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「聞き流し」だけではNG? 英語を身につけるには 「語りかけ」が重要だった!

「聞き流し」だけではNG? 英語を身につけるには 「語りかけ」が重要だった!

お子さんの英語教育は、親にとって今も昔も関心の高いテーマの一つ。とくに英語で苦労した経験を持つお父様、お母様のなかには「始めるのは早ければ早い方がいい!」と考える方も少なくありません。そんなご家庭で、英語力をはぐくむ方法の一つとして支持されているのが「英語教材の聞き流し」。
たしかに、英語ネイティブではないご両親にとって、こうした教材は英語教育の頼もしい味方ですが、果たして効果はあるのでしょうか? 私自身が英語環境で子育てした経験もふまえて、考えてみたいと思います!

「聞き流し英語」が日本の親たちの人気を呼ぶ理由

音源を再生するだけで良く、手軽に始められるのが魅力の「聞き流し英語」。ネイティブではないご両親たちが、
「赤ちゃんが言葉を覚えるのと同じプロセスだから英語が身につく」
「英語の音に慣れることで英語を聞ける&話せるようになる」
といった宣伝文句に心惹かれる気持ちはよくわかりますが、こうした根拠は果たして本当なのでしょうか? 

生まれたばかりの赤ちゃんはすべての言葉を聞き分けられる!?

まず「赤ちゃんが言葉を覚えるのと同じプロセスで英語が身につく」という説について。そもそも人間が言葉を話し始めるには、生後1年前後の時間が必要です。
つまり生まれたばかりの赤ちゃんは、周囲のさまざまな音を注意深く聞きながら、言葉を話すための準備をします。その間の赤ちゃんは、まだ母語が定まらない状態ですから、世界中のあらゆる言語の母音や子音のパターンを聞き分けることができると言われています。
それを裏付ける研究結果が2003年、ワシントン大学の研究者パトリシア・クールのグループによって発表されています。

実験では、英語ネイティブのアメリカの赤ちゃん(生後9ヵ月)たちに4週間、計5時間にわたって中国人女性の中国語による語りかけを実施。すると赤ちゃんたちは台湾に住む中国語ネイティブの赤ちゃんたちとほぼ同レベルで中国語が聞き分けられるようになったというのです。

「やっぱり、赤ちゃんの頃から英語の音に慣れさせるべきなのね!」…と結論づけるのは、まだ早い! なぜなら、赤ちゃんが言葉を覚えるプロセスは「音」だけではありません。視覚や触覚、嗅覚などから入ってくるさまざまな情報刺激、そして絶えず語りかけ、リアクションしてくれる大人(親)の存在がセットだからです。

言葉を覚えるためには人間同士のコミュニケーションが必須

さて、じつは前出の研究には続きがあります。研究チームは、別のグループの赤ちゃんにも同様に中国語の語りかけ実験を「テレビ画面」を通じて行い、さらに別のグループには「クマのぬいぐるみの映像と音声だけのセッション」を行いました。その結果、どうなったと思いますか? なんとどちらのグループの赤ちゃんたちにも、中国語を聞き分ける学習効果は全く現れなかったのです!

このことから、赤ちゃんが言語を獲得するためには、音源の「聞き流し」ではなく、人間の「語りかけ」による双方向のコミュニケーションが必要だということがわかります。

そうなると、2つ目の「英語の音に慣れることで英語を聞ける&話せるようになる」という説にも疑問が生じます。
たしかに繰り返し聞き流していれば、英語の音に慣れたり、フレーズを暗記することはできるかもしれません。でも、それらの「音」が「言葉」であると認識できなければ、文字通り聞き流され、本当の意味で英語を「話す力」を養うことは難しいといえるでしょう。

毎日10時間の英語漬け生活でも、日常会話レベルになるには時間が必要!

人間同士のコミュニケーション=会話は、複雑で変化に富んでいます。決まりきったやり取りとは異なり、臨機応変な対応が求められるわけです。そう考えると、「聞き流し」はそれだけで英語が身につくというものではなく、英語に慣れ親しむ「きっかけづくり」程度に考えるのが妥当だといえます。

かく言う私自身、英語圏のセブ島で3年間子育てをしましたが、当時3歳だった息子は英語でコミュニケーションを取れるレベルになるまでに1年以上かかりました。
とくに塾通いや通信教育などはさせていなかったものの、当時の息子は園内公用語が英語の幼稚園に通い、ベビーシッターとのやりとりもすべて英語。もちろん、テレビ番組やディズニーなどの映画作品(DVD)も、すべて字幕なしの英語バージョンを鑑賞していました(日本語版は入手困難なので)。
つまり、ほぼ毎日10時間以上、英語を聞き、話す生活をしていたのです。それでもきちんとしたセンテンスで会話ができるようになるまでには、それだけの時間がかかるのです。こうした経験から言っても、音源教材を聞くだけで英語が話せるようになることは、まずあり得ないと思います。

英語に限らず、ラクして語学が身につくなどという魔法はありません。まずは根気よく子どもの年齢や発達に適した学習法を模索しながら、長い目で英語力をはぐくんでいく心構えが大切です。

著者プロフィール

ライター/親子留学アドバイザー。インタビューを中心に雑誌、Web、書籍等で活躍後、フィリピン・セブ島へ移住。2012〜2015年まで3年間、親子留学を経験。現在はライター業の傍ら、早期英語教育プログラムの開発・研究にも携わる。明治大学サービス創新研究所・客員研究員。

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