パパが知っておきたい、子育ての心理~赤ちゃん編~

パパが知っておきたい、子育ての心理~赤ちゃん編~

初めてのわが子の誕生。大喜びもつかの間、どうお世話していったらいいのか、関わっていったらいいのか……。そのコツがわからずに、ママにムッとされ、困っている方もいるかもしれません。

そこで今回はパパ向けの子育て心理学ということで、赤ちゃんとの関わり方の基本についてお伝えしていきます。

日経DUAL記事

赤ちゃんの一大プロジェクトとは?

赤ちゃんが、生まれてまず試みることって、何だと思いますか? それは、「自分が生きていく世の中を、少しでも予測可能な世界にしようと働きかけること」だと言われています。なぜかと言うと、予測可能な世界というのは、不安を減らしてくれるからです。

「○○したら、こうなる」という因果関係が分かっていることでの安心感、私たちはもうすっかり慣れ過ぎて、その有り難みが薄れてきてしまっていますが、先々を予測できることでもたらされる安心感というのは、なにより気持ちを安定させるのです。

いうなれば、「予測可能な世界プロジェクト」を生後1日目からスタートさせるわけです。その一大プロジェクトを成功させてあげること、これこそが親に求められている関わりとなります。

よって、親の関わり方でもっとも大切なことは、わが子の世界を予測しやすいものにしてあげることなのです。

赤ちゃんが泣く理由とその対処法

そのサポートをスムーズに進めていくには、まず赤ちゃんの「泣き」について理解する必要があります

赤ちゃんはよく泣きます。泣くのが仕事とも言われていますが、その理由は明らかで、気づいてもらうための手段だからです。

2歳の子なら、「パパ、○○やって」と意思を伝えられますし、1歳の子だって、まだおしゃべりは難しくても、パパのところに来て、身振り手振りでどうしてほしいかをなんとか伝えることはできます。

しかし0歳だと、まだ「パパ」「ママ」と呼べないですし、自分でパパやママのところに行くことができません。

だから泣いて気づいてもらおうとします。泣いたら自分の思いを届けることが可能かもと思うからです。ただ、「かも」だと不安定です。泣いたらいつも来てくれるのであれば、赤ちゃんにとっては安心ですが、来たり来なかったりだと、予測可能な世界ではありません。

これで分かるように、赤ちゃんが予測できる世界を作るためには、まず「泣いたら反応してあげること」、これがものすごく大事になります。

・泣いた⇒パパが来てくれた
・泣いた⇒パパが来てくれた
・泣いた⇒パパが来てくれた

これを繰り返すことで、赤ちゃんは自分が働きかけたことで(泣く)、状況を変えられた(パパを呼び寄せた)、自分には解決する力があるということで、安心感が高まっていきます。

泣いたらお世話、これを繰り返すとどうなる

しかしです。これでは「泣き」を手段にしてしまうから、どんどん泣くことが増えるのでは…と感じた方もいるでしょう。まさにその通りで、「赤ちゃんが泣いたからパパが行く」これだけを繰り返すと、赤ちゃんの泣く回数は増えるでしょう

なぜかというと、泣いているときしか、パパが来てくれないからです。なので、もし、泣いたからおむつを替えた、泣いたからミルクをあげた、でもそれ以外の時間は泣いてないからスマホやテレビを見ていた、というような対応をしてしまうと、お世話をしているつもりでも、結果的には泣く回数を増やしてしまうことになります。泣くことでしか、パパを呼べる手段がないからです。

「予測可能な世界を作ってあげる」というプロセスの中で、泣くことだけを赤ちゃんからの発信だと捉えてしまうと、残念ながら悪い方へと進みます。赤ちゃんの発信は泣くことだけではないからです。

泣く以外のことでもやりとりを増やすことがカギ

赤ちゃんは、生後1~2ヵ月で、クーイングと呼ばれる発声をするようになります。それは、「アーアー」といった単音節の発声で、ご機嫌なときに出ることが知られています。

そして、6か月くらいになると、喃語(なんご)と呼ばれる母音と子音を組み合わせた音を発するようになります。「パ=p+a」や「マ=m+a」など、パパやママと呼ぶための素になる音をいいます。

幼少時の親子の関わりでは、こういう発信にきちんと反応してあげることが非常に大事で、赤ちゃんから見れば、「泣くこと以外で相手の反応を引き出せる」という理解につながります。

赤ちゃんにとっての「予測可能な世界プロジェクト」の手段がまた増えるのですから、より不安感が減り、結果として、泣く回数が減ることにつながるのです。

子どもとどう関わったらいいか、迷ったら…

まずは半日、ママには外に出かけてもらって、ひとりで赤ちゃんと一緒に過ごしてみてください。お昼寝しているとき以外は、基本的にそばにいて、じっくりとわが子を観察してほしいのです。

おしゃべりもまだ、ハイハイもまだ、それでもパパと関わろう、関わろうとたくさんの発信をしてきていることに気づくはずです。

・「あーあー」と声を出したら、「あーあー」と返してあげる
・「パ」と言ってきたら、「パパだよ」と言ってあげる
・手を伸ばして来たら、触ってあげる
・足をバタバタさせたら、「バタバタ」と音で合わせてあげる
・笑ったら、笑顔で返してあげる

こんな風に、その1つ1つに何かしらのリアクションをしてあげることで、赤ちゃんの「予測可能な世界プロジェクト」は確実に満たされていきます。

「泣いたらミルク」「泣いたらオムツ」だけではないところに、わが子の心を満たすヒントがありますので、ぜひ意識して取り組んでみてください。これをしっかりやっておくことで、やがてアタッチメントという親子間の精神的な絆へとつながっていきます。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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