脱マスクで風邪やインフルエンザが大流行中!  子どもの対面、オンライン受診の注意点を小児科医が解説

脱マスクで風邪やインフルエンザが大流行中!  子どもの対面、オンライン受診の注意点を小児科医が解説

季節外れのインフルエンザ、夏の定番のヘルパンギーナやのど風邪など、体調を崩す幼児が増えています。そこで、コロナが5類になって変わったことや、この夏~秋に気を付けたいこと、さらに小児科におけるオンライン診療や対面診療での注意点について、医療法人社団育心会(https://med-ikushinkai.com)理事長で小児科医の三井俊賢先生にお話を伺いました。

三井俊賢先生
三井俊賢先生
日本小児科学会認定 小児科専門医。慶應義塾大学医学部小児科、慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了。現在は、ミューザ川崎こどもクリニックなどを手掛ける医療法人社団育心会(https://med-ikushinkai.com)理事長を務める。

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コロナが5類になり子どもの風邪が大流行

__春から夏にかけてこどもの風邪が流行していますが、コロナ5類移行との影響はあるのでしょうか?
あると思います。5類になったことで、マスク感染対策がゆるくなって、ヘルパンギーナ、RSウィルスと、ありとあらゆる風邪やコロナ以外の感染症が流行り出しました。
コロナの3年間、ある意味クリーンな状態だった分、感染症にかかる機会が逆に減少し、子どもたちの免疫が弱くなっていたということも影響していると思います。とはいえ、子どもたちをいつまでも無菌状態で外に出さないのは現実的ではありませんし、子どもはいろいろな菌をもらって免疫が強くなって、成長とともに熱が出にくくなるものではあります。
だからといって気にしなくていいわけではありません。風邪などの軽く済む感染症は慣れさせてもいいですが、一方でコロナやはしかなど、乳幼児が重症化しやすい感染症から子どもたちを守るためには、家族でワクチンを接種するなど、感染対策は引き続きしっかり行う必要があります。

コロナ後遺症で短期記憶がなくなるというケースも

__今、家庭でできるコロナなどの感染症対策について改めて教えてください。
コロナが5類になったからといって、ウイルスがなくなったわけではありません。勝敗で言えば、人間はコロナに完敗です。人類の経済が回らないというデメリットも大きいため、各国で対応をゆるめていますが、コロナの脅威は変わりません。
ですから、これまで同様、うがいと手洗いで、マスクをつけられる子はマスクをつけ、しっかりとした休養と、睡眠、食事で免疫をつけることも大切です。子どものコロナは家族内からの感染が多いです。身近な大人がワクチンを打って家の中に菌を入れないようにしっかりと予防しましょう。

__子どもにもワクチンは必要ですか?
子どもは普通の風邪のような症状であることが多いですが、コロナは脳と心臓に影響が出るため、急激に悪化すると、発症から2日くらいで亡くなってしまうこともあります。
小児科学会が2023年の6月にアップデートしたデータによると、改めてすべての年齢の子にワクチンを打ったほうがいいというエビデンスに基づいた提言をしています(インフルエンザワクチンとの同時接種も2022年7月の厚生科学審議会で了承されています)。
また、実際に私も診察している中で、中学生などのお子さんのコロナ後遺症があるケースもあります。倦怠感のほかに、ブレインフォグと呼ばれる頭が白く靄がかかって短期記憶がなくなるもので、それまで成績がよかったのにコロナにかかってから暗記科目の成績が、がくっと落ちてしまう子も。現時点では完全に治す薬はなく、症状が半年以上続く子もいます。こういった感染によるデメリットも考慮しながら、とくに受験などを控えているご家庭は、各自で判断をして対策をしていく必要があると思います。

2023年のインフルエンザの流行は前倒しの兆し

__今年はインフルエンザが春先から夏に流行っていましたが、2023年の冬にかけてはどのように予測していますか? ワクチンはいつ頃打てばいいでしょうか?
2022年冬~2023年春のインフルエンザはまさに医療的には異常事態でした。従来は10月頃にインフルエンザワクチンを接種して4~5ヵ月のピークの時期にワクチンの効果があるのですが、今年は春から大流行したのです。ワクチンが切れていた時期に加え、今年はA香港型という高熱が出るタイプのインフルエンザが流行したため、重症化したり、ひきつけなどで入院するお子さんもいました。
専門家による予測によると、2023年冬~2024年は通常より2ヵ月くらい流行のピークが早いのではないかと言われています。例年インフルエンザは12月くらいから流行しますが、それが前倒しになるかもしれません。
インフルエンザワクチンはその年流行りそうな株で国がワクチンをつくるので、まだ出来上がっていません(通常10月頃から接種が始まります)。今年に限っては、夏の今も収まっていませんから、クリニックによってはリスクのある方や基礎疾患のある方に対しては1個前のシーズンのワクチンを打っているところもあります。その場合、新しいワクチンが秋以降に出たら、打っても大丈夫です。

__子どもへのインフルエンザワクチン接種回数は1回ではダメなのでしょうか?
また、接種回数は厚労省が決めており、日本では小児は原則2回となっています。諸外国で1回というのは、医療の流通状況にもよるためです。日本はワクチンが諸外国に比べて潤沢にあるので、2回としています。厚労省がまだ2回にしているということは、1回でいいというエビデンスに対する意見がわかれているということだと思いますから、2回をおすすめします。
新しい情報としては、日本では2025年にインフルエンザ生ワクチンの承認が取れることが決定しました。鼻から吸うタイプで注射でないワクチンなので、小さなお子さんにも手軽になると思います。

小児科のオンライン診療、メリット・デメリット

__続いて、昨今増えつつあるオンライン診療について、小児科医の目線でのメリット・デメリットを教えていただけますでしょうか?
まず、メリットとしては利便性の高さでしょう。具合悪い子を病院に連れて行くのは大変ですし、待合室で他の感染症をもらうリスクも減ります。最近はお薬を家に届けられるところもあるようなのですし、国もオンライン診療を進めている通り世の中のニーズも高いサービスと言えます。
ただし、デメリットとしては、小児科の感染症においては相性が良くないという点です。小さな子は、どこがどんな風に具合がわるいのか自分の言葉でうまく説明できません。
ですから、わたしたち小児科医は、通常、全身を視診、触診、聴診して診断を総合的に判断します。ですが、オンラインだとそれができないのです。慢性疾患のある場合や前回の続きで薬が欲しい場合などは問題ありませんが、発熱や感染症の場合、現状はまだ難しいですね。今後技術が進化して、オンラインでも拡大して喉の奥が見られたりするといいなと思います。

小児科の対面受診であると役立つ情報(熱の経過表、動画など)

__では、対面受診の際に、「これを教えてくれると診療が早く正確になる」ということはありますか?
前述したような視診、触診といった診療の前に、問診があります。これも診断にはとても大きな材料となります。小児科の場合、特に知りたい情報は「食欲の有無、おしっこが出ているか」です。これらがないときは入院の要件になります。
また、発熱時、熱の高さよりも熱の期間の方が重要だったりします。39℃が1日と37.5℃が5日間の場合、後者の方が他の合併症の疑いがあるためです。
ですから、発熱の経過表を持参してくださると、一目瞭然なのでとても助かりますね。
2つの山がある場合はインフルエンザの疑いが高いのです。
こうした問診と診察を合わせて、どのような病気か絞り込み、検査はその確認というイメージです。

__子どもの様子を動画に撮って先生に見せてもいいのでしょうか?
動画撮影は非常に助かりますね。とくに、熱性痙攣の場合は動画で様式や複雑性がわかりますし、咳がつらい場合は、咳の仕方で病気もわかります。「ケーンケーン」といった犬の鳴き声のような咳はクループ(のどはれ)、「コンコンコンコンヒー」という咳は百日咳など。また、小学校低学年くらいのお子さんで扁桃腺が大きくなって睡眠時に呼吸が一時的にとまる睡眠時無呼吸症候群かどうかを見分ける際も、睡眠時の動画の様子がとても役立ちます。

パパが子どもを受診させる際の注意点

__パパが病院に連れてくる際に気をつけることはありますか?
最近は共働き世帯も増え、ママだけでなくパパがお子さんを病院に連れてくるケースも増えてきましたが、その場合もお子さんの発熱の期間や体調、幼稚園や保育園でどんな感染症が流行っているかといった問診の情報をぜひお母様と共有して受診していただけると助かります。パパがお子さんを病院に連れてくる際のポイントは以下の通りです。ママにとっては当たり前でもわからないことが多いので、事前に共有しておきましょう!

(持ち物)
☑保険証・医療証・お薬手帳・母子手帳・診察券を持って
☑診察しやすいように上下別れているお洋服に
☑吐いてしまうこともあるので、着替えやおむつを持って

(受診に役立つ情報)
☑症状の経過
☑食欲の有無(普段と同じか)
☑夜間の様子(眠れているか、咳はひどくないか)
☑機嫌(1日中不機嫌かどうか)
☑体重(だいたいでOK)
☑薬の希望(シロップ、粉、座薬などのタイプ)
☑保湿剤などの有無
☑先生に聞いておきたいこと

まとめ

いかがでしたか。小児科を受診する際の注意点はとても参考になりました。また、いざというときに困らないためにも、小児科のかかりつけは2個くらいあるといいそうです。

著者プロフィール

SHINGA FARM(シンガファーム)編集部です。ママ・パパに役立つ子育て、教育に関する情報を発信していきます!
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