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無理、ヤダ、嫌い……とりあえず否定から入る子の対処法

無理、ヤダ、嫌い……とりあえず否定から入る子の対処法

お友だちが好きで食べているものを「それ、嫌い」、みんなで遊びに行けば「ヤダ、無理」。本人は悪気なく言っているようだけれど、周りを不快にさせることの多い全否定、聞いたことはありませんか? この記事では、とりあえず否定から入る子の心理やそれに対するリアクション、日頃からの働きかけについて見ていきたいと思います。

日経DUAL記事

わがままとはちょっと違う全否定、4つの事例

今回のテーマである「とりあえず否定から入る子」。事例をご紹介することでイメージが湧きやすいと思うので、ここで一緒に見ていきましょう。

その①自分の嫌いな食べ物をアピールする

フードコートでママ友親子と一緒に食べているとき。うちの子のお皿を見て、「トマト嫌い、チーズも無理」とアピールされた

その②自分の好みを押し付ける

娘の友達が数人遊びに来たとき、娘が好きな芸能グループを、「でも歌、ヘタだよね。私は嫌い」と否定された

その③苦手なことを人にも強要する

数家族で遊園地に行ったとき、「次は何に乗ろうか?」といくつかアトラクションの候補を言うと、1人の子が、「これは無理、あれもヤダ、絶対乗らない」などと全否定。「乗らないから行ってきて」とはならずに困った

その④ストライクゾーンが狭く気に入らないことが多い

ママはとてもいい人だが、子どもは小さい頃からとにかく否定が多い。しかも、「ヤダ~泣」とわめいたりするのではなく、静々と、「ヤダ、ヤダ」と全否定するので、こちらも気を遣ってしまい、結局その子に合わせることが多かった

などなど。パパやママに言われたことに反抗して、意思を押し通そうとする俗に言う“わがまま”ともちょっと違う、どう対処していいかわからない否定。“食わず嫌い”のような、不安感からくる否定のような……。このような経験ありませんか?

共通しているのは、その場にいる人たちをげんなりさせるところでしょう。もちろん幼稚園生くらいの頃は、まだまだエゴセントリズムと言って自分中心の見方が強いので、こういうことはよくありますが、小中学生になっても見られるものです。実際見渡せば、まずは否定から入ってしまう人は大人でも意外といますよね。そこには、どのような心理が働いているのでしょうか?

否定する子の特徴と心理

ここでは“とりあえず否定から入る子”の心理を見ていきましょう。どんな思いから、「それ嫌い、ヤダ」を言ってしまうのでしょうか?

上記の例を見ると、パターンが2つあるように思います。

パターン1:余計なひと言系

特徴:「それ、今わざわざここで言わなくていいんじゃない?」という言動で、上記のその①とその②がそれに当たります。何も言わなければ事が荒れないのに、なぜかとどめとなるひと言を言ってしまうパターンです。

心理:「違う意見を言って、自分の存在を示したい」「変わったことを言って、人の注意を引きたい」という思いがきっかけになっていることが多いと思われます。あとは、コミュニケーションを勝ち負けや上下関係の枠で捉えている場合も出やすくなるでしょう。

相手を肯定すると、自分が負けた感じがする、だから、「トマトが嫌い」と言って、マウントを取ろうとする、このような心理です。もちろん本人はそれを意識しているわけではないですし、悪気があってやっているわけではありません。

パターン2:何もかも全否定系

特徴:協調性が求められるような場で、1人全否定を押し通し、周囲を振り回してしまうケースで、上記のその③とその④がそれに当たります。「じゃああなたは何がしたいの?」と聞いても、とくに何があるわけでもなく、「別に……」ということもあります。

心理:パターン1と同様に、「自分の存在を示したい」「人の注意を引きたい」という場合もあれば、実際に物事を悪い方に捉えるクセがついていて、世の中の大半のことを否定して見てしまっていることで、口を開けばネガティブ発言になってしまうという場合もあるでしょう。

たとえば、
「ジェットコースターは?」⇒「落ちそうで怖い」
「コーヒーカップは?」⇒「気持ち悪くなるからイヤ」
「お化け屋敷は?」⇒「暗いの嫌い」

のように、物事の悪い側面を見ることが習慣になっていて、それがひと言目に来てしまうケースです。この場合、子どもの頃は、「イヤだ」と単に否定しているようなことも多いですが、大人になると、「でもそれって○○だよね」「だけど○○だから…」とひと言目が、「でも」とか「だけど」と打ち消しで入ることが多くなります。

どちらも、相手の気分を害したり、場の空気を乱すという点で共通していますが、前者はどちらかと言うと相手の気持ちを考えていない「自己アピール」、後者は否定で回答して「自己防衛」しているという要素が強いと思われます。

否定で「注目を集めたい」場合も

なぜそうなってしまうのか、要因は1つではないでしょう。

負けず嫌いの子にしたら、自分が嫌いなトマトが肯定されていることだけで、「何かひと言言わないと気が済まない」という気持ちになるかもしれません。
周りの子はみんな仲良く遊べているのに、自分はそれができない、そんな場面では、妬ましい気持ちから全否定の気持ちが強まることもあるでしょう。
そして、もしそれまでにこういう手段で他者の目線を獲得してきた場合、それがその子にとって「成功」と映れば、繰り返されやすくなります。

このように性格や学習が絡み合って起こっていることが多いと思われます。

一方、大人になって周囲を見渡してみると、パターン1はあまり見かけなくなっており、それよりは2つめのパターンに出会うことの方が多くなっているのではないでしょうか?

「これ、おいしそう」⇒「でも高いよ」
「これ、可愛いね」⇒「だけど丈が短くない?」

と会話のキャッチボール中に、「でも」「だけど」を連発する人です。こういう場合、その人の思考スタイルが影響していて、ネガティブ寄りだと、そのフィルターを通して物事を見るので、どうしても悪い所探しの目になってしまいがちです。この点で言えば、その子、その人の思考スタイルというのも、要因の1つとして考えられると思います。

ネガティブアピールへのベストな返しは「反応しないこと」!

もし、ママ友数人、子ども数人で出かけているときの食事の場面で、トマトをおいしそうに食べている子の間で、1人の子が、「トマト嫌い」と言ってしまった……。

こんなとき、その場でできるベストな対応は、やはり「極力反応を示さない」ということでしょう。

もし、明らかに場の雰囲気を壊しているのにも関わらず、「○○ちゃんトマト嫌いなのね」のように周りがフォローしてしまうと、その子は、「注目を浴びられた」と感じ、また繰り返すことになってしまいます。無意識に出てしまう言葉かもしれませんが、それでも何も反応が引き出せないのであれば、その子にとっての「成功」にはならないので、フェイドアウトしやすくなるはずです。

おしゃべりに論破(勝ち負け)は不要!
小学生になったら会話のTPOをマスターしよう

ここまで、「とりあえず否定から入る子」について見てきましたが、自分の意見を述べてはいけない、人と同じでなくてはいけないと言っているのでありません。宿題で作文を書くときや、クラスで話し合いをするときなどには、自分なりの意見を持つこと、そして述べることはとても大切です。そして、食べ物の好き嫌いの話も、友だち同士で、「あれが好き、あれが嫌い」と違いを楽しんで会話が盛り上がることだってあるでしょう。

今回の事例を通してお伝えしたいのは、日々のおしゃべりの場面でわざわざ空気を乱すようなことは言わない方が望ましいということです。上手に会話のキャッチボールができる方が、お友だちとも仲良くできますし、あの子と一緒におしゃべりしたいと思ってもらえますよね。

小学生の間で論破ごっこのようなものが流行っているようですが、やはりTPOをわきまえないと場がしらけてしまいます。日々のおしゃべりには勝ちも負けもないので、使う場所を選ぶよういざなっていきたいですね。

年齢についてですが、相手の気持ちになって考えるというのは、認知発達の面で言えば難しいスキルですので、幼稚園生だとまだまだ「トマト嫌い」のような場面はあるかもしれません。でも、小学生の中学年くらいになったらできる年齢です。「嫌いはアピールしなくていい」「自分が言われたらイヤなことは言わないようにしよう」こういったことは伝えていってほしいと思います。

最後に、先日Twitterで話題になっていた@ganbaruman6180さんの素敵なツイートをご紹介したいと思います。

おばあちゃんから孫への教えがきちんと届いている、素晴らしいなと思いました。みなさんもこのエピソードを参考に、ぜひ気持ちのいいコミュニケーションのコツをお子さんたちに伝えていってください。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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