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子育て

A、Bタイプ別! 環境の変化にスムーズに馴染むためのコツ

A、Bタイプ別! 環境の変化にスムーズに馴染むためのコツ

学年が替わる4月は、子どもたちにとって、環境の変化を感じやすい時期。子どもたちの不安な思いに、親はどう接していったらいいのでしょうか? ここでは、子どもたちができるだけスムーズに新生活に馴染むためのコツを、心理学的にアドバイスしていきます。

日経DUAL記事

新しい環境が得意な子、苦手な子、何が違うの?

入園、入学、引越し、転校……。このような環境の変化は、子どもにとってストレスになりやすいと言われています。これら全てに共通するのは、まだ知らない世界に踏み出すこと。しかし、新しい世界を全ての子が同じように感じるわけではありません。「楽しい!」と感じる子もいれば、「怖い…」と感じる子もいます。

これまでの育児で、「馴染み方」に個人差があることは、きっと感じていることでしょう。あっという間にクラスに溶け込んでいってしまうA君もいれば、毎年4月は母子で大苦戦というB君もいます。いったい、何がどう違うのでしょうか?

新しいクラスメイトの中に入っていくとき、「うわぁ~、楽しそう!」と思えると、それはポジティブな高揚感になります。これはA君タイプです。一方、「どうしよう…、友達になってくれるかな」とプレッシャーに感じると、それはストレスになります。B君タイプです。同じ環境に置かれても、感じ方がまったく違うのですね。

もしわが子がB君タイプの場合、中には、「自分の育児がいけなかったのでは…」と感じてしまうママもいるかもしれませんが、ご自分を責めないでください。たしかに親からすれば、「A君タイプであってほしい」と願うばかりですが、実はこの「感じ方の違い」は、生まれつきの要素が強く影響しています。ママのせいではありません。

タイプ別アプローチが大切な理由

ここでいう「生まれつきの要素」というのは、たとえば、

●はじめての人や環境に出会ったときの反応
●環境の変化への順応性

などを指します。その子の持って生まれた性分のようなもので、お兄ちゃん、お姉ちゃんになっても、この傾向を引き継ぐ傾向が高いことがわかっています。

だからと言って、「B君タイプは見守るしかない」という意味ではありません。ここであえて、「生まれつき」と書いたのは、それを踏まえて「できること」を探さないと、マイナスに作用してしまうことがよくあるからです。

よく見られるのが、親がA君タイプで、お子さんがB君タイプの場合です。

「ママなんて、毎日幼稚園が楽しくて仕方なかったわよ」
「パパはあっという間に友だちを作ったよ。男の子なんだからがんばれ!」

このような声かけをしてしまうことがあります。もちろん、その子を勇気づけようとする親心からです。しかし残念なことに、B君には、

●教室はちっとも楽しい場には見えないし、
●あっという間に友達ができるようにも思えません。

その子の生まれ持った性格を踏まえた上で、「できること」を探しましょうというのは、こういう行き違いを防ぐためです。子どもを励ましたいあまりに、親がひたすら「がんばれがんばれ」と盛り上げても、それが嬉しい励ましになる子と、逆にプレッシャーに感じてしまう子がいるので、タイプ別にアプローチをしていくことが非常に大切なのです。

◆A君タイプへの接し方

基本的に、自分から溶け込んでいけるタイプの子は、親にとっては心配いらずなお子さんです。その子の「変化への対応力」や「「リーダーシップ」「環境への順応性」などは、今後も大いに伸ばしていきたい強みですので、「溶け込んで当たり前」とするのではなく、あえて意識的に目を向け、ほめ言葉へと変換させていきましょう。

「○○ちゃんはお友達を作るのが上手だね」
「どんな風にお友達を作っているの? ママにもコツを教えて」
こんな風に、その子が自分の強みを「すごいことなんだ」と感じられるように言語化してあげると、さらに自信をつけられます。

◆B君タイプへの接し方

引っ込み思案な子は、積極的に輪の中に入っていきたくても、それができないから困っています。パパ、ママは、その子の「見え方」を踏まえた対応をしていくことが非常に大事です。「今日は昨日よりも早く教室に入れたね」「自分からお友達に話かけられたのね、がんばったね」とできているところを励まし、勇気づけてあげましょう。逆に、「がんばりなさい」「そのくらいできるでしょ」「しっかりしなさい」などは、突き放した対応になってしまいます。その子が成功例を着実に重ねていっているという実感を得られるような声かけがポイントです。「ボクできている」「ワタシもできた」と感じられると、それが前に踏み出す勇気になっていきます。

ママとパパ、それぞれの強みを活かした働きかけがベスト!

いくら心配いらずのお子さんでも、環境の変化により、一時的な不安を感じることはよくあります。そこで最後に、どのタイプのお子さんにも共通するアドバイスを、ママ向け、パパ向けとしてお伝えしていきます。

◆ママ向けアドバイス

子どもたちは、ママを絶対的な安全基地として確保しつつ、さまざまな”冒険“をしながら成長していきます。その途中で、心になにかしらの不安を感じると、基地に戻ってきます。これまでに、お子さんが、急に抱っこを求めてきたり、手をつないできたり、いつも以上に「ママ、ママ」と甘えてきたことがあると思いますが、まさにそれが「基地帰還」の状態です。不安を解消するために、基地に戻って安全確認をするのです。

子どもが求めるママとの距離感は、その時々で変化しますので、お子さんが示す距離感をきちんと感じ取ってあげることは、とても大事です。3歳のときにできたことが、6歳になってできなくなると、「しっかりしなさい」と諭したくなりますが、そういうときにしっかりと距離を縮めて甘えさせてあげると、エネルギーを補充でき、早く冒険に出ることができます。とくにスキンシップは、とてもいい不安解消材になりますので、この時期、ぜひ意識的に取り入れてみてください。

ただ、心配し過ぎないことも大切です。スタートしてみたら、子どもの方が早く馴染んでしまって、ママの方が気持ちが追いつかないということもよくあります。お子さんが近づいてきたら甘えさせる、勇み足だったら背中を押してあげる、とお子さんの気持ちをしっかりくみとってあげましょう。

◆パパ向けアドバイス

子どもがママに求めるものが、癒しや安心感であるのに対し、パパにはワクワクするような“ポジティブな興奮”を求めることが多いようです。遊ぶのはパパの方が得意というご家庭も多いのではないでしょうか。そこで、環境の変化で子どもが揺れがちなこの時期は、いつも以上に、パパは思い切り子ども目線で遊んであげるのがベストです。そのときに気をつけたいのは、パパ主導にならないようにすることです。幼稚園や学校で思い通りにならないことで悩んでいる分、家では自分主導で遊べると、気持ちを相殺しやすくなります。また、子どもがやりたいこと、欲していることを上手にくみとって遊んであげることは、子どもの心にポジティブな影響を与えることも研究により分かっていますので、子ども主導の遊びを、ぜひ積極的に取り入れていきましょう。

ママとパパが自分の強みを上手く活かして連携を取ることで、バランスよく子どもの心を支えることができます。ママの癒し力、パパの遊び術をフルに活用してみてください。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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