子どもの「目標達成力」を育てる! 一流アスリートも実践した方法とは?

大谷翔平選手が高校生の頃から実践し、着実に夢を実現させていると話題を集めた「オープンウィンドウ64」(原田メソッド)。大谷選手のように、叶えたい目標を立てそれに向かって日々努力し実現する力のことを「目標達成力」と言います。今回はそんな「原田メソッド」生みの親、原田隆史さんの新刊『中高生のための目標達成ノート』発売を記念して、子どもの「目標達成力」を育てるコツをお聞きしました。「わが子がすぐ諦めてしまう」とお悩みの親御さん、必見です!
奈良教育大学卒業後、公立中学校で20年間勤務。課題を抱える教育現場を次々と立て直し、「生活指導の神様」と呼ばれる。独自の育成手法「原田メソッド」により、勤務3校目で指導した陸上競技部では7年間で13回の日本一を誕生させる。大阪市教職員退職後、大学講師を経て起業。これまでに約600社、15万人以上のビジネスパーソンを指導し、オリンピック選手などアスリートのメンタルトレーニングにも携わる。現在は、原田教育研究所代表として、企業・学校・家庭の人材育成教育、講演・研修活動、不登校児童生徒支援活動、メディア出演、執筆活動と幅広い分野で活躍中。著書は30冊、世界25を超える国・地域で出版されている。新刊『中高生のための目標達成ノート』(ディスカヴァー・トゥエンティワン) が現在発売中!

目標を達成できない子どもの特徴
__教員として長年子どもたちを指導されてきた原田さんから見て、目標を達成できない子どもの特徴はありますか?
これは大人も子どもも同じですが、目標が本当に「自分のもの」になっていないと達成しづらいです。
何ごともやらされている状態ではモチベーションが高まらないので、頑張る前の段階の「目的設定」がとても重要となります。
目的とは「その目標を手に入れたい理由」です。これが自分から出てくると、努力が長続きします。ちなみに、受験に合格することは外発的動機づけなので、その先の「その学校でどんなことがしたいか」といった内発的動機づけを意識するのがポイントです。
・わが子の目標設定のヒントにもなる「子どもの好きなこと」に関しては、こちらの記事もご覧ください。
『子どもの「好きなこと」を見つける方法とは? 習い事のヒントにも!』
大谷翔平選手も実践していた「オープンウィンドウ64」の効果
__大谷選手も高校時代から実践し続けている原田メソッド「オープンウィンドウ64」ではどんな効果が得られるのでしょうか?
原田メソッドの「オープンウィンドウ64」は、目標達成のための具体的行動を考えるための自己管理シートです。
中央に最終目標を書き、その周りに、目標達成の核となる8つの要素を書き、その8つそれぞれについて8個ずつ(8×8で合計64個)の具体的行動を書き出すことで、目標に向けて「何をすべきか」が明確になるというもの。
「夢や目標を叶えるには、日々どんな行動や習慣が必要か?」を文字にして見える化することで、意識して行動できるようにする“設計図”のようなもので、ビジネスの世界はもちろん、スポーツ選手や受験生にもよく使われています。
以下の画像は、「オープンウィンドウ64」のワークシート(完成イメージ)です。
主な効果は以下の3つです。
・本番で実力が発揮できる
・同じ失敗をしなくなることで、上達が促進される
・清掃や奉仕、他者への理解を深めることで人間的に成長する
原田メソッドでは目先の目標達成だけではなく、自分に自信がつき、自己肯定感と自己効力感=自信が高まることで、結果的に人間力も高めることができるのです。
__何歳から取り組めますか?
私の講座の受講生ですと、最年少は3歳、最高齢は93歳です! 3歳の子はお母様と一緒に参加されていましたが、ご自身で取り組んでいた4歳の子もいます。
子どもだから、シニアだからできない、ということはないので、何歳からいつからでも始められるのが魅力だと思っています。
__なぜ今回、中高生向けの本を書かれようと思ったのでしょうか?
スマホもAIもない時代の学習は、授業を板書して暗記をしてテストで出来を問う「知識をためる学習」が中心でした。
ところが今は検索するとすぐに答えが出せる時代です。知識をためるのではなく「どう使うか」の段階にきています。世界中で教育は“非認知能力”へと舵を切りつつあり、学校教育の現場でも模索が続いています。
そんな今、AIに完全に再現できない最たる例が「自分の感情」なんです。それを書くというワーク方式で、子どもたちでも自分で感情を高められるようにトレーニングする仕組みにしたのが今回の1冊です。
__スマホやPCではなく、書くことにこだわっている理由はありますか?
脳科学者の茂木健一郎先生とそのテーマでお話ししたことがあるのですが、リンゴの皮むきをする際に皮むき器と包丁では前頭前野の活性化に差があるそうです。
つまり、人間は便利さを得た代わりに前頭前野(人間らしさ)が退化すると。日記をデジタルではなく手書きでつけるのもこういった考えにもとづいています。
人間の短期記憶はせいぜい1~2日ですから、できれば1日1回は、自分の文字でその日の振り返りを書くと、脳にとてもいい効果があります。
その点で言うと、幼少期の「絵日記」は目標達成力を高めるのにとてもおすすめの方法です。未来は映像と言葉で作られますから、絵と文字を使った絵日記はまさに目標達成力向上の醍醐味なのです。
・子どもの非認知能力の育て方に関しては、こちらの記事をご覧ください。
『わが子の非認知能力を育てる環境”3つのキーワード”【非認知能力シリーズ第1回】』
一流アスリートに学ぶ、幼児期の「目標達成力」の育て方
__幼児期の「目標達成力」を育むために、親が意識したいポイントを教えてください。
これまで関わってきた方たちの中で、後にお子さんがスポーツの分野で大活躍している親御さんたちの子育ての共通点をお伝えします。
制限をかけない
まずはなんでもいいから存分に夢を持たせて、安全な環境を確保しながらそれを応援しましょう。例えば、将来の夢がアメリカ大統領でもウルトラマンでもOK!「無理だろう」と親の常識でダメ出しをしないこと。子どもがセルフイメージを描きながら、成長に応じたその子の限界を突破して夢を更新していけばよいのです。
一緒に興味をもつ
子ども一人の想像力ではどうしても限界があります。わが子の興味関心のあることを一緒になって「次どうする? 何がしたい?」と広げていくことが理想です。ここで大事なのは強制ではなく、親も一緒に楽しく面白がれるユーモアです。
他者と比較しない!
勉強でも運動でも他の子と比較することは何の意味もありません。わが子の今の状態からどう成長させるかに注力しましょう。
固定観念を更新する
親のこれまでの人生で学んできたことを押しつけるととんでもないミスマッチがおきます。親がすべきことは親の夢を託すことではなく、子どもがオープンに夢を描ける状況を作る伴走者になること。そのためには、親が世の中のことや未来設計についてもっと勉強しながら、固定観念を更新する必要があります。
・子どものやる気を引き出す方法に関しては、こちらの記事もご覧ください。
『教育界の革命児、沼田昌弘先生&日野田直彦先生による「子どものやる気を引き出すコツ&学校変革の起こし方」』
目標達成できないお悩み別、親の対処法
__わが子が「すぐ諦めてしまう」と悩む親御さんのお悩みについて、それぞれ対処法を教えてください。
お悩みその① 習い事が長続きしない
なぜそれをやるか、の「目的」がわかっていない可能性が高いです。幼くても理由を説明し納得した上で、一緒に実現可能なゴール設定をしていきましょう。
お悩みその② 一度失敗すると頑張る意欲がなくなる
失敗した記憶にネガティブな感情がセットになって自信をなくしている可能性が高いです。一流スポーツ選手でも「なんでできないの?」と詰められると鬱のような状態になってしまうことがあります。
そうではなくて「もう一度やり直せるならどうする?」と投げかけ、ポジティブなイメージが持てるように向き合い、復活力(レジリエンス)を身につけましょう。
お悩みその③ ご褒美がないと頑張れない
ご褒美は外発的動機づけの1種。決して悪いことではありませんが、できれば「世の中のため」「おばあちゃんのため」といった内発的動機づけもセットにすることをおすすめします。
某企業のリーダーが、わが子がお手伝いで貯めたお小遣いの使い道を、「半分は自分に使いなさい、もう半分を寄付しにいこう」と提案したと聞いたことがあります。
ビジネスの世界でも、今は業績軸と幸せ軸が大切だという考えが主流です。「他者のために」がないと幸福度が上がらない時代なのです。
子育てにおいても、利他の精神をもって子どもに早い時期から社会性を体験させる親と、目先の目標や数字だけを見て接する親とでは、子どもの未来設定が大きく違ってくるはずです。
・子どもの失敗に対する親の正しい対応に関しては、こちらの記事もご覧ください。
『子どもの失敗への正しい親の対応とNG対応』
設定した目標は定期的に振り返ろう
__本の見どころと活用方法について教えてください。
最初から完璧にやろうと考えずに、まずは晩御飯を食べてからこの本を使って「今日の日誌を書こう」と一緒に1日を振り返ることを習慣にしてみてください。
気持ちがプラスになる会話ができるようになったら、素晴らしい家庭に近づいている証拠です。
また、大谷選手もそうですが、誰しもすぐに最終目標が達成するわけではなく、段階を追って成長していくものです。
そのためには、この本でも提唱しているように、1ヵ月に1度、定期的に設定した目標を振り返り、課題があれば修正することもお忘れなく。
__原田さんが今掲げている目標は何ですか?
これからの教育に必要なのは、「セルフコーチングできる子どもを育てること」だと考えています。
そのために、学習成果の1つの指標として学校教育にも原田メソッドを導入したいという夢があります。
実際に、この春から大学受験予備校が運営する通信制高校でのカリキュラムへの導入が始まっています。
近い将来、小中学校でも「国語・算数・原田メソッド」となれるように頑張ります。

「自分で決められない子ども」原因と3つの対処法
SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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