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「不安が強い子」にはどう対応すべき? 3つの要因と親の対処法

「不安が強い子」にはどう対応すべき? 3つの要因と親の対処法

もうすぐ新たな学年のスタート。この時期は、新一年生のみならず、多くの子どもたちが不安を抱えやすいものです。そこで今回は、不安になる要因や不安になりやすい子に対して親ができることについてまとめてみました。4月のみならず、子どもが不安を抱えたときのトリセツとしてご参照ください。

日経DUAL記事

子どもが不安になりやすい3つの要因

要因① 気質的にもともと不安が強い子がいる

実際に子どもを育てていると、赤ちゃんの頃から「うちの子は慎重なタイプ」とか「怖いもの知らずで目が離せない」など、個人差があると感じることは多いものです。とくにお子さんが2人以上いらっしゃる方は、同じように育てているつもりでも同じようには育たないことは実感済みだと思います。このような違いが、不安や恐怖の個人差としても存在します。

これまでのカウンセリングの例を見ても、新しい人に会ったときや新しい場所に行ったときにびくびくしたりする「人見知り」「場所見知り」のタイプのお子さんは、物事への姿勢が慎重で、自分がいっぱいいっぱいになってしまうと、不安な様子を示すことが多いようです。

これまでの研究でも、見慣れないことに近づくか、回避するかの傾向は、大きくなってもそのまま継続しやすい気質の一面であることが見出されています。よって、「うちの子はもともと不安が強い」という場合、その気質と上手に付き合っていくというスタンスが望ましいと言えます。

だからと言って、「なにもできないのか」と言うと、そんなことはありません。人間は新たに学習することで既存のものをカバーする力も持っています。

恐怖症などの療法として知られる「暴露療法」という心理療法がありますが、これは段階的に目標行動に近づいていくことで、結果的に苦手な行動を克服していきます。ここで利用しているのは“慣れの力”です。新しい場面で不安になったりドキドキしてしまう子は、数をこなすとそのハードルが段々低く感じられることが多いものです。ですので、たとえば、「お遊戯会のときはおうちでたくさん練習する」「入学のときは事前に学校の施設自体になじみを作っておいたり、お友だちの輪を前もって広げておく」。このように慣れの力でハードルを低めるという方法がおすすめです。

いずれにしても、気質的に不安になりやすい子は、親が無理に「このくらいならできる」と負荷をかけすぎると委縮してしまいます。この子のテンプレートなんだと理解して、お子さんでもなんとかできる方法で進んで行くことが大事になります。後半でお伝えしている「親がとるべき4つの行動」も併せて意識していくようにしてみてください。

要因② 1回の大きな失敗などのショックがトラウマになっている

気質的な要因は持って生まれたものですが、日々の環境で不安になりやすくなる子もいます。まず1つめは過去の経験から恐怖を感じやすくなっている場合です。たとえば、友だちに仲間外れにされたとか、ものすごい勢いで怒鳴られたとか、何かで大きな失敗をしてしまったとか。そのときのショックが心に残り、その刺激を前にすると不安や恐怖が生まれてしまうのです。

このパターンは、入園、入学のようなイベントよりも、もっと1回の刺激が強いことで起こりがちです。自然災害はもちろんのこと、お化け屋敷、ホラー映画などでも起こり得ます。あとは、園でのセリフのあるお遊戯会や習い事の発表会など、一度怖い思いをしたことで、その後過剰に不安がってしまうのもここに当たります。

要因③ 親のネガティブ思考や口癖が子どもを不安にさせてしまう

環境要因としてもう1つ。日ごろのコミュニケーションが不安レベルに影響をするパターンです。いくつかパターンがありますが、まず1つは、子どもに対し

「学校に毎日行かないと勉強についていけなくなるよ」
「手を洗わないとコロナに罹っちゃうよ」
のように、

「○○しないと痛い目に遭うよ」

と言ってしまうケースです。もちろんそこには、親の「こうあってほしい」という思いがあるのですが、子どもに最悪のシナリオを刷り込んでしまうことになるため、悪い展開を思い起こすクセがつきやすくなります。

また子どもに直接言わなくとも影響があるものもあります。親が自分に起こったことに対し、「なんか今回ダメな気がする」「悪い予感って当たるのよね」とつぶやいているのを、もしお子さんが横で聞いていた場合、「そうか、こういう状況はダメだってことなんだ」とインプットしてしまうのです。子どもの思考は小さいうちは柔軟なので、親が悲観的な展開を口にする数が多ければ、それだけ子どももそこにさらされることになり、物事を不安ベースで捉える物の見方が伝わってしまうことになります。

不安を悪化させないために親がとるべき4つの行動

その1 「今日は休んでいいよ」など不安の回避を癖にしない

私のカウンセリングの例でよく見られるのは、習い事などで、「ちょっと今日は行きたくない」と子どもが言うと、「わかった、なら今日は休んでいいよ」のような対応を繰り返し、それがだんだんとその子の不安解消の方法として定番化してしまうケースです。

人間はだれでも、不安を感じたときに、それを回避することでいったん気持ちを落ち着かせることができます。そうすると、それがだんだんとクセとなって、刺激を感じると回避するというパターンがインプットされてしまうのです。日ごろから、「回避をその子のテンプレートにしないこと」はとても大切になります。

その2 無理はさせずに段階的に導いていく

一方で、ならば無理矢理行かせた方がいいのかというと、そうでもありません。もちろんそれは一人一人の気質や性格が関係しているので、1つの対応では説明しきれないのですが、今回のテーマである「もともと不安になりやすい子」の場合、無理に引っ張って学校に行かせたり、習い事を強制したりすると、さらに恐怖や不安が高まってしまうことがあります。

最終的なゴールは、「学校に行けること」であっても、たとえば、
・ ランドセルや園バッグを一緒に準備する
・ 学校に行く時間に合わせ、支度をする
・ ママと一緒に校門まで行く
・ 先生の顔を見に行く
・ 友だちと一緒に教室に入る…

のように、「学校に行く」という行動の導線上にあるあらゆる行動を段階的に捉え、1つ1つできることを積み上げながらゴールへと導くことがポイントになります。自分で導くことが難しいなと感じる場合は、学校の先生や専門家に相談するのもいいと思います。

その3 不安を最悪のシナリオであおらずに、メリットを伝える

もともとは不安が強くない子でも、周囲の大人が不安をあおるようなことばかり言ってしまうと、だんだんとその影響を受けるようになってしまいます。私たちは不安になると、「○○だったらどうしよう」「○○にちがいない」と“最悪のシナリオ”で頭がいっぱいになってしまうことが多いのですが、その中には、「起こりそうもないこと」まで含まれていることが多いのです。それで子どもをあおってしまってはもったいないですよね。

実際にアメリカの大学の研究でも、「心配事の中の95%は、実際には起こらない」という結果が出ています。心配事のうち、実際に起こるのはそのうちの5%。起こらないことが79%、事前の準備で対処可能なのは16%という結果だったそうです。

この類の研究はよく行われており、多少の違いはあれ、だいたいこのような結果に至ります。これで分かるのは、たった5%のことのために、私たち人間は、時間や神経をすり減らしてしまうことが多いということです。不安はリスクを避けることにも役立つ防衛機能ですが、程度が強くなると自分が苦しくなります。

ですので、親が子どもに声をかけるときは、
「先生にあいさつしない子はダメな子だって思われるよ」という最悪のシナリオではなく、
「先生にあいさつできると先生も嬉しいね。ママも嬉しいし、○○ちゃんもきっと嬉しいよ」のように、やったことでのメリットを伝えた方が子ども自身も気持ちよく受け取れます。
物事の良い側面を拾う発想が身につくと、おのずと不安になることが少なくなってきます。

その4 親自身が「怖い」を連発しない

小さい子になにかを教えるときに、「怖い」という言葉を多用してしまうことがあります。

「それ以上行ったら怖いよ」
「怖いおじさんがいるからダメ」

のような声掛けです。私のこれまで聞いてきたお悩みの事例を見ても、親が「怖い」を連発すると、子どもも怖いと感じるものが多い印象があります。コロナにおいてもそうですが、正しく怖がることがとても大事です。

上記の例は、「怖い」という言葉で子どもに、「危ない所に行っちゃダメだよ」ということを教えたいのですが、そうであれば、「このフェンスの中で遊ぼうね」のように「どこまでならいいよ」という言い方でも教えることが可能です。世の中を怖いものでいっぱいにしてしまうと、どうしても不安を想起しやすくなってしまうので、「怖い」を乱用せずに、「どうしたら望ましいのか」と取るべき行動の方を伝えてあげてください。

わが子が「不安になってしまった」ときの対処法

ここまで、子どもの不安対策についてお伝えしてきましたが、基本的に、気質以外は、環境要因なので、未然に防いでいくことが何よりの不安対策になります。しかしそれでも不安というのは起こりやすいもの。とくに4月の学年替わりの時期は、新しい環境に対する不安を感じる子が多いものです。ですので、最後に、「今日不安になってしまった」というときの対応についてお伝えしておきます。

子どもたちが新しい学校や新しいクラスで時間を過ごす4月、子どもたちはどっと疲れて帰ってきます。楽しくても、やはり気疲れはしているものなので、どんな子であっても多少のストレスにさらされやすい時期と言えます。こういうとき、子どもたちは親に甘えることで精神的なエネルギーを補充したり、不安を解消したりします。ですので、4月になって「なんか最近やけにベタベタしてくるなぁ」と思ったら、このことを思い出してほしいと思います。

このベタベタする甘えは心理学でアタッチメントと呼ばれるものです。子どもは不安を感じたとき、パパやママなど精神的な絆で結ばれている存在を避難場所とし、そこで気持ちを安心させるのです。ですので、子どもたちが親を安全基地として使っていることがわかったら、それをしっかり受け止めてあげてください。小さい子であれば抱っこやお風呂などのスキンシップが効果的ですし、小学生であれば子どもの話をひたすら聴いてあげることがおすすめです。そこでエネルギーを充足できると、気持ちのリセットもしやすくなるので、実際に不安を感じていそうな場面では甘え行動を満たしてあげることを実践してみてくださいね。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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