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【海外の女性活躍事例①フランス】ママブロガー&作家から政界入りしたシンデレラ

【海外の女性活躍事例①フランス】ママブロガー&作家から政界入りしたシンデレラ

昨年10月に「世界経済フォーラム」が発表したジェンダーギャップ指数で(社会進出における男女間の格差を国別に算出した指数)、日本は144カ国中111位という低さでした。各国と比較しても、とくに女性の政治参画の遅れが指摘されています。

では実際、海外で活躍中の女性が育った家庭環境や受けた教育はどのようなものだったのでしょうか。第一回目はフランスです。

ママブロガーが政治家に転身するまでの道のり

フランス現内閣フィリップ首相の下で、女性の権利や立場向上に奮闘する女男平等担当副大臣、マルレーヌ・シアパ。マクロン政権が誕生した17年の入閣以来、その名前を聞かない日はないくらいの活躍ぶりを見せています。

彼女の一風変わった政界入りの軌跡は、子育てや今を生きる女性たちのヒントがあるかもしれません。

マルレーヌ・シアパ女男平等担当副大臣(以下シアパ副大臣)が夫から付けられたあだ名は、なんと「ブルドーザー」。シアパ副大臣はとにかく仕事熱心で、じっとしていることが苦手な性分だと言います。

大学卒業後、広告代理店に就職したシアパ副大臣は20代で第一子を出産しますが、広告業界の過酷な勤務時間と保育時間を合わせることが難しくなり、やむを得ず退社。

2008年に働くママを応援するブログ「ママン・トラヴァイユ(働くママ)」を立ち上げます。フリーランスとなってからも、打ち合わせの場所に子連れで行くような状況が続き、女性の仕事と育児の両立問題に深く関わるようになります。

それと併せて関連書籍の執筆も行い、これまでに15冊の著書が出版されています。

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一ブログとして始まった「ママン・トラヴァイユ」は、コミュニティーからネットワークへと繋がり、さらにはイベントやセミナーを主催する組織に成長。この精力的な活動が認められ、仏西部ル・マン市へ引越ししたのを機に、市長から声がかかり市議選に出馬。ル・マン副市長として政界入りを果たします。

さらに2016年、ル・マン市で開催されたイベントに大統領選挙に向けて準備中だったエマニュエル・マクロンが招待されたことをきっかけに、男女平等法の政策担当としてマクロンの大統領選キャンペーンに参加。氏の当選と同時に34歳の若さで女男平等担当副大臣に任命されました。

ここでシアパ副大臣がどのような幼少期を過ごしてきたのか、本人と家族の証言をもとに振り返ります。

政治の話は日常茶飯事!本に囲まれて育った幼少時代

シアパ副大臣の父親は歴史学者で、自宅に3,000冊以上の本がある環境で育ちました。また、毎週のように本屋や市立図書館へ通うことを欠かさなかったとも言われています。自身の著作本を手がけるようになるベースは、この時期に築かれていたのかもしれません。

共産党の熱心な支持者であった両親は、シアパ副大臣が幼い頃から週末になると揃って共産党支持者の集会へ出かけ、家庭内で政治の話をするのが日常でした。しかし副大臣本人は両親の政治思想を引き継がず、市議選には社会党から出馬。現在は中道派の内閣で自分のビジョンを持って政治に関わっています。

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女性の権利に関心の高いフェミニストである一方で、シアパ副大臣には夢見る少女の一面がありました。本人が語ったところによりますと、結婚願望は5歳の頃からあり、妹とともに「将来子どもに付けたい名前」リストをつくって遊んでいたというエピソードもあります。

ともに幼少期を過ごした妹によると、慈愛に満ちた面も持ち、小さい頃によく「私が大きくなったら大きなビルを買って、家のない人たちが皆で住めるようにしたい」と話していたと言います。

副大臣が育ったのは教育水準の高い家庭でしたが決して裕福とは言えず、シテと呼ばれる団地育ちであったことも自らインタビューで明かしました。そして、早い時期からたくさんのアルバイトをこなして経済力をつけ、コネにも学歴にも頼ることなく、着々と人脈を築き上げていたことも証言しています。

次にシアパ副大臣が学んだフランスの大学と、その独特な制度について見ていきましょう。

進路変更は強みにもなり得るフランスの大学制度

フランスの高校卒業試験バカロレアを経済・社会科学専攻で合格し、パリのソルボンヌ大学では地理学とロシア語を学んだシアパ副大臣。広告代理店への就職後も学びの意欲は続き、産休期間中にフランス南東部のグルノーブル大学で、コミュニケーション&ニューメディア学科電子著作物専攻のディプロマを取得しています。

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産休という限られた期間で高等教育のディプロマを取得することに成功したのは「Validation des Acquis de l’Expérience(実務経験評価のこと。VAEと略される)」と呼ばれる制度によるものです。

フランスの国立大学編入時に、これまでの実績の評価によって履修課程の短縮が考慮されるもので、副大臣もこの制度を利用しました。

フランスの国立大学では、ひとつの学部や学科に留まる学生は少数派で、多くの学生が大学や学部・学科間の変更を経験しています。たとえはじめに進路の選択に失敗したとしても、そこで時間を無駄にすることなく、年度の途中からも編入できるようになっているのです。

これらの変更はむしろアジリティ(敏捷性)や、軌道修正を行う能力を証明することになり、履歴書上で不利になることはありません。決してペナルティにはなりません。

このような編入が可能な背景には、フランスの高等教育機関の多くが公立機関であることも関係しています。国内総生産の1.3%が高等教育費の予算に配分され、教職員への給与が国家負担となるため、総じて学費がほぼ掛からないところも大きいと言えるでしょう。

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従来の内閣には裕福な家庭で育ったエリート校出身の官僚が大半を占めていたことに対し、シアパ副大臣のような経歴者の入閣は、根強いコネ・学歴社会が残るフランスにおいて「努力は必ず報われる」ことの証でもあります。

その持ち前のエネルギッシュさで、これからもフランス社会に新風を吹き込んでくれることが期待されています。

参照サイト
在日フランス大使館「マルレーヌ・シアパ首相付 女男平等担当副大臣」
HUFFPOST「10 infos persos pour mieux connaître Marlène Schiappa, la Secrétaire d’Etat à l’égalité femmes-hommes」
Europe1「Qui est Marlène Schiappa, la secrétaire d’État chargée de l’égalité entre les femmes et les hommes ?」
Le Figaro Étudiant「Découvrez les diplômes des ministres du gouvernement Édouard Philippe」
Le Figaro Madame「Marlène Schiappa, la touche-à-tout de 34 ans du gouvernement」
Gala「Marlène Schiappa : sa fille dit qu’elle est agent secret」
Voici「Marlène Schiappa」
在日フランス大使館「フランスの高等教育制度(概要と近年の改革)」
Le Monde「Erreur d’orientation à la fac : il est encore temps de changer」
Yahoo!ニュース「フランスの女男平等担当副大臣が示す「女性の可能性」」
HUFFPOST「Le “plafond de mère”, qu’est-ce que c’est?」

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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