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15万部突破!話題の『東大読書』著者 現役東大生、西岡壱誠さんにインタビュー

15万部突破!話題の『東大読書』著者 現役東大生、西岡壱誠さんにインタビュー

元偏差値35だった西岡さんは、2浪の末に見事東大合格を果たした。そんな“リアル、ドラゴン桜”の彼がたどりついたのが、「読む力」と「地頭力」を身につける読書法。実はこれ、東大生なら当たり前に実践している読み方なんだそう。今回は、大ヒット中の著書『東大読書』では語られていない、彼の幼少期のことや東大に入って気づいたこと、さらにこれからの子どもたちについてお話を伺いました。子どもの気持ちも分かる現役大学生ならではの「受験生が実は親にしてほしくないこと」も必見です。

プロフィール
西岡壱誠
東大輩出者ゼロの無名校のビリ(元偏差値35)だったが、2浪し、崖っぷちの状況で「点の取り方」を誰よりも研究した結果、東大模試第4位になり、東大に合格した「点の取り方の伝道者」。現在は家庭教師として教え子に「点の取り方」をレクチャーする傍ら、東大“試験対策委員会委員長”として東大の学内試験の対策を日夜考えている。また、2018年1月連載スタートの『ドラゴン桜2』(講談社)に情報提供を行う「ドラゴン桜2東大生プロジェクト」のプロジェクトリーダーを務め、受験や学習全般に関して様々な調査・情報提供を行っている。著書に『現役東大生が教える「ゲーム式」暗記術』(ダイヤモンド社)がある。
日経DUAL記事

勉強嫌いでゲーム好きだった幼少期のこと

僕は幼稚園から一貫校に通っていましたが、小学校から勉強が好きではなく、成績はずっとビリの方。「勉強しなさい!」と口うるさい母親と、単身赴任ながらも教育熱心な父の3人家族です。僕はその後、勉強がどんどん嫌いになり、当時流行っていたポケモンゲームに夢中な小学生時代を過ごしました。サッカーを習っていましたが、特に上手くもなく普通。ただ、書くことが好きで一人で黙々と小説を書いていました。「好きならやらせておけ」と言ってくれた父のおかげで、今の物書きの仕事につながっているのかもしれません。その点は父親に感謝しています。

高校の先生の一言で東大受験を決意!

中学生になると、ますます勉強をしなくなり、母親も何も言わなくなりました。「諦めたな」と僕は感じました。その後、なんとか高校に進学するも成績はずっとビリ。

当時を振り返ると、僕は自己肯定感がとても低く、「どうせ俺なんて何もできない」と思っていました。そんな僕に変化が訪れたのは、高校の先生です。その先生に「お前は“なれません”という目に見えない線で囲まれている状態だ」と指摘されて目が覚めたんです。

「このままじゃだめだ、超えるのは自分だ」と思うようになりました。そして、先生に「夢がないなら、東大がいい」とすすめられました。「東大は1、2年生で教養を学び、3年生から専門分野に分かれるから、入学してから夢が見つけられるいい学校なんだ」と。

そんなきっかけで、僕は東大を目指すことになりました。

東大に入ってみて気づいたこと

2浪の末に僕は東大に合格しましたが、東大に入ってみて驚いたのは、「東大生は授業の後、先生への質問で行列を作る」ということ。「東大生ってすごく頭が良いんだから、授業の内容も余裕でわかるんじゃないの?」と僕は思っていたんです。

でもそれは間違いで、東大生は90分間の授業を、何かしらの疑問を持ちながら聞いているんです。読書も映画も音楽もそう。日常を能動的に過ごしているから、何においても感想を言いたがるんです。合コンでも「源氏物語の誰が好きか」で白熱議論するくらいですから(笑)!

あと、東大生は(受験する人たちも)はノートの板書の仕方が普通じゃないんです。

「1847年に●●がありました」と黒板に書かれていたら、その100年前は、100年後は、世界ではこんなことがあったと、後から自分でメモを加えていく。東大生は関連付けが上手いんです。覚えなくてはいけないことをただ暗記するのではなく、関連づけているうちに頭に入れてしまうんですね。

東大の入試では「これらのことを120字で要約しなさい」といった問題が必ず出題されますが、こうした関連付けの訓練をしていないと、答えられないんです。

家庭教師をしていて見える“今どき親子”の共通点

僕は最近、高校生の家庭教師やカウンセリングも行っているのですが、気になるのが、「特に行動に問題がなく勉強もそれなりにしているけれど、どこか受け身でぼんやりしている子」が多いということ。何かをしたいと言うエネルギーもなく、上昇志向が薄くて何を考えているのかわからないお子さんです。これはもしかしたら、親御さんが過干渉なのが原因なのではと思います。自分の意見を言う前に、親がそれを代弁してしまうから、どうしても受け身になってしまうのではないか、と。ある女子高生のカウンセリングに親と一緒に来た子は、僕の質問に母親が答え、その子はずっと頷いていただけでした。

流されるのが得意な今の子たちは、何かに反発するエネルギーすらないのかもしれない、と感じました。

受験生にこそ日常を守ってあげてほしい!

他にも、受験生たちと話をしていると、「お母さんの、何でもしてくれる感じが重い」という声をよく聞きます。もちろん、親御さんは「頑張って!」と声をかけたり、勉強の状況を聞いたり、子どものためを思って部屋をキレイにしてくれたり、美味しいご飯を作ってくれているのですが、子どもの本音は、「放っておいてほしい」なんです。試験だからといって過度に期待されたり手厚くされても、重荷になってしまう。過剰な気遣いで「非日常」を作るのではなく、掃除だってお手伝いだってさせるくらいの“普通の家族の日常”を求めているんです。

僕の父親も、過去のテストや成績を全部ファイリングしていた“過干渉タイプ”でした。東大の合格発表前夜も大げんかしたほどです。でも父から「こんなにがんばってきて、落ちたら可哀想だ」と言われたときに、「父は応援してくれていたんだ」と初めて分かったんです。

「受験は家族みんなが幸せになるためにやっていることだ」と僕に言った先生がいます。受験勉強はとても孤独です。だけど、「頑張っていて偉いね。受かったら嬉しいな」という親からの言葉は力になります。過干渉になりすぎず、普段通り過ごしながら、思っている気持ちをストレートに伝えてみてください。

子どもを本好きにするためには?

最近は、親御さんを前に講演をさせていただく機会も増えてきたのですが、「どうしたら本好きな子になれますか?」と聞かれることがあります。僕は「子どもと対等になってください」と言っています。

本を読ませたいなら、自分の好きな本(漫画でもいい)を紹介して感想を言い合ってください。「お母さん小学生のときに、この本大好きだったんだ。読んでみて!」とおすすめされるのと「これ、読みなさい!」と渡されるのと、どっちが読みたくなりますか?

先ほども言いましたが、東大生の感想言い合い好きの原点はこういうところにあると思うんです。逆にお子さんの好きな本を聞いて読んでみて、感想を言い合うのもいいでしょう。

それは本が好きになることはもちろん、大事な親子のコミュニケーションの時間にもなるはずです。

「幼児期をこう過ごしてほしい!」親御さんへメッセージ!

子どもを否定するのではなく、認めてあげてください。そして、小学生でも中学生でも、勉強を頑張る目的や夢をもつことはとても大事です。何も「宇宙飛行士になる」などという将来の大きな夢じゃなくてもいいんです。小さい頃から、身近なことでいいので、熱意をもって好きなことに取り組める何かを見つけ、全力で頑張る楽しさを知ってほしいと思います。その積み重ねが自己肯定感を生み、受験を乗り越え、これからの社会で生きる力になるのだと思っています。

僕は、これまでの経験を生かして、東大の入り口をもっと広げて、東大生をもっとアクティブにしたい。そうすることで、きっと将来の日本が今よりも良くなるんじゃないか。そんなお手伝いをできたらと思っています。

西岡さんの著書『東大読書』(東洋経済)

新刊『東大生の本棚』(日本能率協会マネジメントセンター)も必見です!

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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