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子育て

五輪で金メダルに導いたメンタルコーチに聞く!「子どもをやる気にするコツ」

五輪で金メダルに導いたメンタルコーチに聞く!「子どもをやる気にするコツ」

これまで8,000人以上の子どもたちと向き合い、脳科学と心理学に基づいたトレーニングによって多くの子どもたちのメンタルを改善してきたメンタルコーチの飯山晄朗さん。勉強、運動、習い事などをどのようにしてやる気にさせるかの秘訣を伺いました。


飯山晄朗さん(人財教育家・メンタルコーチ)
メンタルコーチを務める高木菜那選手が平昌五輪女子スピードスケートで2つの金メダルを獲得、競泳の小堀勇氣選手がリオデジャネイロ五輪で銅メダル獲得、名門野球部を復活させ、24年ぶりの甲子園決勝へ導くなど、その実績は数えきれない。著書は『いまどきの子のやる気に火をつけるメンタルトレーニング』(秀和システム) 『勝者のゴールデンメンタル』『超メンタルアップ 10秒習慣』(共に大和書房)など、累計34万部を誇る。銀座コーチングスクール認定プロフェッショナルコーチ、 JADA( 日本能力開発分析) 協会認定SBT マスターコーチ。現在は金沢大学の非常勤講師も務めている。
Twitter:@Coach_Guts
Instagram:jiro.iiyama
ブログ:https://coach1.jp

 

日経DUAL記事

発する言葉次第で意識(メンタル)は変えられる!

__メンタルコーチを務めた選手が金メダル、部活動の全国大会で優勝、甲子園決勝進出などの実績がおありですが、トップアスリートも声がけ次第で結果が異なる理由とは?

声がけも大事ですが、選手本人が使う言葉の影響が大きいためです。いくら練習しても「自分は全然だめだ」と思った時点で負けてしまう。つまり、発する言葉次第で意識は変わってくるんです。なぜなら、脳は感情に支配されているから。何を感じているかで脳内から分泌されるホルモンも変わってしまうんです。選手が落ち込んでいるときこそ「ここは上手くいっていると思うよ」と視点を変えてアドバイスしています。

野球でもサッカーでもピンチのときに笑顔でいる選手を見たことはありませんか?

僕がメンタルコーチを務めた星稜高校が夏の県大会決勝で大逆転して甲子園を決めた勝因も、笑顔でリラックスする“必笑”でした。歯を食いしばってプレーしていては体も緊張して力が発揮できないんです。

メンタルコントロール=感情のコントロールなので、小学生でも十分できます。ただ、大人の発する言葉は良くも悪くも子どもに影響します。小さい頃にスポーツの全国大会で活躍した子も監督の厳しい指導がトラウマとなりその後に伸び悩んでしまうというケースもあります。親でもコーチでも関わる大人の影響はとても大きいということです。素直な子ほど注意してあげてほしいですね。

できない指摘より、できる!を見つけて伸ばす方が成功する

__著書の中に「大人と比べて経験の少ない子どもは、タイプ別のアプローチが効果的である」とありますが、詳しく教えてください。

本の中で紹介している4タイプは
火のラッシャー:目的に向かって猛進する情熱家タイプ
風のパートナー:自由奔放で社交的なタイプ
水のハーモニー:穏やかで調和を求めるタイプ
地のクレバー:石橋を叩いて渡る慎重で知的なタイプ
があります。ただ、どのタイプがいいというのはありません。4つのバランスがいい子が理想ですが、それぞれの特長を生かせばいいという考え方です。

「人に対して思いやりがある」「何でもやりたい」「人と会うのが好き」「一人でじっくり取り組むことが好き」というのも立派な特性ですよね。自分の子はどんな遊びに興味があるか、言わなくても自分からやることは何か。親としてその子の強い傾向を知っておくことは大切です。

とはいえ、子どもは人生経験が少ないので、引っ込み思案な子が学級委員長を経験するうちにリーダータイプに変わっていくなど、幼少期の経験次第でその傾向は変わることもあります。

ここで気を付けたいのが、親御さんが「男の子なのに引っ込み思案なんて!」「女の子なのに雑ね」などと型にはめる考え方はやめてほしいということです。

スポーツでも勉強でも、できないところを指摘するより、ある程度わりきっていい所を伸ばす方が、将来的にいい結果を生むと実感しています。

わが子が「飽きずにできること」をどうサポートするか

__オリンピックや甲子園に出るような一流アスリートは、幼少期をどのように過ごしてきたのでしょうか?

僕が知る限り、「親御さんがわが子の好きなことをやらせている」と感じますね。何かを無理やりやらせて続けると、どこかでつぶれてしまいますし、違う才能があった場合はもったいないですよね。

親としては、飽きずにできることをどうサポートするかに限ると思います。何かを習いたい理由が「友達と一緒だから」でもいいんです。「野球はまだ才能がないけれどその場にいたい」でもOK。「上手くなりたい」と思うのは次のステップです。「言わなくてもやる」ことは好きなことだと言えますし、「やってみたいこと」を親が観察してその環境に連れて行くのも手でしょう。

伸びる子の共通点は「幼少期の十分な安心感」と「考える力」

__これまで8,000人の子どもたちと接して、「この子は伸びる」と感じる子の特長とは?

その1:自分で考えられる子

言われたことだけやるのではなくて、なぜするかを考えられる子は伸びますね。この「考える力」は体を動かす、音楽、勉強と脳に刺激を与えることで伸びていきます。

スポーツの世界でも勉強が出来ないとダメと言われるのは、試合でも、展開を読む、相手を見るなど考える力が常に試されるからです。練習でも「ランニングがなぜ必要なのか」がわかってできる子や、自分で目標設定できる子は伸びます。

指導する上で意識しているのは、「こうしろ、ああしろ」の指示ではなく、「この状況ではどうしたらいいと思う?」「どうすればいいと思う?」と質問すること。質問すると脳は考えるからです。たとえそれが間違っていても、一度受け入れてやらせてみることです。

その2:幼少期に十分な安心感を得た子

幼少期に親の温もり(特にお母さん)を感じられず、安心感がない子は、大きくなってもどこか不安だらけ。何をやっても「どうせ自分は」「やりたくない」となりがちです。

一方、小さい時に十分な安心感が得られると、自己肯定感が高い子になります。ですから、3歳までは抱っこして思い切り甘えさせ、大好きなお母さんの温もりを感じさせてあげましょう。もちろん3歳以降っだって今からでも遅くありません。

子どもの前で指導者を批判するのは絶対にNG!

__習い事、塾、クラブ活動を選ぶ際に、親として意識すべきことはありますか?

選択肢のありなしなどの地域差もありますし、指導者との縁もありますからね……。ただ、親的に「残念な指導者」にあたった場合の親のアプローチ法として、一番やってはいけないのが指導者を子どもの前で批判すること。学校の先生も同様ですね。子どもと先生の信頼関係を失うのは一番避けたいところです。

たとえ親がその指導者が嫌いでも子どもが好きな場合もありますから、最終的には本人次第だと思います。とはいえ、習い事の場合やってみないとわからないので、たとえば3つのスポーツをやらせて、最後はどれか1つに子どもに決めさせればいいと思います。

「やりたくないとき」は休息→承認→対話

__子どもたちの「やる気がない」「自信がない」「集中力がない」原因とは?

先述した通り、愛情不足による自己肯定感の低さは要因の一つでしょう。親からの「できるよ」「素敵だよ」「ありがとう」といった声がけで、自分は必要な人間だと感じますし、やる気の向上につながります。

それでも「どうしてもやりたくない」と言ったとき、私の場合は無理にやらせず休ませます。その際に大事なのは、目を離さずにタイミングを見て話を聞き気持ちを受けとめ、どうしたいかを本人と話し合っていくこと。

たとえば野球で結果が出ないときに「いつも言ってるよね」ではなくて、「どう思う?」と聞いてから「僕が思っていることを言っていい?」とアドバイスしていきます。

これは中高生でも同じです。子どもは視野が狭く経験値も低いので、ちょっとしたことで悩んでしまうので、部屋にこもらせず、親の目が届く環境作りを意識しましょう。

子育てに必要なのは教えるではなく「待つ勇気!」

__習い事や勉強で親が言ってしまいがちなNGワードの変換例を教えてください!

その1 「何度言ったらわかるの?」→「どうしてそうなったと思う?」

子どもはその状況を悪いと思っていない場合があるので、まずは今の状況をどう思っているか聞いてから、「アドバイスしてもいい?」と最後に言いましょう。子育てに必要なのは教えるのではなく「待つ勇気」です!

その2「(ゲームやTV)いつまでやってるの?」→宿題をしたい気持ちにさせる!

親御さんはお仕事と趣味どっちが楽しいですか? 大人の仕事は子どもの勉強と同じです。

ですから、子どもに宿題をさせる際は親も一緒に本を読んだり料理をして「一緒に頑張ろう」と勉強の楽しさを伝えることが大切です。

また、スポーツの場合「甲子園で活躍したい」など願望がある子は練習も頑張れます。

勉強でも、お兄さんお姉さんの話を聞いて「勉強の先に楽しいことが待っている」と、ワクワクする未来やなりたい夢を見つけてあげることが大事です。

たとえ今の夢がYouTuberだったとしても「何言ってるの!」ではなく、「それはどんな人?」「どんなふうに人を喜ばせているの?」「そんな人になるためには何が必要?」とワクワクを応援してあげればいいのです。

オリンピックのTV観戦で「感動力」を養おう!

__TVでオリンピックを観戦する際、子どもとどんな風に見るのがいいでしょうか? やる気につなげる方法があれば教えてください。

今の子どもたちは「感動力」が失われている子が多いです。言い換えると無気力で感情が動いておらず、自己肯定感が低い子たちです。ですから、ぜひこの機会にオリンピックやパラリンピックをTVで観戦して、素直な感動を味わってほしいですね。

「すごいな」「かっこいいな」とか、喜んでる姿、輝いている姿、憧れる気持ち。スポーツには人を感動させる力があります。親御さんはルールを教えようなどとあまり難しく考えずに、まずはお子さんと一緒になって感動してほしいですね。

__最後に、子育てに奮闘する親御さんにメッセージをお願いします!

少し言いにくい話ではありますが、スポーツで伸び悩んでいたり問題のある子は親御さんと話すと「なるほど……」と思うことがあります。一番大事なのは「夫婦仲の良さ!」。夫婦仲がいいと子どもが悪くなることはまずありません。そのくらい、親が子どもに与える影響は大きいんです。大好きな2人だから仲良くいてほしいんです。お母さんが笑顔で楽しそうにして夫婦仲良くしていれば大丈夫。そして、お母さんを笑顔にするのは、お父さんの役割でもあるということもお忘れなく!

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著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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