自ら考え学ぶ子に。アメリカで話題の「ダイアロジック・リーディング」の実践方法

自ら考え学ぶ子に。アメリカで話題の「ダイアロジック・リーディング」の実践方法

本の読み聞かせ方を工夫するだけで、子どものさまざまな才能を引き出せる方法があることをご存じでしょうか?現在、アメリカの学校や家庭では、子どもが能動的に読書に関わることで「自分の考えを伝える力」や「対話力」を育む「ダイアロジック・リーディング」が積極的に取り入れられています。その具体的な実践方法や効果について紹介します。

日経DUAL記事

絵本の読み聞かせに「親子のやり取り」を加える

ダイアロジック・リーディングは、ニューヨーク州立大学の研究チームが開発・提唱した読み聞かせの方法。いつもしている絵本の読み聞かせに、「親子でやり取りをすること」をプラスするだけです。

日本でもアメリカでも、従来の読み聞かせとは「大人が本を声に出して読み、子どもはそれに耳を傾ける」というものでした。途中で子どもが口をはさめば、「静かに聞いてね」とたしなめたりしたものです。いわば、読み手が主体の読み方と言えるでしょう。

一方でダイアロジック・リーディングは、聞き手である子どもが主体です。読み聞かせ中には、子どもの発言をどんどん促し、親子で会話しながら読み進めます。

読みながら親が質問することで、子どもはより深くストーリーや背景について考えます。その過程で、自ら学ぶ姿勢、想像力、クリティカルシンキングなど生涯役立つスキルを身につけていくのです。

また、自分なりの意見や考え方を発言することで、文章構成力の向上や、プレゼンテーションスキルの訓練にもなります。このように読み聞かせ方を少し変えてみるだけで、驚くほどたくさんのメリットが見込めるのです。

説明が多すぎない本を選び自由な発想を促す

本を読む時間は、リラックスした雰囲気で「お楽しみ」として過ごすことが大切。子どもは、本を読んでもらうのが大好きです。自分で字面を追いながら読む負担がない分、物語の世界にどっぷり浸かって堪能することができます。小さな子どもだけでなく、小学校高学年になってもダイアロジック・リーディングの読み聞かせは有効です。

本は、イラストの描写が細かく、文章は説明が多すぎないものがおすすめです。子どもが自由な発想ができる余地を残している本を選ぶとよいでしょう。

説明が多すぎない本を選び自由な発想を促す

実践方法のレベルは3段階

ダイアロジック・リーディングには、3段階のレベルがあります。まずは、レベル1から始めてみましょう。慣れてきたら、子どもの年齢や理解度に合わせて、レベル2や3の質問も加えていきます。

レベル1:基本の質問をする
絵や文章から、簡単に回答が見つかる質問を投げかけます。具体的には、「誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように」を聞きます。子どもが答えるまでゆったりと待ち、答えたら、その回答を親が繰り返します。その時、少し情報を追加します。

例)
親「男の子は、どこで遊んでいるのかな?」
子「えーと、公園」
親「そうだね、公園で砂遊びをして遊んでいるね」(砂遊びの情報を追加)

このやりとりを繰り返しながら読み進めることで、子どもは物語の骨組みを理解すると同時に、新しい語彙を増やしていくことができます。

レベル2:オープンクエスチョンをする
オープンクエスチョンとは、「はい、いいえ」では答えられない、回答の自由度が高い質問形式のことです。子どもは、自分で考えて回答を組み立て、アウトプットする必要があります。このやりとりは、子どもが自分の意見を発表したり、他人と共有したりするための練習になります。

例)
親「このページでは、何が起きているのかな?」
子「男の子が、車のおもちゃをなくしちゃったの。泣きながら探していたら、知らない女の子も一緒に探してくれた」

レベル3:コンセプトに関する質問をする
レベル3では、より高度な読解力を必要とする「コンセプト」に関する質問を投げかけます。明記されていない情報を行間から読み取ったり、物語の全体像を理解したりすることを目指します。メインキャラクター、ストーリーのゴール、物語の背景などについて質問してみましょう。また、子ども自身の実生活と本のなかのシチュエーションを関連させ、「自分だったらどうするだろう?」と考えさせる質問も有効です。

例)
質問1「このお話の主人公は誰かな?」
質問2「男の子はどんな性格なのかな?」
質問3「○○ちゃんだったら、この時どんな風に感じる? どう解決する?」

ダイアロジック・リーディングで気を付けたいこと

「子どもの読解力を伸ばしてあげたい」という親心から、あれこれ質問したくなる人もいるでしょう。しかし、矢継ぎ早に質問しすぎると、楽しい読み聞かせの時間を窮屈に感じてしまうかもしれません。子どもの反応を見ながら、「親子の楽しいコミュニケーションの時間」としての位置づけで取り組んでください。

質問の数は、1ページに1つ程度で十分です。子どもの反応がよいようなら、子どもの回答をさらに広げて、レベル2、3への質問へとつなげてみましょう。

読み聞かせ中に「子どもの集中力が下がっているな」と感じたら、質問が多いか、内容が難しすぎる可能性があります。もう少し回答しやすい質問に変えるか、質問の回数を減らしてください。

読んでいる本自体に興味が薄いようなら、子どもに好きな本を選んでもらうのがおすすめです。今まで何度も読んだことがある本でも、子どもにとっては毎回新しい発見があったり、安心感があったりと、選ぶなりの理由があります。ぜひ、付き合ってあげてほしいと思います。

ダイアロジック・リーディングで気を付けたいこと

おわりに

ダイアロジック・リーディングは、親子で楽しくコミュニケーションを取りながら、我が子の能力を飛躍的に伸ばすポテンシャルを秘めた読み聞かせ方法です。必要なのは、本と、一緒に読むための時間だけ。ぜひ今夜から、ダイアロジック・リーディングを試してみませんか?

<参考サイト>
https://www.readingrockets.org/topics/comprehension/articles/dialogic-reading-having-conversation-about-books#:~:text=Dialogic%20reading%20involves%20an%20adult,understand%20story%20structure%20and%20meaning.

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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