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2021年を振り返り!「令和ママたちの子育ての悩みを公認心理師が解説」

2021年を振り返り!「令和ママたちの子育ての悩みを公認心理師が解説」

コロナで始まり、コロナで終わろうとしている2021年。行動制限のある生活の2年目ということで、昨年とはまた違った悩みやストレスが出てきたように感じています。そこで今回はこの1年で多かったお悩みを10個ピックアップし、その傾向を分析しつつ、今後のための解説をしていこうと思います。ぜひご自身のお悩みと照らし合わせながら読み進めてみてください。

日経DUAL記事

2021年に多かった子育てのお悩みトップ10

昨年3月の休校以降、私たちの生活は様変わりしましたが、1年前の2020年末には、「来年こそはきっと」「あと少しの辛抱」と言っていたような記憶があります。しかし、あれよあれよでもう年末。ワクチンの接種は進みつつも、結局今年もコロナで終わってしまいそうです。

自粛生活2年目ということで、まさに悩みもストレスも慢性化してきた感があります。私が運営している育児相談室でお聞きするお悩みも、コロナ2年目の色が出ているのを感じています。2021年、どのような悩みを持つ方が多かったのか、まずその一覧を見ていきましょう。

1 とにかく気持ちが休まらない
2 夫や子どもへのイライラが止まらない
3 子どもがネット依存気味になった(ゲームやYouTubeなど)
4 自分が怖いと感じるほどの勢いで叱ってしまう
5 リモートワークのため公私の切り替えが難しい
6 子どもがわがままになり、言うことを聞かない
7 正直子どもが可愛いと思えない
8 子どもの生活リズムが崩れた
9 子どもが学校、幼稚園に行きたがらない
10 1人になれる時間がないのに孤独を感じる

みなさん、これを見てどう思われましたか? 自分と重なる悩みもあったかもしれません。 これらを俯瞰して見ると、やはりコロナの影響が否めないと感じています。しかもコロナ序盤の去年よりも、悩みが深くなってきている気もしています。

また、子育ての悩みというのは、1つの悩みがもう1つの悩みとつながっていたり、ある1つがトリガーになって連鎖していたりということが非常に多く、単独で起こることはあまりありません。そこで今回あげた10個をママ側の悩みと子ども側の悩みの2つに分け、そこに至ってしまった理由や背景を考えてみたいと思います。

長引くコロナ禍で不安が怒りへ。ママの余裕がなくなり精神面も圧迫

・とにかく気持ちが休まらない
・夫や子どもへのイライラが止まらない
・自分が怖いと感じるほどの勢いで叱ってしまう
・リモートワークのため公私の切り替えが難しい
・正直子どもが可愛いと思えない
・1人になれる時間がないのに孤独を感じる

新型コロナの規制により、以前よりも家の中で過ごすことが増えていますが、家にいる時間と人数が増えれば、当然ながら家事も増えます。昼食の支度などは典型例でしょう。これまでよりも家事の負担が増えたことでのストレスは大きいと考えられます。気持ちが休まる時間がなく、イライラが常態化している方が増えているのを感じています。

また、リモートワークをしている方は、やってみての感想が二派に分かれるようです。洗濯しながら仕事ができることを効率的で便利と捉えている人がいる一方で、仕事も家事も育児も全部手の届く範囲でできてしまうことで、今まで以上にパンパンのスケジュールをこなし、心身ともに限界と言う人、公私が同じ場になるため仕事からの切り替えが難しいという人もいます。

このような圧迫が余裕のなさにつながり、自分でもびっくりするほどの怒りを爆発させてしまうという声も。「正直、自分が怖い」「鬼のような怒りを持っていることを初めて知った」とコロナ禍の煮詰まり感が、今まで持ったことのないレベルの負の感情を生み出してしまっているようです。長引くコロナ禍で、しなくてもいい喧嘩をしてしまったり、親子関係や夫婦関係が悪化してしまったりという方も増えています。

そんな圧迫感のある毎日なのに、「孤独を感じる」という声も。いつも子どもと一緒で1人になる瞬間すらないのに、孤独感があるのです。コロナにより行動範囲が狭められたり、家の中で過ごすことが増えたりしたことで、世間から取り残された感覚が生じやすくなっているのではと考えています。大人同士の接点が減ったことも関係しているでしょう。

【心理学的アドバイス】
コロナが始まった頃は、「この先どうなるのか」という不安感の方が強かった方も、2年目になり、怒りがそれに取って代わった人も多いと思います。怒りは、外に吐き出されると相手を傷つけることがあるだけでなく、自分自身にも自己嫌悪や自己肯定感の低下という形で返ってきてしまいがちです。コロナ2年目の圧迫感→子どもや夫へのイライラ→強い怒りをぶつける→自己嫌悪、自己肯定感の低下……。このようなループを起こしているのです。

子育てで負のループにはまってしまうと、どこから手をつけたらいいのかわからなくなりますが、これまでの私の経験からお話しすると、まずはママの精神面の状態を落ち着けて、それからお子さんのことに向き合う方がうまくいくことが多いです。なぜなら、「ゲームをなんとかしないと」「生活リズムを取り戻さなきゃ」というときに、ママの気持ちがある程度落ち着いていた方が効果が高いからです。

たとえば、
・スタバでコーヒーをテイクアウトする
・子どもが寝たあとにお風呂に浸かる
・いい香りのハンドソープに変える
・YouTubeでストレッチを日課にする
・話題のお店のケーキを食べる

こういう気晴らしでも、方向転換のきっかけになることは多いです。

子育て中のママはどうしても子ども優先で物事を考えてしまうので、なおさら自分を守るという意識は大切です。この1年の自分をねぎらい、少しでもいい気分になれそうなことをまず取り入れ、応急処置を図ってみてください。

ゲーム依存や体験不足…子どもの行動に関する悩みが増した

・子どもがネット依存気味になった(ゲームやYouTubeなど)
・子どもがわがままになり、言うことを聞かない
・子どもの生活リズムが崩れた
・子どもが学校、幼稚園に行きたがらない

コロナの規制により、習い事や塾がお休みになったご家庭も多いと思います。あまり日ごろは意識していないかもしれませんが、習い事や塾は子どもの生活を自然にリズミカルにしている要素の1つです。習い事などがお休みになってしまうと、その時間をどう過ごしているかはその子それぞれ。モチベーションが高い子はその場に行かなくても自主練や自主学習ができますが、まだ年齢が小さいうちは、行けばやるけれど、行かなければやらないという子も多いものです。お家でだらだらしてしまうことに慣れてしまったというケースは多いようです。

とくにコロナ禍の間にネットに依存気味になった子は多いと感じています。ネットと言ってもゲームや動画視聴などが中心で、画面に張り付いて離れないというお悩みが増えています。それにともない生活リズムが乱れ、就寝時間が遅くなったり、ゲーム時間のことで親子げんかになったり。それが叱る回数を増やしてしまうというループを起こしてしまいます。

親にとっては頭痛の種ですが、子どもからしたら家で好きなゲームができるのは悪いチョイスではありません。それが、「学校より家がいい」という思いを強くさせ、行き渋りや不登校につながってしまっているケースも見られます。

ただ、親も好きでこの状態を呼び込んでいるわけではありません。コロナで色々な体験が奪われてしまっている子どもたちのことを考えると、「この時代で可哀そうに」という気持ちが出てくるものですし、それにともなって、「色々と我慢をさせちゃっているし」「だから多少は大目に見てあげよう」という思いも出やすくなります。それが災いし、子どもからの要求が次第に増え、気づいたら、すっかりわがままになってしまったというケースは多いように思います。

【心理学的アドバイス】
コロナ禍は親に多くのことを強いているので、これ以上はできないという方も多いかもしれません。ただ、上記のような状態は、そのままにしてしまうとエスカレートする確率の方が高いので早めの対策が望まれます。

もめごとの原因は何であることが多いでしょうか? もしゲームや動画にハマってしまったことが原因であれば、そこからテコ入れをするのが順番としては正しいでしょう。まだまだ親が時間や機器を管理することが望ましい年齢ですので、就寝時間を元通りに戻すことを目標に取り組んでみてください。

いったん崩れてしまった子どもの生活リズムをリセットするのは大変な作業なので、一時的に今以上のもめごとが起こることが予想されますが、でもそこを超えられると、親自身もかなり楽になります。夕方以降、寝るまでに何時間あるのか、それをまず明らかにし、そこにやることを書き出してみるとさまざまな矛盾に気づけることが多いです。ぜひ可視化してみてください。

家族や友人、カウンセリング…子育ての悩みは言葉にして外在化しよう

ワクチンが接種可能になったときには、これでコロナを超えられるのではという楽観した思いがありましたが、それから数ヶ月経ち、ワクチンの効果への懸念も浮上しています。早くこれまでの日常を取り戻せればなによりなのですが、現実的にはもっと時間がかかることが予想されます。

育児支援をする立場から言えることは、できることから取り組むということです。まずは、上に述べたような応急処置をして、子どもの生活リズムの改善に取り組んでみてください。そして、自分だけではどうにもならない場合は、だれかに相談することでアイデアがもらえることも多いので試してほしいと思います。信頼のおける友人でもいいですし、ご家族ならなおさらおすすめです。

だれかに相談するということは、言葉にしていったん外に出す行程を含みます。悩みというのは、自分ひとりで考えていると堂々巡りになって解決が見いだせないことも多いのですが、外在化することで実際に見える形に落とし込まれるので、手をつけやすくなるのです。

欧米ではもっとカウンセリングや相談などの敷居が低いので、こういうときは専門の人に相談する人も多いものです。日本では専門家に相談というと、何か悪いところがあるからという印象がまだまだあるのかもしれません。あとはお金もかかりますし、それだけの対価があるのか確信できないために踏みとどまってしまう人もいるでしょう。

ただこれまで私が受けた相談の例を見ても、もっと早く相談していれば苦しまなくて済んだのにということはとても多いです。とくに子どもの行動の改善は早ければ早いほど成果も得られやすいのが実情です。こんな風に書くと、専門家を推しているようになってしまいますが、でも知識を持ってアドバイスをしてくれるというのは確かなので、自分の悩みに沿った専門家を探してみるのはとても有効です。育児は、知識があることで避けられる悩みはとても多いので、一考してみてくださいね。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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