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子どもの怖がり・年齢と原因別対処法~怖がりシリーズ第3弾〜

子どもの怖がり・年齢と原因別対処法~怖がりシリーズ第3弾〜

ここ2回に渡ってお伝えしてきた「怖がりシリーズ」。今回は、そのまとめとして、年齢別の気をつけたいことやすっかり怖がりになってしまった後にできる働きかけなどについてお伝えしていきます。

日経DUAL記事

年齢別の傾向、もっとも怖がりになりやすいのは何歳くらい?

できれば怖がりにしたくない、これはどのママでも思うこと。でも、もうすでに怖がりの気配が出てきてしまっている場合は、それをせめて悪化させたくないと思うでしょう。そして、お子さんが、一般の「怖がりバロメータ」の中の、どの段階にいるのかも気になっていると思います。そこで、まずはこれまでの話を総合し、年齢別の特徴を見ていきたいと思います。

「怖がり」に見られる年齢別の特徴


怖がり_表01

この表を見ていただくと分かりますが、0~3歳くらいというのは、基本的にはもっとも怖がりになりにくい時期と言えます。もちろん一時的にビクビクしたりすることはあっても、のちのちまで引きずるほどの怖がりにはなりにくい時期です。

しかし、その後、幼稚園に上がるころには、心理面も発達し、頭の中にイメージを思い浮かべることもできるようになるため、インパクトとしてより濃く焼きつきやすくなります。「怖がり」の子が急に増えるのが、この時期と言えます。

そして、小学校に上がると、認知的にも大きく発達してくることで、頭の中での想像も膨らみやすく、恐怖への信念をさらに深めていく子がいます。

「怖がり」になるまでの推移、よくあるパターン

この年齢的な傾向を、一人の子の成長に乗せて考えるとこうなります。

怖がり_表02

さらには、小学校高学年、中学生で思春期を迎え、親に反抗するような時期になっても、怖がりだけは、そのまま残ることもあります。その場合、親には悪態をついたり、反抗したりするのに、暗い部屋には行けないというようなことが起こりえます。この強弱が混在する姿は、親からすると矛盾しているように思えますが、強気でいたい思春期にもかかわらず、恐怖心だけは取り除けないということは、それだけその子にとって深刻な悩みであるとも言えるのです。

ここに挙げた年齢はあくまで目安です。また、これはひどくなったケースということで、全ての子がこう進んでしまうわけではありません。その子の性格や気質により、同じ刺激を受けても、引きずりやすい子とそうでない子がいます。年齢とともに緩和するケースがほとんどなので、過度に心配する必要はありませんが、中には、上の例のように、恐怖心が長く居座ってしまうお子さんもいます。そういう場合は、何もなかったところに、ある1つのきっかけで恐怖が発生し、それが深く広く浸透していくという経過を辿るのが一般的です。

「もしかして」と気配を感じたら早めの対策を

「恐怖心」は学習によるものということもあり、年齢が大きなカギになっています。年齢が上がれば上がるほど、深刻になるケースが見られるのは、頭でイメージできる力がつくことで想像が膨らみやすいことも一因です。恐怖症というのは、いったん「怖い」となると、強さも範囲も増す傾向があります。似たようなものがダメ、しかもどんどん怖くなる……。こうなってしまうと、対処するのがますます難しくなってしまいます。

年齢が小さければ小さいほど、まだ対処がしやすいので、早い段階で気づいて動き出すのが、まず大事なポイントになります。

怖がりのきっかけになった「刺激」がはっきりと分かっている場合は、それを遠ざけましょう。たとえば、ある絵本、あるテレビ番組、ある写真など。「もうあの絵本はお家にないから大丈夫だよ」と安心させ、物理的に目に触れさせないことで、自然とインパクトが薄れやすくなります(多くの子はこの段階で緩和していきます)。

もう一段進み、すでに絵本やテレビなどをきっかけに、暗闇を怖がるようになってきたなどの反応が出ている場合は、無理やり行かせたりすると、ひどくなることが多いので、小さな明かりをつける、ドアを開けて寝る、など、怖さを和らげる工夫をしていきます。

さらにひどいケースには気長につきあう覚悟を

すでに、「超怖がり」までいってしまっている場合は、親も腰を据えて見守っていく必要があります。実を言うと、私自身がまさにこの体験者でして、私の克服までの道のりが、一助となると思われますので、ここで引用したいと思います。

私の場合は、小学校1年生のときに、近所の図書室で、何気なく興味本位で開いた「幽霊の本」がきっかけでした。著者が見たという幽霊のスケッチがページ一面に描かれていたのですが、そのインパクトが強すぎて、一気に「お化け恐怖」になり、なんとそれを30歳過ぎるまで引きずってしまったのです!

25年も引きずった「お化け恐怖」が、何をきっかけに解消されたのか……。それは、あるセラピスト向けの講座に参加したことがきっかけでした。そのような講座では、参加者がセラピスト役とクライアント役を交互に行うのですが、私がクライアント役のときの「悩み」として、「こんなに大人になってもお化けが怖いんです」ということを相談しました(バカげた悩みと思うかもしれませんが、本人は至って真剣でした)。

すると、セラピスト役の彼女が、私に向かって、「そのときに見たお化けのデッサンを書いて」と言ったのです。心の中で封印していた画像をわざわざ掘り起こすのは抵抗感がありましたが、昼間の明るい日差しの中ということもあり、小1のときの記憶をたどり、紙に書き出しました。すると、彼女は、今度は色ペンを持ってきて、「では、この顔におもしろおかしくいたずら書きをして」と言いました。私は、言われるがまま、その“幽霊”のまつ毛を長くしたり、目をクリクリにしたり、口元をスマイルにしたり……。そこにはもう元の幽霊の面影はありませんでした。そして同時に、私の中からも恐怖心がなくなっていたのです!

恐怖心というのは学習です。その恐怖を上書きする学習をすることが、恐怖症克服のポイントというわけです。私は、実際にペンで“上書き”をしたことが功を奏したようでした。この上書き作業で大事なことは、親が上書きをお仕着せしないことです。たとえば、「怖い」という子に、「大丈夫、怖くなんかないよ」と言っても、上書きはされません。その子自身が、「暗くても意外と大丈夫だ」という経験を持つことで、上書きはなされていきます。無理強いすると、かえって自信をなくさせてしまうので、注意が必要です。親も大変ですが、お子さん自身が一番苦しんでいます。ですので、気長に取り組む覚悟で寄り添ってあげてほしいと思います。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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