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子育て

事件に災害…子どもにニュース番組をどう見せるべき?

事件に災害…子どもにニュース番組をどう見せるべき?

子どもが見るテレビの番組、その内容や描写などで悩まれることもあると思います。一般的には、子ども向けに制作されたものを選び、大人向けの番組は極力見せない、こういうご家庭が多いのではないでしょうか。

その中で迷うのが、ニュースの存在。社会の出来事なのだから、できれば知っていてほしい、でも必要以上に怖がらせたくはないと悩むママも多いようです。

そこで、今回は、「子ども×ニュース」にフォーカスを当て、子どもたちの心理発達を踏まえたニュースの見せ方についてお伝えしていきます。

日経DUAL記事

ニュースの見せ方、年齢別の配慮すべき点

同じニュースを見ても、大人と子どもの理解は違うものです。言語が発達している大人は、アナウンサーが伝える“言葉”から、事件や事故の詳細を把握しますが、子どもたちにとっては、やはり“映像”がメイン。耳よりも目に飛び込んでくる内容でニュースをキャッチします。

そして、幼稚園の子と小学生以上の子でも、映像を見たときの感じ方や捉え方は違います。年代による特徴を見ていきましょう。

幼稚園時代

この時期の子の特徴の1つは、“想像力の豊かさ”。記憶力が発達してきたことで、頭の中で様々なイメージを膨らませることができるようになります。

ごっこ遊びが好きになったり、可愛らしい想像を膨らませたり、と現実にはない世界を頭の中で繰り広げることが大好きになるのがこの時期です。

想像力の発達は、その子のファンタジーの世界を大きく広げますが、逆に、ネガティブなことも、頭の中でエスカレートさせてしまうことがあります(例:お化けなど、実際にはいないものを「いる」と信じてしまい、怖がるようになるなど)。ときに、実際には起こりえないことや現実的にはありえないことも想像上で描いてしまったりもします。

このように、この時期の子は、あらゆることに想像が膨らみやすく、しかも、それが非現実的な展開になりやすいという点は、ニュース映像を見せる上で、とくに気をつけたいポイントです。

小学校入学以降

小学校に入ったあたりから、子どもたちはより現実的な考え方を習得していきます。それにともない、幼稚園の頃までは、お化けや鬼が怖いと言っていた子も、より現実的に“起こりうること”を怖がるようになる傾向があります

たとえば、火災、自然災害、泥棒や戦争など。このようなリアルな世界への恐怖心が高まるのです。その分、ニュースなどで取り上げられる“惨状”だけをまとめた特集は要注意です。

制作する側は、どうすれば視聴者の心をつかめるかという部分に力を入れている分、より鮮明で躍動感のある映像を用いることが多く、内容によっては、子どもがショックを受ける可能性も高いからです。

ニュースのタイプ別、気をつけたい2つのポイント

また、ニュースの内容によっても、子どもたちに与える影響は変わってきます。ここでは、配慮をしていきたいトピックとして、「虐待や誘拐事件」と「自然災害」に関するニュースについて見ていきましょう。

その1 虐待や誘拐事件

子どもたちが被害者となる児童虐待や誘拐事件などは、むやみに伝えると、子どもの恐怖心をあおってしまうことがあります。

たとえば、「下校途中に車に連れ込まれた」ですとか、「子どもにひどい体罰を与えている親がいる」などは、大人への不信感を高めてしまうだけでなく、恐怖心をあおることにもつながります。事件の内容を事細かに伝えるのは控えましょう

幸い、誘拐や虐待などの事件は、その現場のリアルな映像が流れることはなく、言葉で伝えられることが多いので、目に飛び込んでくるようなショックは避けられます。もし学校などで、ニュースについて伝え聞きしてきた場合は、「パパとママが守っているから大丈夫」と安心させてあげてください

その2 自然災害

虐待や誘拐事件とは違い、地震や豪雨、台風などの自然災害は、その場のショッキングな映像がそのまま流れることが多いので、子どもが自然の脅威を目の当たりにしてしまう傾向があります。

その映像だけが頭に残ってしまうと、恐怖心だけが高まってしまう結果になりますので、言葉で、地震とは何か、台風とは何か、それぞれ、私たちに何ができるか、これらを学んでいく機会を作り、ただただ怖い映像だけが心に残っているという状態を避けるようにしていきましょう

現実的には、そのような自然災害は避けようがないので、防災の手段を徐々に学んでいく必要があるのですが、どうしても映像の内容が強烈になりがちなのが自然災害に関するニュースの特徴です。映像先行の情報にならないように、配慮をしていくことがポイントになります。

子どもを怖がらせないために親が心がけたいこと

ある程度は世の中のことも知ってほしいという思いもありますが、必要以上に怖がらせないためには、親が隣にいられないのに、ニュースをつけっぱなしにしてしまうのは避けたいところです

大人は、ニュースを見るとき、アナウンサーの解説が気になりますが、子どもは、言葉以上に、圧倒的に映像にとらわれます。

ママがキッチンで忙しくしている時間に、なんとなくニュースをつけていても、ママには聞こえないし、子どもだけ映像を取り込んでいる状態ではいいことはありません。これでは、フォローもしにくいので、子ども番組に変えるか、テレビ自体を消してしまいましょう。

子どもは想像を膨らませるのが得意になっても、それで湧き出た恐怖心や不安感を自らなだめるスキルがまだ十分ではないですし、事件や災害のリアルな世界を正しく理解できるわけではありません。

もしニュースを見せるのならば、隣でフォローができる状態のときにし、見せっぱなしは避けるようにしましょう。

一緒にニュースを見るとこんなメリットも!

ここまでは、ニュースを見せる際の注意すべき点についてお伝えしてきましたが、最後に、そのメリットについても触れておきたいと思います。

子どもがニュースに触れることで、

・日本以外の国や文化などの存在を知ることができる
・日常の会話には出てこない言葉に触れることができる
・絵本やお話で出てくる出来事を現実世界の出来事と連動できる
・親が言葉で説明するのは難しいと感じていた概念を映像を見ながら補足できる
・考え方が現実的になってくる小学生時代のいい社会学習になる

のようなことも期待できます。

いずれも、ママやパパが、子どもが理解できる言葉で補ってあげることがポイントになります。怖がりそうなことはあえて触れない、言葉を加えてフォローする…、このような配慮をすることで、むだに恐怖心をあおることなく、社会の出来事に少しずつ触れていくことができるでしょう。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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