーディングスクールに留学させる理由は、大きく分けて3つあります。

一つ目が、世界各国から集まった留学生とともに、世界トップクラスの教育環境で学べるということです。スイスの教育レベルの高さは世界的に定評があり、世界各国の王族や貴族、一流企業の経営者などの子息が留学する名門ボーディングスクールが数多くあります。学生時代にこういった同級生たちと寝食を共にして学ぶことで、将来的には世界的に影響力のある人たちとのコネクションができることになります。これが本人の大きな財産になっています。

二つ目が、スイスの豊かな自然環境の中で安心して豊かな自然から学べることです。山や森などの自然がすくそばにある学校も多く、そういった学校では授業時間に近くの森に行って自然の生態系を学んだり、きれいな空気の中で体を動かすことで自然と体が鍛えられたりと、周囲の自然を活かした教育も行っています。

そして三つ目が、国際色豊かな環境の中で暮らし、学べることです。生徒のほとんどがスイス国外からの留学生で、しかも特定の国や言語に偏りがなく、どの国から来た生徒も対等の立場で向き合うことができます。

スイスは親にとって「安心して子どもを送り出せる国」

上述した3つの特徴のほかに、スイスのボーディングスクールが支持される大きな理由の一つが、全人教育へのこだわりです。国際バカロレア(IB)などの教育プログラムをベースに、語学や学力だけでなく、マナー、社交性、リーダーシップといった人間性まで磨くことができます。

さらに、長年にわたる政治的中立、世界的にも高い治安水準、そしてアルプス山脈やレマン湖など豊かな自然環境での活動を通じて自然との共生や自立心を育むことができるスイスは、親にとっても「安心して子どもを送り出せる国」として絶大な信頼を得ています。

また、学校の外では、スイスならではの多言語・多文化の中で国際的なコミュニケーション能力を磨くことができます。スイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、そしてロマンシュ語の4つで、地域によってメインで話されている言語が異なるのです。

スイスのボーディングスクールのほとんどは、英語が校内のメイン言語となっていますが、英語をメインにしてフランス語またはドイツ語も学ぶバイリンガルの学校や、フランス語、ドイツ語をメインとするコースが用意されている学校もあります。

また、学校では英語がメインで、寮ではフランス語で生活するスタイルの学校もあります。そして、学校の外はもちろん多言語の社会で、学校がある地域でメインに話されている言語に囲まれ、その言語で街の人たちとコミュニケーションをとることになります。

このようにして、英語以外の言語も、日常的に使うことで自然と習得していくことができます。

世界中から集まる子どもたちとの寮生活で磨かれる国際性

スイスのボーディングスクールは1年〜数年かけて学ぶことが理想的ですが、サマースクールのような短期留学でも大きな成長が見られます(一部のボーディングスクールでは冬季のウインタースクールも開催)。
サマースクールでは、午前中に学習プログラムがあり、英語やフランス語の語学学習、グループワークやディスカッションを行うリーダーシップ育成、アート・音楽・演劇などのワークショップで表現力を高める創造的活動などを行います。


サマースクールの授業風景。画像:田山貴子氏提供

午後はアウトドアやスポーツ、文化的なアクティビティが中心となります。そこでは、ハイキング、カヤック、キャンプといった自然体験に加え、多様なスポーツを通じて体力と協調性を育むことができるだけでなく、美術館巡りや地元の祭りへの参加など、スイスの文化にも深く触れることができます。

サマースクールのアクティビティ風景。画像:田山貴子氏提供

特筆すべきは、世界中から集まる同年代の子どもたちとの寮生活です。異なる文化背景を持つ仲間と生活をともにすることで、語学力だけでなく、国際的な視野、自立心、協調性を身につけられます。これは、一般的な学校では得られない“生きた国際経験”となります。

スイスのあるサマースクール(9歳以上対象)の1日の流れはこのようになっています。

09:00〜12:00:語学やリーダーシップの授業
12:15〜13:30:昼食
14:00〜15:45:クラブ活動(スポーツ、アート、料理、ロボティクスなどから選択)
16:15〜17:45:アクティビティ(乗馬、音楽、ダンス、アート&クラフトなど)
18:00〜19:00:夕食
20:00〜21:30:夜の社交イベント(ダンス、バンケット、ゲームナイトなど)
※週末:スイス各地への日帰り旅行やアルプスでのハイキング

サマースクールのアクティビティ風景。画像:田山貴子氏提供

学ぶ・遊ぶ・交流する。このすべてを日常の中で自然に経験できるのが、スイス流サマースクールの魅力です。また、数週間という短期の留学であることから、年間を通して学ぶ正規留学に比べて、留学費用を大きく抑えることができます。

最初は“2週間”の短期留学から

サマースクールの留学期間は一般的に2〜6週間。英語や生活環境に不安のある初参加者には、2週間が無理なく挑戦できる期間で、新しい環境に慣れるのに数日かかり、2週目から本格的に楽しむことができます。

一方で、語学力や自立心のあるお子さまには、3週間以上の参加がおすすめです。語学力の向上や異文化適応力が養われるだけでなく、複数の国から参加する生徒が入れ替わることで、より多様な交流機会が生まれるからです。

ただし、6週間ともなるとアクティビティの繰り返しも生じる可能性があるため、「新しい体験」を求めるタイプのお子様にとっては事前に学校に確認しておくと心の準備ができるでしょう。

ここで、実際にスイスのサマースクールに留学したお子さまと、お子さまを留学させた親御さんの声を紹介します。

●チアさん(9歳)のお母様
「1ヵ月の留学でしたが、子どもの自立心が芽生え、著しく成長して帰ってきました。お友だちとの共同生活で、言いたいことは我慢せず伝えられるようになったようです。さらに、人見知りな性格も変化が見られ、行かせてよかったと心から思っています」

●A.H.さん(11歳)
「スイスでのサマースクールを体験後、1年間の正規留学をしました。最初にスイスに来た時に比べると、聴解・会話力が向上し、先生やお友だちとの会話も楽しむことができるようになりました。スイスの学校にはいろいろな国籍の生徒がいるので、特別扱いされることなく、みんな平等な環境で学習に取り組むことができました」

●Sさん(15歳)
「規模も小さいので、全ての先生が全ての子ども達のことを把握していて、生徒、スタッフ全員で一丸となって楽しむ環境があり、それがよかった」

サマースクールへの留学は「将来への投資」

画像:田山貴子氏提供

子どもをスイスのサマースクールに参加させる富裕層のご家庭では、費用対効果よりも、「どれだけ安全で、前向きな経験になるか」を基準に判断しています。子どもにとって価値ある学びの場であるかどうか、それを見極めたうえで、回数を重ねるごとに滞在期間を延ばしていくご家庭も少なくありません。

また、最初は短期のサマースクールで経験を積んで、その後、1年以上の正規留学に進むケースも数多くあります。その意味でも、サマースクールはとっておきの準備期間となるのです。

スイスのサマースクールには、グローバル社会で活躍するための基礎力を育む環境があります。語学力、自立心、他者との協働力。子どもをここで学ばせるご家庭の多くは、サマースクールへの留学を「将来への投資」として捉えているのです。

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