子どもがゲームと上手につきあうために親ができることとは?

子どもがゲームと上手につきあうために親ができることとは?

テレビゲームやスマホゲームなど、ゲームが周りにあふれている現代。子どもが小さいうちから遊ばせているご家庭も多く、中には長時間遊んでいる子どももいます。

2019年5月には、新たな依存症として「ゲーム障害」がWHO(世界保健機構) に認められました。ゲーム障害に詳しい瀬川記念小児神経学クリニックの星野恭子理事長に、子どもがゲームにのめり込む怖さと親が知るべきことをお話していただきました。

星野恭子 理事長
小児科専門医、小児神経専門医。2001年、睡眠リズム啓発のため「子どもの早起きをすすめる会」を発足、2013年に文部科学大臣表彰を受賞。小児神経学クリニック院長を経て、2017年10月、医療法人社団 昌仁醫修会 瀬川記念小児神経学クリニック理事長就任。「子どもの睡眠」の視点からゲーム障害の治療にあたっている。ゲーム障害に関する論文に「ゲーム・ネット・スマホ中毒」「睡眠障害をいかに治療するかー小児科外来の現場よりー」などがある。
2019年9月29日に「子どもの早起きをすすめる会」が乳幼児の睡眠をテーマにしたイベントを開催予定。詳細はこちら→http://www.hayaoki.jp/event2019.cfm 以降のイベントにつきましてはTwitterでご確認を。Twitter: @KKyokohoshino

 

日経DUAL記事

さまざまな問題を引き起こす「ゲーム障害」

2019年5月、WHOが「ゲーム障害」を精神疾患として承認しました。ゲーム障害とは、ゲームのやりすぎで日常生活が困難になることを指します

ゲーム障害に陥るとどうなるか。インターネット依存症治療を行う国立病院機構 久里浜医療センターの樋口進院長によると、ネット依存が引き起こす体調不良として、視力低下・運動不足・頭痛・寝不足からくるだるさ・肥満・心肺機能低下・腱鞘炎・腰痛・栄養障害・体重減少・骨密度低下・体の発育障害などがあげられています。

保護者の方にとっては、勉強しない、寝ない、というのも困るところではないでしょうか。夜遅くまでゲームをやめられない子はとても多いと思います。

ゲームが発端となり、警察が介入する事件も!

子どもがゲームにのめり込むと、思いもよらない事件を起こすこともあります。

最近のゲームは課金することができ、お金を投資すればさらに楽しめる仕組みになっています。ゲームにのめり込んだ子が、親の財布からお金を盗んだり、クレジットカードの暗証番号を調べて50万円も使ったり、実際にそういうことが起きています。

もっと驚くような症例もあります。例えば、毎日深夜2時まで殺戮系のゲームをやっていた中学生の男の子。家庭環境が悪く、学校も不登校でした。ある日、母がゲームを注意したところ、怒った男の子が母の首を絞めました。すぐに警察と児童相談所が介入し、そのまま児童相談所の一時施設に6か月間入所しました。

男の子が入所中に私はご家族とよく話し合い、とくにお父さんに、「家の中で殺人事件が起こるところだったんですよ。子どものことを理解して、どうすれば子どもが毎日楽しく生活できるか考えてあげないと、この状況は良くなりません」と言いました。その後、お父さんの対応も変わり、施設から戻ってきた男の子の状態は良くなりました。

一番の処方箋は、パパとママの愛

ゲームのやりすぎで問題が起こるようになったら小児科に相談するのもいいですが、医者に頼る前に、まずは親子の関係を見直すことが大切です。

ゲームにハマる子は、ほとんどの場合、家庭環境に問題があり、親が子どもを責めすぎていると思います。子どもに対して、「学校に行きなさい!」「勉強しなさい!」と怒りすぎていませんか? 子どもはどんな気持ちでいるんだろうか、なんでゲームに走っちゃったんだろうか…、まずはそこから考えてあげるべきです。

親子の関係が上手くいっていれば、たとえゲームに走ったとしても、必ず戻ってきます

以前、ゲームにのめり込んで、その中でつながった男性と電話している女の子がいました。「危ないからやめたほうがいいよ」と私が言ったら、その女の子は「無理! だってこの人しか私のことわかってくれない」と言うんですよ。

だから私は、女の子のママに言いました。「一緒にゲームやってあげて」と。すると、ママは頑張ってゲームをやってくれて、女の子も早く良くなりました。簡単なことで親子の関係が上手くいくんです。

私の診察に来た親御さんには、まず一緒にゲームをすることをすすめます。一晩中でもいいから、子どもと一緒にゲームをしたり、動画を見たりしてあげて、と。

テレビゲームやスマホゲーム以外のゲーム、例えばトランプやボードゲームなどで遊ぶのもおすすめですよ。最近は知育系のボードゲームもあるので、親子で楽しめると思います。親が一緒にやってくれると子どもは喜ぶんですよね。

ここで大切なのは、大人も一緒に遊ぶのを楽しむことです。むしろ親のほうが楽しんでいるぐらいのほうがいいですね。ゲームをやっている子どもに頭ごなしにダメというのではなく、一緒にやることで、一緒にやめられます。

実はゲーム障害の一番の処方箋は、パパとママのLOVEです。LOVEが足りない子が、ゲームに走っているのです。こういうことは医学的に証明できないので難しいのですが、私はこのLOVE作戦でだいたい成功しています(笑)。

ゲームのやりすぎが脳に変化を起こす

これまでは親御さんとの関わり方の話をしましたが、もうひとつ、ゲーム障害の原因となるものが、脳の変化です。

ゲームをやりすぎると、脳、とくに人の気持ちを考えたり我慢したりするのに重要な前頭葉が委縮してしまうというデータがあります。つまり、長時間のゲームが脳に器質的な変化を起こしてしまうんですね。ゲーム中毒になると思わず軽い気持ちで始めたとしても、結果的に脳が変化してしまうのです。

脳の変化についてのデータは大人のものしかありませんが、子どもの脳にも変化は起こるはずです。でも、子どもたちは可逆的で治りやすいと思います。ぜひLOVE作戦で治してあげましょう。

ゲームを与えたら、必ず約束の時間を守らせること

基本的にゲームをやることはデメリットしかないと思っていますが、今の時代はゲームを通して友達と仲良くなることもありますし、絶対にやらせないというのは難しいでしょうね。

皆さんご存知のeスポーツもオリンピック種目になる、という話もあります。テレビで見た情報でしかありませんが、eスポーツの選手は筋トレをしたり規則正しい生活をしたりトレーナーの指導を受けたり自制しながら取り組んでいるそうです。

ビッグマネーが動くからというのもあるかもしれませんが。私は、これは一つの社会の変化かな、と否定は全然していません。「人生の目標」はそれぞれ違いますからね。

ただ、先ほども言いましたが、ゲームをやりすぎると脳に変化が起き、普通の子どもでも親に暴力をふるうことが起こりうる。親御さんたちはまず、どんな子どもでもゲーム障害に陥る可能性があるということを知る必要があります。

そして、子どもにゲームを与える場合は、時間を必ず守るように約束させましょう1回30分、1日おきぐらいが理想でしょうね

もうひとつ大事なのは、ゲーム以外に好きなことを見つけること。スポーツでも、音楽でも、何でもいいです。ゲーム=命とならないように、きちんと目指すものがあればいいと思います。

当院は、7月22日から、大人も子どもも一切メディア禁止としました。何となく待合室が穏やかになりましたが気のせいかしら。

平成から令和の時代は、メディアが娯楽になりました。文明には逆らえないので、ゲームの怖さも知りながら、上手く付き合うしかないのです。

子どもを見るとイラっとしてなかなか向き合えないママたちもいるかもしれませんが、子どもがゲーム障害に陥ってしまったら大変ですよ。親子の関係は、子どもからは変えられません。親から変わっていくしかないということを忘れないでくださいね。

星野理事長のお話を伺い、ゲームの怖さを再認識しました。わが家でも親子でゲームについて考える機会を作ってみようと思います。この記事をご覧になったみなさんも、親子の関り方、ゲームとの付き合い方を見直してみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

大学生の頃よりファッション誌のライターとして活動し、主にインタビューページなどを担当。現在はママ向けライフスタイル誌やWEBに執筆中。小学生と保育園児の男子2人の母。

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