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心理学のプロがアドバイス! 転園、転校…「子連れ引っ越し」をうまく乗り越えるコツ

心理学のプロがアドバイス! 転園、転校…「子連れ引っ越し」をうまく乗り越えるコツ

私はいつもこのシンガファームでは、子育て中の親御さん向けに子どもの心を理解する一助となる心理学記事を寄稿していますが、私自身、1人の親であり、転勤を繰り返している転勤族でもあります。そこで今回は、私の実体験を加えた、引っ越しにまつわるアドバイスをまとめていこうと思います。

「引っ越し」としていますが、子どもにとっての環境の変化が主テーマですので、学年が変わったとき、新しい習い事を始めるときなど、その子にとっての新たな環境が加わるときにも応用できます。直近に引っ越しがない方も、ぜひ目を通してみてください。

日経DUAL記事

子連れの引っ越しでの心配ごととは?

私自身がこれまでに経験した引っ越しはかなりの数ですが、今回は子どもが生まれてからの引っ越しを中心にお話をしていこうと思います。ちなみにわが家は転勤族であるだけでなく、毎回「国が変わる」という国際転勤を繰り返しています。なので、わが子も産まれたのはフランスですが、その後にオランダ、そしてドイツ、さらにこの記事が上がる頃にはアメリカに引っ越しをしていることに! 中学生までに4つも国が変わり、本人にもかなり負担がかかっていると思いますが、そんなわが子を導くことで、私が引っ越しの度に学んでいることも多々あるので、その辺りも含めお伝えしていこうと思います。

引っ越しで何が大変か? 山積みの段ボール、方々への届け出、細かな事務手続き……、あまりに多くて書ききれませんが、これまでに子連れ引っ越しをしたことがある方ならきっと共感してくれるはず、何より気がかりなのは子どものことではないでしょうか。

もし泣いちゃったらどうしよう、もし学校が合わなかったらどうしよう……。たくさんの「もしも」が頭をかけめぐった経験をお持ちの方もいるかと思います。

引っ越しのストレスは去ると入るの2種類がある

一般的に、「引っ越し」というと、1回の環境の変化と捉えられがちですが、実際にやってみると、引っ越す前と引っ越した後の2段階でストレスがかかりやすいのが分かります。

・ もとの土地を去ることへのストレス
・ 新しい土地に入ることへのストレス

子どもがすでに保育園や幼稚園、小学校などに通っているのであれば、転出と転入という2回の刺激を経験することになります。私が経験として感じているのは、転出と転入それぞれに得手不得手があるということです。

簡単に言うと、

1. 去るのはスムーズだったけど、入るのは大変
2. 去るのもスムーズ、入るのもスムーズ
3. 去るのが大変だったけど、入るのはスムーズ
4. 去るのも大変、入るのも大変

こういうパターンがあるように感じています。

わが家の場合を当てはめてみると、

・ フランス→オランダ:去るのはスムーズだったけど、入るのは大変だった
・ オランダ→ドイツ:去るのが大変だったけど、入るのはスムーズだった

フランスからオランダへの引っ越しは年齢的にまだ幼かったため、フランスを去ること自体への執着はあまりなかったようでした。しかし、学校への順応はフランスからオランダが一番大変でした。言語が変わったためです。

一方で、オランダを去る時期には年齢的にも友人の輪がすでにできあがっており、去ることへの悲しみが大きくなっているのを感じました。しかしながらドイツに着くと、新しい学校が似たようなインターナショナルスクールだったこともあり、移行は想像以上にスムーズでした。

これで分かるのは、「去る」「入る」それぞれを経験する年齢も大きく影響しているということです。

そんな中、年齢に関係なく大事だなと感じていることが5つあります。今回はその5点を順にお伝えしていきます。

引っ越しが分かったら子どもにすべき5つのこと!

1.引っ越しが分かったら、早めに伝える

いざ引っ越しが決まったとき、いつ子どもにそのことを伝えるかとなると迷われる方が多いようです。

「子どもを動揺させたくない」
「ずっと泣かれちゃったらどうしよう」

など、気の重い日々が続くことが懸念されるからです。

しかし、先延ばしにするということは、子どもが心の準備をする期間が短くなるということでもあり、むしろ逆効果のような気がしています。それもあり、わが家は分かったらできるだけ早めに伝えるようにしてきました。

周りにいる転勤族ファミリーの様子を見ても、「伝えた瞬間は泣いたけれど、もう大丈夫」というご家庭が多く、時間の経過とともに、子どもたちが状況を飲み込んでいくのが分かります。早めに伝えることで、お別れ会を設定したり、遊ぶ機会を増やしたりとできる工夫が増えるので、メリットの方が多いように感じています。

2.親が感情をコントロールしない

2つめは私がとくに大事だと感じているポイントで、子どもが感じたありのままの気持ちを感じさせていくということです。ほとんどの子がそうだと思いますが、引っ越しのことを伝えて、なによりショックを受けるのは、友だちのことでしょう。「○○ちゃんと別れたくない」という悲しさが一番湧き起こりやすい感情です。こういうとき、親が子どもの気持ちを操作しようとしないことは非常に大事になります。

大人なら泣かないようなことでも、子どもは悲しくて耐えられなくなることもあるはずです。そういうときに、「ほらメソメソしないの」とか、「絶対にあっちに行っても楽しいから」とその子の気持ちに沿っていない言葉をかけると、子どもは涙さえ見せられない状況になってしまいかねません。

大事なのは、子どもの悲しみを抑えることではなく、悲しくなった時に寄り添ってあげることです。悲しいと感じるのは子ども自身の素直な感情であり、それは子ども自身がしっかりと味わうことで消化していきます。お友だちを前に、しくしく泣かれてしまうと見ていて本当に辛いですが、それをしっかり受け止め、支えることが親の仕事になります。

3.続けられる範囲で現状維持をする

とはいえ、前に目線を向けていくことは大事で、新しい土地のこと、新しい学校のことは、積極的に子どもとシェアしていくことをおすすめします。私が毎回心がけているのは、できる限り、今やっていることをそのまま継続できるように工夫することです。

わが家の場合で言えば、乗馬。うちの子がずっと続けている習い事です。

今はネットで簡単に調べられるので、たとえば、オランダからドイツへの引っ越しの際は、オランダにいる段階から、ドイツ語サイトに翻訳をかけて、なんとか乗馬学校を探し出しました。

好きでやっている習い事は、そこにその子の世界があることが多いので、できる限りブランクを作らずに見学、入会までこぎつけると望ましいと思います。

4.その子の気質を踏まえ、比較を避ける

親は、子どもが新しい環境にできるだけ早く慣れてほしいと願うものですが、工夫をしたにもかかわらず、順応するのに時間がかかるケースは実際に見られます。引っ越しや転校のような環境の変化にどう慣れていくかは、その子のもともとの性格が大きく関係しているからです。

心理学で分かっているのは、

タイプ1:新しい刺激への反応:初めての状況や物事に初めどう反応するか、近づくか、避けるか
タイプ2:順応のスピード:新しい環境や人間関係などにどれくらいスムーズに適応できるか

この2つは、生まれながらにして、ある程度決まっているということです。つまり、気質的に引っ越しに強いタイプの子、弱いタイプの子がいるわけです。

そんな状況で、親がうっかりやってしまいがちで、もっともやるべきではないこと、それは、「比較」です。

「下はもう友だちができたけど、お兄ちゃんの方が全然ダメ…」
「〇〇くんはあっという間に慣れたのに、うちはどうしてこんなにメソメソしてるの…」
「パパなんか、初めてのクラスだって、全然平気だったぞ」

これらがよく見られる比較です。

他の子や自分の子ども時代が大丈夫だったからといって、「だからあなただって大丈夫」ということにはならないことを十分に理解しておく必要があります。慣れを早くするために色々と工夫することはできても、言葉で急かして早く順応できるものではないからです。

慣れるまでの時間はその子それぞれで、その子なりのやり方で少しずつ進んでいるので、親が焦らないことは非常に大事なポイントになります。

5.モジモジタイプにはプラスαのケアをする

「うちの子は慣れるまでに時間がかかりそうだ」ということが予測されるなら、なおさら私が上に挙げた「早めに伝える」というのは大事になってくるでしょう。新しい土地の下見ができるのであれば、前もって訪れるのも有効で、そこで“何かちょっといいこと”を見つけられると、気持ちが少し前に向きやすくなります。

また新しい環境にモジモジしてしまう子は、少人数のグループの方がまだかろうじて入り込みやすいと感じるようです。少人数というより、まずはじめは1人、顔見知りの子を作るところからスタートするのがベストです。

そして、小学校の低学年くらいまでは、引っ越しの前後にママに抱っこを強く求めたりするなど、「前よりも幼くなった」という行動を取ることも増えるかもしれません。そういうときは、「なに甘えてるの」「もうお兄ちゃん(お姉ちゃん)でしょ」といった突き放した対応をせずに、園や学校でいつもの何倍もエネルギーを使ってきているんだと捉え、スキンシップを意識的に心がけていくのも大事になります。

ママの「新天地に居場所がない!」の対処法

今回は子どもの心ケアについてがメインでしたが、実は同様に気をつけたいのがママ自身の心のケアです。私が毎回の転勤で感じるのは、新しい土地と言えども、夫にはすでに顔見知りの同僚がいて、子どもにも歓迎してくれる学校がある。でも自分にはそういう受け皿が用意されていないということです。新天地での居場所確保という点で言えば、ママがもっともハードルが高いと言っていいと思います。

私がここ20年の度重なる転勤で大事だなと思っていることは、「自分の世界のようなものを自分の中に作っておく」ということです。どこに住もうが続けられる一貫した趣味や追求したい興味などがあると、新しい土地に行っても、自分の居場所を確保しやすいように感じています。たとえば、私の友人はヨガ。インドに住んだことをきっかけに習い始め、どっぷりはまり、今やヨガトレーナーになっています。そこまで追求しなくても、ヨガならお家にいても実践できますし、どこに住んでもヨガ教室を探すことはそう難しくはないですよね。これはあくまで一例ですが、住む場所に振り回されない趣味を持っておくと、毎回の転勤での動揺も緩和できますし、同じことに興味のある人とつながりやすくなると思います。

以上、これまでの度重なる引っ越しで感じたことをまとめてみました。果たして、今回のドイツからアメリカへの引っ越しはどうなるか……。心の中ではもちろん「去るのもスムーズ、入るのもスムーズ」を願っていますが、こればかりは、やってみないと分かりません。親ができる限り工夫をしたとしても、それを乗り越えていくのは本人なので、私たちはひたすら寄り添いつつ、サポートしていこうと思います。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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