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不登校は3週間で解消できるVS学校に行かなくても幸せ 「不登校のこれからを考える会」

不登校は3週間で解消できるVS学校に行かなくても幸せ 「不登校のこれからを考える会」

夏休み明けの新学期、不登校に悩む親御さんも多いと思います。そこで、Teacher Aideの櫃割仁平さん主催で開催されたオンラインイベント「不登校のこれからを考える会」の様子をお伝えしたいと思います。スピーカーは、親子オンラインスクールcocowith共同代表の神前洋紀さんと、「3週間で不登校児を再登校させる」を掲げる逸高等学院代表の小川涼太郎さんです。それぞれの不登校に対する考え方やアプローチはとても興味深いものでした。不登校に関わらず、子育て中の親御さんにはぜひ知って頂きたいと思います。

※尚、アーカイブ動画はこちらからもご覧になれます!
https://www.youtube.com/watch?v=rHQk0vwrjWY&t=3s


神前洋紀さん 親子オンラインスクールcocowith共同代表
教育プロデューサー。鹿児島大学教育学部卒。小学校非常勤講師。離島でフリースクールを立ち上げ、現在は親子オンラインスクールの共同代表。放課後児童クラブミルキー運営。書籍『密にならないクラスあそび120』(学陽書房)がある。Twitter(@rungorungo_


小川涼太郎さん XLASS㈱代表取締役社長。逸高等学院代表
徳島県出身。新卒で国内大手コンサル会社へ入社後、教育の道を目指しXLASS㈱を起業。不登校の子供たちと関わるボランティアを経て、不登校支援事業「逸高等学院」(https://bit.ly/3yUpYdW)を立ち上げる。オンラインかつ親御さんとのやり取りのみで、3週間で再登校を目指すプログラムを運営。2021年は109名のお子さんを再登校に導き、国内No.1の再登校実績に。Twitter(@ogawa_education)YouTube(http://onl.bz/L28V9D5)


櫃割仁平さん Teacher Aide代表
京都大学院卒。「教員をしている友人らが苦しむ姿を見てなんとかしたい」と立ち上げた教員を支える学生団体 Teacher Aideの代表。教育関係者らを対象にしたさまざまな学びの場を企画している。Twitter(@hitsuwari5th

日経DUAL記事

学校に行くかより自分がどう生きたいか

__神前さんの現在の活動と「不登校」に対する考え方を教えてください。

神前さん:僕は5年間教師をしていた際、「子どもたちの自己決定」を大事に、宿題を自学にしたり、テストの在り方を変えたりとさまざまな取り組みをしてきました。さらに、子どもたちが登校しやすい環境作りにも配慮した結果、クラスの不登校の子たちが再登校するようになりました。その後、「教育を幅広い視点で見てみたい」とフリースクールを立ち上げ、教育は学校だけではなく、家庭や地域全体で見ていく必要があるということを学びました。

僕が伝えたいこととしては、「不登校か不登校じゃないか、そんな2軸の世界だけで人の価値や幸せは決まらない」ということです。

「学校に行くか行かないかより、自分がどう生きたいのかが大切」。それを親子で探求しながら考えるのが、僕が運営している、親子オンラインスクールcocowith(https://cocowith-school.com)です。不登校の不安や悩み、居場所がないなどの悩みを持つ親子が参加してくれていますが、cocowithでは、教育は大人が教えるのではなく一緒に学ぶ「共育」を大事にしています。

不登校の原因は家庭と学校の2軸!「受け身型」の親子関係は要注意

__では、続いて小川さんの活動と不登校に対する考えを教えていただけますか。

「いじめ、学業不振、デジタル依存、発達障害、起立性調節障害など、どんな原因の子たちも再登校できるようになる」というのが私たちの考えです。実績としては、2021年は109名の子たちが、平均19.4日で再登校できるようになりました。

不登校の原因は学校にあると思われていますが、実際は家庭と学校の2軸にその原因があります。家庭の状況がよければ学校が多少ダメでも学校に行けますが、両方ダメな場合、学校に行けない不登校となってしまうのです。ですから、僕らがやるべきことは「家庭の状況を整えること」だと考えています。

今の時代の子育ては、子どもを尊重しようとするあまり甘やかしてしまう親御さんが多いです。僕たちが多くのご家庭を見てきた結果、子育てスタイルには4つのタイプがあります。

① 独裁的
厳格なルールを持ち、命令に従わせようとする→行儀はよいが自己肯定感が育ちにくい

② 受け身型
温かいけど厳しくない。制限を与えず甘やかす(今一番多い親子関係)→多くの問題行動が見られ、学校でもトラブルに巻き込まれやすい。不登校の9割がこれ。

③ 民主的
厳しく温かい。ルールを作るときは子どもと話し合う。→自立心が強く落ち込みにくい。社会性もあり自信がある。

④ 無関心型
子どもに最低限のものを与えるが、それ以外は無関心。→非行に走りやすい。ネグレクトなこともある。

今は③の民主的なタイプが一番いい親子関係だと言われています。では、なぜ②の受け身型がダメなのでしょうか。それは、甘やかすと親子関係の立場が逆転してしまうので、学校で何かトラブルがあっても親を頼ろうと思わなくなってしまうからです。

一方③の民主的タイプは、親子関係が正しい立場にあるので、学校でトラブルがあっても親子で乗り越えていけます。今の日本では誰も正しい子育てのやり方を教えてくれません。不登校に関わらず、「正しい親子関係を意識しましょう」というのが私たちの考えです。

最近特に増えている「起立性調節障害」。病院では診断がつきますが、それはただ眠いだけかもしれません。起立性調節障害でもうつ病で薬を飲んでいても、親子関係が改善すれば、かなりの確率で再登校できるようになっています。

デジタル好き放題は不登校の大きな要因に

__多くの親御さんが悩まれる「デジタルの付き合い方」についてはどうお考えでしょうか?

小川さん:不登校のお子さんの場合、スマホやゲームを心のよりどころだと思っている方は多いですが、デジタルし放題だと、当然昼夜逆転します。夜眠れず朝起きられなくなるのは当然です。そのまま続けると、子どもが親を舐めだし、親子関係が逆転してしまいます。
スマホやゲームは「ドーパミン強制発生装置」で、お酒、たばこ、ギャンブル、麻薬と同じこと。依存性が高く危険なのです。
人間は、ドーパミン(運動、親が褒める)、セロトニン(正しい生活リズム)、オキシトシン(家族とやペットとの時間)という3つの脳内ホルモンで幸せになると言われています。
スマホやゲーム漬けになると、セロトニンとオキシトシンが取れないため、脳内ホルモンが不幸せな状態になってしまうのです。

__昨今の日本では、なぜここまで不登校が増えているのでしょうか?

小川さん:日本では公立小学校でもカウンセラーが配置されるようになりましたが、それと比例して不登校児が増えているという現状があります。「見守りましょう」「様子を見ましょう」「そのうちエネルギーが溜まれば元気になりますよ」「好きにさせてあげて」これらは全て不登校を広めてしまうのです。
理由としては、数十年前に日本に広まった傾聴、共感、否定しないというアメリカの心理学ロジャーズ氏の考えが、今の日本の心理学の土台となっているからです。
ところが、最近のアメリカでは、この考えは科学的根拠がなく改善しないケースが多いとされ、今は認知行動療法など積極的な介入がメインになってきているのです。
これまでの不登校に対する考えを変える時期に来ているのではないかと思っています。

小児科で起立性調節障害の診断を受け相談したら、90%以上再登校できていないと言われたAさん。小児科は不登校の専門家ではないので仕方ありません。「2年位直らないよ」と言われたそうですが、僕らのプログラムを受けて3日で行けるようになりました。だから、不登校で悩んでいる親御さんも、改善できることがあるので、あきらめないでほしいですね。

不登校=悪ではない。今のニーズはさまざま

__不登校のお子さんがいる親御さんのニーズとはどんなものがあるのでしょうか?

神前さん:学校に行かせたい、学校以外での学びの場所(ホームスクーリングなど)を探したい、中間の場所を探したいなどさまざまなニーズがあります。ただ親が学校に行かせたいというだけではうまくいかないこともあるので、子どもの意向を大事にしながら、親子の対話で合意形成しながら進めていくよう意識しています。

小川さん:僕たちも「不登校=悪」とは思っていません。ただ、不登校で悩んでいる親御さんの思いに答えたいと思って、正しい親子関係に導いていきたいと考えています。
でも、社会に出てもずっと家で寝ていて、ゲームだけしていて給料はもらえないですからね。そこに合わせて学校はつくられていると思っています。

神前さん:いろんな子がいるし、僕も元学校の先生として、親子オンラインスクール代表の立場もあるから難しいところはあります。先生としては「学校面白いから来ようぜ」となるし、cocowithの立場だと「学校がすべてじゃないよ」となる。中には、お子さんの特性と学校が合わない子もいますから。いろんな居場所があっていいと僕は思っています。

小川さん:集団が苦手、人間関係が苦手、いろいろなタイプがありますよね。ただ、そこも社会基準で考えたときに、上司や苦手な人もうまくやらないといけないじゃないですか。学校はいろんなタイプの人と接することを学ぶ場所でもありますから。親子関係が整うと、集団が苦手だった子も乗り越えていけるようになる事例をたくさん見てきました。

神前さん:オンラインだと社会性が身につかないとかよく言われるけど、オンラインのコミュニケーションは誤解も生じやすいし、使いこなすにはコミュニケーションスキルが必要です。オンラインやホームスクーリングならではの学びもあります。
チャットでも社会性は身につくし、今はN中N校など通信制の高校を選ぶ子もいます。
リアルとオンラインとどちらが正解とかはないから面白いんですけどね。

ユーチューバーもプロゲーマーも応援の仕方次第で不登校にはならない

__不登校の定義も人それぞれですよね。教育の目標についてはどうお考えですか?x

神前さん:ユーチューバーとか好きなことで生きていける人って全人口の1%にも満たないという事実。声が大きいけど人口は少ない。でも、僕は成功するしない含めて勉強だと思っています。無理なら進路変更すればいい。やらない後悔よりやった後悔。チャレンジは大事だと。ただ、いつまでも先生がいるわけではないので、自己決定をしながら、困った時は相談できるとか情報や選択肢を作るのが教育者の役割だと思っています。ユーチューバーもプロゲーマーも、まずは1回小さなハードルでやってみたらいいんじゃないかと。

小川:僕はプロゲーマーだって学校に行った後の時間でやればいいのでは、という考え方。
本気でやっている子は親御さんも応援しているし、不登校にはなっていません。
親御さんたちがどうしていいかわからず悩んでいる方が僕らのところに相談されるケースが多いですね。僕たちは親御さんが変わったと思うようにしたいので、お子さんとは一切合わず、僕らの存在を子にバレないようにやっています。

__学校側に求めることはありますか?

神前さん:親御さんの中には「学校には行かなければいけない」「30日以上休んだら卒業できない」と思っている方が多いです。でも、「学校は行かなくても大丈夫です」と説明をすると、とても安心されます。家庭でも学校でも心理的安全性の確保は大きいと感じます。やはり、どんなことをするときも親御さんが納得するとしないでは大きいので、正しい情報を保護者に与えることはとても大事だと感じます。

小川さん:僕たちの再登校の定義は「朝から放課後まで2日連続以上の登校が続くこと」としていますが、再登校できたときに学校の先生が「無理して来ないでいいから帰りなさい」などと言われるケースが多いんです。せっかく頑張ったのにもったいないので、ちゃんと受け入れてあげるよう、事前に根回しすることも必要です。

__では最後に、読者の方にメッセージをお願いします

小川さん:子どもの再登校は単なるステップにすぎません。大事なのは人生を幸せに生きていくこと。再登校という言葉はまだ認知されていないと思いますが、不登校で困っている方の役に少しでも立てたら嬉しいです。気になった方は無料オンラインセミナーをチェックしてみてください。(https://iti-ko.com/3weeks/#seminar

神前さん:子育ては学校で教えてくれないし、教育に正解もないし、家庭がすべてではない。未だに僕もわからないことだらけです。僕も探り探りですが、出会った人は幸せになってほしいと思っています。社会が、一人ひとりがよくなっていけるサポートをしていきたいです。

著者プロフィール

SHINGA FARM(シンガファーム)編集部です。ママ・パパに役立つ子育て、教育に関する情報を発信していきます!
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