お手伝いで子どもの自立心を育む!ドイツの自立教育とは

子どものお手伝いは家族の絆を深めると同時に、自立を育む大切な機会といえます。「自立教育」を重視するドイツでは、家庭でのお手伝いにも子どもの責任感や自立心を育てる取り組みが見られます。ドイツのお手伝い事情や、子どもが楽しく自主的に家事にかかわるための工夫などを紹介します。
小さい頃から自主性を尊重
ドイツでは、子どもが幼い頃から「自分のことは自分でやる」ことが重視されています。
自立した大人を育成するための教育に注力しており、早い段階から自分で責任を持ち、自分で物事を考えて決めていく子どもの「自立教育」を推奨しているからです。
教育現場でもこの考え方が根付いており、幼稚園や学校では遊びや学習の内容を子ども自身で選ぶ機会が多いなど、自主性が育まれる環境が整えられています。
また、ドイツでは一般的に10歳前後になると成績や適性に応じて進路が分かれる学校制度が取り入れられていますが、多くの子どもはその時も自宅から無理なく通える学校を選びます。
親が送り迎えをするのではなく、公共交通機関や徒歩により1人で通うのが当たり前とされているからです。
習い事も電車やバス、徒歩が中心で、親の送迎は距離がかなり遠い場合や夜遅くなるなど、特別な場合に限られます。こういった環境で、子どもは小さいうちから自分で考え行動する力を蓄えていくのです。
年齢に応じて役割の割り当てやルーティン化
家庭においても、子どもは家族の一員としての責任感や自立心を身に付けるように育てられます。
「お手伝い」はその一部であり、年齢に応じた家事を早い段階から子どもに任せることで、自分の役割を自覚させ、家族に協力することの大切さを学ばせます。
たとえば、幼稚園児はテーブル拭きやおもちゃの片付け、小学生は食器の準備や洗い物、洗濯物たたみなど、高学年になると料理や掃除、買い物の手伝いというように、できることが徐々に広がっていきます。
親は子どもの成長に合わせて適切な役割を与え、「できることを少しずつ増やす」ことを大切にしています。
そうした経験を通じて子どもは家事の意義を理解し、自ら進んで手伝おうとする意欲が生まれます。親が一緒になって少しずつサポートすることで、子どもは家事を学ぶだけでなく親との絆も深めることができます。
家事は日常の一部なので、多くの家庭では「ゴミ出しはAちゃんの担当」「テーブル拭きの係はBちゃん」というように割り当て、ルーティン化しています。
こうした工夫により、「お願いする」のではなく、「一緒に暮らす仲間として協力し合う」という意識が自然に生まれます。
実際に、周りにいる小学生の子どもたちに聞いてみたところ、多くの子どもが「家でお手伝いを1つ以上している」と答えました。
キッチンでの料理の手伝いから、掃除、ペットの世話など多岐にわたっており、それぞれが家庭の中で自分の役割を持っていることがわかります。
なかには「毎週末、必ず自分の部屋と階段に掃除機をかける」という子もいるなど、家族の一員としての役割を積極的に担っている様子がうかがえました。
手伝う理由を伝え主体的行動を促す
ドイツの家庭では、子どもにお手伝いをさせる際に「なぜそれをするのか」という理由をしっかりと伝えます。
「部屋を片付けなさい!」と頭ごなしに命じるのではなく、
「片付けないとほかの遊びができなくなるよ」
「おもちゃがどこにあるかわからなくなっちゃうよ」
と説明することで、子どもは納得し主体的に行動するようになります。
また、
「これはママやパパを助けるためだけじゃなくて、あなたが1人でできることを増やすチャンスなのよ」
「一緒に家を快適にするために協力しようね」
といった前向きな声かけがよく使われます。
小さな子どもに対しては、家事を楽しいものとしてゲーム感覚で取り入れる家庭も。
例えば、タイマーをセットして「何分以内に片付けられるか挑戦しよう!」と競争心を刺激したり、掃除と歌やダンスを組み合わせたりする方法です。
こういった工夫により、子どもは家事を嫌がることなく、楽しく積極的に手伝うことができるようになります。
まとめ
子どもが家事を手伝った際にポジティブな声かけをすることも、ドイツの親が大切にしているポイントと言えます。
「ありがとう」と言うだけでなく、「とても丁寧に片付けられて気持ちいいね」や「掃除機を隅々までちゃんとかけてくれてとても助かったよ」といった具体的な言葉で褒めるのです。
このようなちょっとした工夫により、お手伝いを通じて子どもの自信や意欲をさらに引き出すことができるかもしれません。
執筆者 : 服部沙由梨

「褒める」のではなく「認める」ことで子どものやる気はUPする!
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
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