新型コロナウィルスだけじゃない!? オリンピックに向けてママが備えておきたい、インバウンド感染症対策とは?

新型コロナウィルスだけじゃない!? オリンピックに向けてママが備えておきたい、インバウンド感染症対策とは?

中国・武漢から発生した新型コロナウィルスが世界的な広がりをみせ不安な日々ですが、半年後に控えた東京オリンピック開催時にも、さらなるインバウンド感染症の流入が懸念されているといいます。今後どのような感染症の流行が考えられるのか、また、感染症に備えてどのような対策をしておくといいのか、不安に思うママたちの声に、日本では数少ない感染症の専門医であるKARADA内科クリニックの佐藤昭裕院長が答えてくれました。

(※記事の内容は2020年2月25日現在のものです)


佐藤昭裕院長
東京医科大学を卒業後、総合内科・感染症科に勤務。長崎県の離島医療にも携わる。2019年、品川区・五反田にKARADA内科クリニックをオープン。感染症に対する豊富な知識をもとに多くの患者さんの診察を行っている。新型コロナウィルス情報など、院長ブログも発信中。https://karada-naika.com/

質問1 現在流行中の新型コロナウィルスとはどのような感染症なのですか? 

新型コロナウィルスは主に呼吸器に症状がでる感染症です。特徴としては、1週間ぐらい37度5分以上の熱が続き、咳・たん・呼吸苦の症状が出ます。致死率はそこまで高くないということと、亡くなった方のほとんどが65歳以上の方、もしくは、糖尿病や高血圧などの基礎疾患がある方。それ以外の方は重症化や死亡の心配はそこまでないと思います。

質問2 今後、新型コロナウィルスの流行はどうなると考えられますか?

ウィルスは基本的にどんどん人に感染して変異していくものですから、今後の予測はすごく難しいところです。新型コロナウィルスについてはまだわかっていませんが、多くのウィルスは湿度が上がるにつれて動きも鈍くなってきますので、あたたかくなってきたら収束する可能性も高いと思います。しかし、ウィルスが変異してものすごく感染度が高くなれば、もしかしたらオリンピック頃まで流行してしまうかもしれません。

質問3 東京オリンピック開催時のインバウンド感染症が不安視されていますが、そもそもインバウンド感染症とはどういったものですか?

インバウンド感染症とは、海外から来る人たちが持ち込んだ、国内ではほとんど流行のない感染症のこと。過去のオリンピックや国際大会でも、開催をきっかけにインバウンド感染症が流行したという報告がいくつもあります。日本でも、昨年のラグビーW杯のときに来日したオーストラリアの方が髄膜炎菌感染症を発症して入院しました。幸い、大きな広がりには至りませんでしたが、髄膜炎菌感染症は劇的に重症化してしまう感染症で死亡の可能性もかなり高いものなので、東京オリンピック期間中も注意が必要です。

質問4 数あるインバウンド感染症の中で、オリンピック期間中に日本で流行すると予想されるものは何でしょうか。

一般的に言われているのは、はしか(麻疹)、風疹です。この2つに関しては、抗体を持っていない世代(とくに風疹は40~50代の男性の抗体価が低い)が多いので流行するかもしれません。はしかは、日本では制圧した感染症と認められていて、日本固有のはしかのウィルス株はありません。ですから、はしかが流行するときは海外から持って来られるウィルスが原因です。そういう意味ではインバウンドなんですね。同様に、おたふくかぜ、水ぼうそう(水痘)も、抗体価がない人はかかってしまいます。

また、数年前に代々木公園で流行ったデング熱、チクングニヤ熱、ジカ熱も流行する可能性があります。実際、リオデジャネイロオリンピックではジカ熱が問題になりました。この3つの感染症は蚊がうつすもので、夏に流行ります。日本には蚊がいますので、海外から来た患者さんが日本で蚊に刺されて、その蚊が日本人を刺すとどんどん増えてしまいます。

さらに、前述した髄膜炎菌感染症が入ってくるかもしれないし、インフルエンザが夏に流行する可能性もあります。インフルエンザは、日本では冬にしか流行しませんが、東南アジアなどは通年性で流行っています。また、8月はオーストラリアなどの南半球は冬ですので、そこからインフルエンザが来ることも考えられます。

質問5 今回の新型コロナウィルスのように新たな感染症が発生することも考えられますか。

新たな感染症が日本から発生するということは考えにくいですが、東南アジアやアフリカなどから発生して日本に持ち込まれるということはあるかもしれません。

質問6 インバウンド感染症の感染経路として考えられるものはどんなものがありますか?

新型コロナウィルスは飛沫感染と接触感染。風疹・おたふく・髄膜炎菌感染症は、飛沫感染。はしか・水ぼうそうは空気感染です。

空気感染は感染者と同じ空間にいるだけでうつってしまいますが、飛沫感染は咳やくしゃみをしたときに飛び散る細かい唾液などがかかることによって感染します。接触感染は、例えば、飛沫感染する感染症にかかっている人が咳をおさえた手で電車の手すりを触ったあとに、他の人が手すりに触れてその手で口や目を触ってうつることを言います。飛沫感染するものは接触感染もありうると思います。

質問7 小さな子どものいるご家庭ではどのような対策をしておけばいいでしょうか。

最低限やっておくべきことは、はしか・風疹・おたふくかぜ・水ぼうそうの抗体価をチェックして、足りなければワクチンを打っておくことですね。髄膜炎菌感染症も、自費になりますがワクチンがありますので、打つことをおすすめします。

デング熱・チクングニヤ熱・ジカ熱などは蚊を媒体したものですので、長袖を来たり、虫よけをしたり、蚊に刺されない対策を。日本の虫よけは有効成分「ディート」の濃度が10~20%ぐらいで、持続時間が短いので2~3時間ごとに塗りなおすといいですね。

質問8 オリンピック会場で観戦する予定ですが、どのような対策をしておけばいいでしょうか。

感染症予防には手指衛生が一番です。目に見える汚れがある場合は流水と石鹸の手洗い、目に見える汚れがない場合、たとえば手すりなどを触ったあとには速乾性アルコール手指衛生剤による手洗いがいいでしょう。最近は携帯用のスプレーなどもありますので、そういったものを持っておくといいですね。

飛沫感染するものに関しては、マスクで予防できますが、オリンピック時は夏ですので、なかなかマスクをつけるのは難しいかもしれません。念のため持っておいて、周りに咳をしている人がいたときにつけるという対応でいいと思います。

質問9 感染症予防のためのマスクは、どのようなマスクがおすすめですか。また、正しいマスクのつけかたも教えてください。

マスクにはいわゆるサージカルマスクといわれる普通のマスクと、空気感染を予防するN95マスクの2種類があります。N95マスクは空気感染だけでなく飛沫感染なども防げるとは言われていますが、しっかりつけると苦しくて1日中使うことはできないと思いますので、感染症予防は普通のサージカルマスクで十分です。子ども用マスクもサイズがあっていれば問題ありません。

マスクの付け方ですが、けっこう間違って使っている方多いんですよね。まず表と裏を確かめ、ギャザーのひだが下向きになるようにつけるのが正解です。鼻までしっかり隠して、金属部分を鼻の形に合わせておりまげます。下もあごまでしっかりマスクを引っ張って、空気の漏れがないように全体を覆いましょう。

質問10 感染症にかかったかも?と判断する目安などはありますか。また、感染症にかかった場合、どのような医療機関を受診するのが望ましいでしょうか。

まずは熱など風邪のような症状がでます。風邪はだいたい2~3日で治りますが、熱が4日以上続いたり、明らかに症状が重かったりしたら病院で受診したほうがいいでしょう。それでも症状が改善しないときは、感染症科のある病院を受診された方がいいと思います。

いかがでしたか。新型コロナウィルスだけでなく、インフルエンザや水ぼうそうなど耳馴染みのあるものもインバウンド感染症になると知り大変驚きました。オリンピックを楽しむためにも、感染症に関する正しい知識を知っておくこと、マスクの着用や手指衛生を意識しておくことが大切ですね。

著者プロフィール

大学生の頃よりファッション誌のライターとして活動し、主にインタビューページなどを担当。現在はママ向けライフスタイル誌やWEBに執筆中。小学生と保育園児の男子2人の母。

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