幼少期、小1、小5で異なる「子どものストレスサイン」

幼少期、小1、小5で異なる「子どものストレスサイン」

今はストレス社会と言われていますが、それは大人だけではありません。子どもたちもかなりのストレスを抱えています。
そこで今回は、子どものストレスの特徴を年代別に掘り下げながら、親ができる対処法などについて見ていきたいと思います。

日経DUAL記事

幼小期、小1、小5、子どもがストレスを感じやすいシチュエーションとは?

まずはじめに、子どもたちがどんなことでストレスを抱えやすいのかを見ていきましょう。“子どもたち“といっても、4歳の子と10歳の子では日々の過ごし方がかなり違いますので、ここでは、小学校に上がるまでの幼小期と、小学1年生、5年生という3つの時期に分けて見ていきます。

◇幼小期
ストレスの対象になりやすい状況
・ 赤ちゃんの時に比べ、親との距離が開くことへの不安感
・ 思い通りにならない状況が増えてくることへの抵抗感

具体的な悩み
・ ママ・パパから離れたくない
・ だから保育園や幼稚園がいやだ
・ 弟や妹が生まれて、自分を見てくれる時間が減った
・ おむつを外し、トイレの練習なんてしたくない
・ やりたいことを好きなだけできない
・ ダメと言われることが増えてきた
・ パパとママに強く叱られて怖い

◇小1
ストレスの対象になりやすい状況
・ 学校という新たな枠組みへのプレッシャー
・ 「もう1年生だから」という周りからの期待感

具体的な悩み
・ 1クラスが大きくてなじめない
・ 時間割に沿った1日を過ごさなくてはいけない
・ お勉強というものが始まった
・ 1人でやらなくてはいけないことが増えた
・ 「お兄ちゃんでしょ」「お姉ちゃんでしょ」と言われる

◇小5
ストレスの対象になりやすい状況
・ “お勉強”から“学習”に変わり、量、質ともにレベルが上がったことでの圧迫感
・ 大人の思考に近づき、より現実にさらされることで出てくるネガティブな感情

具体的な悩み
・ 勉強がさらに難しくなってきた
・ 宿題がたくさんある
・ 受験勉強で忙しい
・ 学校から帰ってもやることがたくさんある
・ 周りと比べて落ち込んだり焦ったりすることが増えた
・ 友だち関係の悩みが増えた

ストレスを“絶対悪”と捉えないことも大切

このように年齢ごとに見ることで、その子の成長段階に託された“お題“がストレスと関係していることがわかります。
でも、そのお題は基本的にはその子の成長を促すもので、あって然るべきものでもあります。

たとえば、
・ ずっとママと一緒のまま
・ ずっとおむつのまま
・ ずっとお勉強しないまま
・ ずっと子どもの発想のまま

では、年齢相応の成長ができず、結果的に本人が困ってしまうことになります。

ここから見えてくるのは、ストレスは必ずしも“悪”ではないということです。

ほどほどのプレッシャーは私たちを成長させてくれるということは、きっとみなさんも感じていると思うので、子どもたちにとっても、そういうレベル感に持って行ってあげることが、子どものストレス管理として望ましいと言えます。

ストレスをゼロにしようとか、ストレス=悪という見方をしてしまうと、必要以上に手をかけてしまったり、子どもがすべき経験を奪ってしまうことにもなりかねないので、そこは捉え方を変えていくことが大事でしょう。

逆に、親の強い対応が子どものストレスになっている場合も要注意です。上記で言う「パパとママに強く叱られて怖い」などはその典型です。

子どもたちが年齢相応のお題を乗り越えることは大事、でもそれを圧迫や脅威で追い込まない、そのさじ加減が求められます。

ストレスを抱えやすい子の2つのタイプ

ほどほどのプレッシャーはその子、その人を成長させる機会になりますが、それが過剰になると打ちのめされてしまいます。子どものストレスを見る際に、もっとも大事になってくるのは、「その子にはどう映っているか」です。同じ状況でも、響き方に個人差があるものなので、ここでは、その違いについて気質と経験の2つの側面から見ていきます。

1.気質的にストレスを抱えやすいタイプ
一般的にストレスは、負荷がかかった状況に置かれると発生しやすくなるので、子どもたちにとっては“環境の変化”がストレスの要因になることが多いものです。

上でご紹介した内容を見ても、慣れていた状況から新たな状況へ移り変わるときに、スト私がレスを感じやすくなっているのが見てわかりますね。

しかし、新1年生になったときに、どの子も大きなストレスを抱えるかと言うと、実際にはそうではありません。学校に行きたくてわくわくする子もいれば、クラスに入るのが怖くてびくびくしてしまう子もいます。

この違いはもともとの気質が影響していることが多く、幼少期はとくに顕著です。そのため、積極的でアクティブな子は新しい環境を魅力ある場所と捉える一方で、消極的でおとなしめの子は慣れるのに時間がかかるというような違いが生まれます。これがストレスレベルの違いになりやすいので、わが子のストレスを考える際には、“気質“を考慮した上で対策を考える必要があり、自ずと「他の子と比較しても仕方がない」と受け入れることが大事になってきます。

1歳くらいの頃を振り返って、
・ 新しい場所が苦手だった
・ 人見知りが激しかった
・ 慣れるまでに時間がかかった

という場合は、もともと新しい刺激が苦手なタイプであることが多いと言えます。入学やクラス替え、新しい習い事、新たな挑戦などが、普通以上に大きな壁に見えてしまい、ストレスを感じやすいので、後半でお伝えする対策をより意識的に取り入れていくことがポイントになるでしょう。

2.経験値不足でストレスが溜まりやすいタイプ
幼少期→小学校入学→高学年へという成長の過程で、子どもたちはより社会性を身につけていくことになりますが、年齢相応の社会性が備わっていないと、それもストレスを抱えるきっかけになってしまいがちです。

たとえば、子どもの気持ちを大事にし過ぎてしまって、ダメなものもダメと教えられずに入学まで来てしまい、いきなりリズムある生活になじめずストレスになるというのはよくあるケースです。
私の相談室でも、もともとの気質的には対応できるはずなのに、親がかばい過ぎてしまい、その子の耐性を弱めてしまっている事例が見受けられます。

1つめの生まれ持った気質とは異なり、生まれてからの接し方が影響しているので、ここは変えていける要素です。わが子が可愛いあまり、「微塵のストレスも抱えてはいけない」と感じてしまうと、その子の経験値を下げてしまいかねないので、先に触れたように、「ほどよいプレッシャーはこの子の成長のため」と切り替えていけると望ましいです。

感情、行動、身体、ストレスの現れ方を知っておこう

親が子どものストレスと向き合う際にすべきなのは、ストレスをゼロにすることではなく、その存在に気づいてあげることです。
子どもは心にもやもやを感じても、それをうまく言葉で説明できません。言語化できないというのも、幼小期と小学校5年生では理由が異なり、小さい子は自分の気持ちを適切な言葉で言い表せないのに対し、小5くらいになると、わかっていても親には言いたくないという子が出てきます。

ただ言葉では言えなくても、サインは送っているものなので、そこを見逃さずにキャッチしていきましょう。

大人もそうですが、ストレス信号は、①感情面、②行動面、③身体面に出るものです。

子どもたちで言うなら、
・ 感情面:ヒステリックになる、すぐにぐずる、イライラする、表情が乏しい
・ 行動面:抱っこをせがむ、甘えてくる、指をしゃぶる、爪をかむ、弱い者いじめをする、八つ当たりをする、 反抗する、攻撃的になる、暴力をふるう、暴れる、無口になる、ふさぎ込む、眠れない、園や学校を行き渋る、休む
・ 身体面:お腹を痛がる、吐き気や下痢をもよおす、おもらし、おねしょをする

などが挙げられます。とくに行動面での変化は、親の目に留まりやすいので、ストレスの可能性も踏まえ、見ていってあげましょう。

親ができること、子どもがすべきこと

ここまで述べてきたように、ストレスは絶対悪ではないので、親の方もバランスあるアプローチが求められます。
ここから、親ができることと、子ども自身で乗り越えていった方がいいことを踏まえた働きかけをお伝えしていきます。

◇ストレスだと気づく
子どものストレスに向き合おうとする際、まずはストレスがあることに気づかなければ何もできません。
上で触れたサインを参考に気づいていこうとすることが重要です。とくに体の不調の場合、実際に体調が悪いこともありますので、ストレスから来るものか、体調によるものかを知ることは大事です。
それにより対応策が変わってきますので、長引かせずに、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

◇居心地のよさを心がける
子どもが大きなストレスを抱えたときに、何より欲するのは、ホッとできる場所です。家庭が子どもの心のよりどころになるよう、居心地のよさを心がけていきましょう。

子どもの変調が気になり出すと、あれこれ聞きたくなりますが、尋問的に訊ねても、まともには答えてくれないことがほとんどです。
とくに5年生あたりになると、思春期間近で口数が少なくなる子は多いので、押すよりは引くアプローチが得策です。
家庭が居心地のいい場所であれば、話しやすい場にもなるので、子どもたちからの発話が増える雰囲気がポイントになります。

なお、大人もそうですが、面と向かうと言えないことも、書けば伝えられることはあります。
LINEのようなメッセージツール上でのやりとりが役立つこともあるので、形にこだわらず話せる場を持つことを意識していきましょう。

◇場慣れを促す
もともとの気質で消極的な子の場合、環境の変化でストレスを抱えることが多いのは上で触れたとおりですが、数をこなすことが助けになることは非常によくあります。
「発表会で人前に立ちたくない」「大人数の中に入って行くのがイヤ」など、人が刺激になっているストレスの場合、お家でパパとママの前でたくさん練習をしたり、少人数のお友だちをまず作ることを目標にしたりと、刺激を小規模にした積み重ねをするアプローチがおすすめです。

場慣れをすることで、それまでは立ちはだかる壁だと思っていたことが、低く感じられるようになるのです。
場数がその子のストレスレベルを下げてくれることはよくあるので、親が並走してあげられると望ましいです。

◇親が明るい見通しで会話する
私が運営している育児相談室では、親御さん向けのカウンセリングも行っているのですが、そこから見えてくるのは、同じような状況に置かれても、感じるストレスのレベルには違いがあるということです。

物の見方が極端になりがちな人は、ストレスを感じやすいタイプと言うのは知られており、たとえば、
「成功以外は失敗」
「今回だめなら、次もだめ」

のような捉え方はストレスを抱えやすい人の典型的なパターンです。

もしこのような声かけをお子さんにしてしまっている場合、子どももそれを吸収していってしまうので、当てはまる場合は、そこを改善していくことも有効なストレス対策になります。たとえば、

「成功とは言えないけれど、良い部分もたくさんあった」
「今回はうまくいかなかったけれど、それで次もだめという確証はない」
「今回足りていない部分が見えたことは収穫だ」

のような発想を子どもたちに伝えていく形です。
物事を0か100かと二極で捉えるのではなく、その間合いにあることやいい部分を拾って言語化することは、お子さんの物の捉え方のみならず、自分自身のメントレにも役立ちますので、ぜひ意識してみてください。

以上、子どものストレスへの向き合い方をお伝えしてきましたが、その子の気質やこれまで育ってきた環境のバランスでストレスの感じ方は百人百様ですので、当てはまる部分もあればそうでない部分もあったかもしれません。役立ちそうなところから、ぜひ取り入れてみてください。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

  • twitter
  • はてなブックマーク
  • LINE

関連記事

新着記事