公開 / 更新
学び

東日本大震災から10年。絵本で防災意識を親子で高めよう

東日本大震災から10年。絵本で防災意識を親子で高めよう

2021年の3月11日。東日本大震災から10年の節目となる今、改めて防災について親子で考えてみませんか。そこで、地震や台風、火事など災害をテーマにした話題の絵本を編集部で厳選してご紹介します。

さらに、子育て心理のプロに聞く「ニュースや絵本を怖がってしまう子への正しい伝え方」や、『子連れ災害BOOK』の著者に聞いた「防災意識を高めるために、今すべきこと」も必見です!

日経DUAL記事

親子で読みたい!防災意識が高められる絵本8選

◆「はしれ、上へ! つなみてんでんこ」対象年齢:6歳~
文:指田和 絵:伊藤秀男  出版社:ポプラ社

東日本大震災が発生した3月11日、襲ってきた大津波からみんなで生き延びた釜石市の小・中学生たちの実話を描いた絵本。あの日の様子が子どもたちの会話や迫力ある挿絵から伝わってきます。「つなみてんでんこ」とは、昔から津波におそわれてきた東北地方の沿岸部に伝わる言葉。「てんでんこ」は「てんでんばらばらに」の意味で、津波の際は「人にかまわず必死で逃げろ」、つまり「自分の命は自分で守れ」という意味があります。後世にも残していきたい大切な言葉です。

◆「おじいちゃん」 対象年齢:小学生~
作・絵:梅田俊作、梅田佳子 出版社:ポプラ社

「おじいちゃんがしんだ」という主人公のぼくの言葉で始まるストーリー。「しぬって、どういうことなんだろう」。子どものとき、一度は誰もが考えたことがあるのではないでしょうか。大好きなおじいちゃんに教えてもらったこと、一緒に体験したこと…たくさんの思い出を愛犬のタロとめぐりながら、徐々におじいちゃんの死を受け入れていくぼくの姿が描かれています。死という悲しいテーマながら、物語にマッチした繊細でやさしい絵が、あたたかい気持ちにさせてくれる1冊です。

◆「じしんのえほん こんなとき どうするの?」 対象年齢:幼児~
作:国崎信江 絵:福田岩緒 監修:目黒公郎 出版社:ポプラ社

小学校1年生の子どもたちの目線で、下校の途中、家の中、スーパーでの買い物中、教室にいるときなど、さまざまなシチュエーションで地震にあった際の対処方法がわかりやすく描かれています。日常が描かれたページをめくると地震時の絵に変わるので、何が(どこが)危険かを確認でき、適切な行動の仕方を確認することができます。知っていると知らないとでは、いざというときに大きな差が出ます。親子で確認しながら読むことをオススメします。

◆「さいがいで かつやくする くるま」 対象年齢:3歳~
作:こわせ もりやす  出版社:偕成社(3月5日発売)

車の「前面」「背面」、そして「横面」や車と働く人をばっちり見られる「まえとうしろ どんなくるま?」シリーズの4巻目。今回は、災害がおこったときにかけつけて、困った人たちを助けてくれる車をご紹介。救助工作車、中型水陸両用車(レッド・バスティオン)、スーパーアンビュランス(特殊救急車)など、子どもたちが夢中になるような車が続々と登場します。子どもたちが大好きなのりものから、災害について関心を抱くきっかけを作ってみてはいかがでしょう?

◆「たいふう どうするの?」 対象年齢:幼児~
絵:せべまさゆき  監修:国崎信江  編著:WILLこども知育研究所  出版社:金の星社

子どもの身のまわりで起きる災害や犯罪、危険なことから、自分で自分の身を守る方法を学ぶ、防災・防犯の知識絵本シリーズの台風編。わかりやすくよみやすい文章とキュートなイラストで、台風をはじめとした天候による災害について描かれています。避難する際に必要なアイテムも描かれているので、お子さんといっしょに防災リュックを準備してみるのもよいのではないでしょうか。巻末には大人向けの解説もついています。

◆「はなちゃんの はやあるき はやあるき」 対象年齢:幼児~
作:宇部京子  絵:菅野博子  出版社:岩崎書店

東日本大震災の際、「奇跡の脱出」でニュースにもなった、岩手県野田村保育所で起こった実話をもとにした絵本。ふだんから月に1度、早歩きで高台に避難する訓練を重ねていた子どもたち。だからこそあの日も、誰も泣かずグズらず、黙って高台までの長い距離を歩き続け、園児90名が無事避難できたのです。「自分を自分で守るのですよ!」という園長先生の言葉も心に響きます。日々の備えや防災に対する意識の高さが大切だと思える1冊です。

◆「地震がおきたら」 対象年齢:小学校低学年~中学年
原案:谷敏行 文:畑中弘子 絵:かなざわまゆこ 企画・協力:神戸市消防局
出版社:BL出版

神戸市消防局の企画・協力で作られた防災絵本。1995年に起きた阪神・淡路大震災の教訓が具体的に盛り込まれ、地震が起きたとき、何がいちばん大事なのかを、わかりやすく教えてくれます。親子の会話でお話が進み、最後には家族で地図を広げて、危ないところがないかを確認したり、連絡方法・防災グッズを確認したりという場面まで描かれています。巻末には「家族を守る防災知識」と題して、神戸市消防局から伝えたいことが、具体的な資料などとともに6ページに渡ってまとめられています。

◆「手紙 お母さんへ」 対象年齢:小学生~
文:堀川貴子 絵:堀川文夫/他 自主出版にて制作
問い合わせ先:堀川文夫(090-2847-9305)

福島県浪江町で塾を経営していた堀川さんご夫妻。東日本大震災と原発事故の二重の災害により、故郷を理不尽に奪われてしまいました。本書では事故当時の様子や避難生活、静岡へ移住してからのことが、愛犬・桃(2012年にガンで他界)の目線で綴られています。色鉛筆、絵の具、クレヨンなど見開きごとに画風が違うのは。夫妻や息子、孫に加え、塾の卒業生が散り散りになった各避難先から描き上げたため。震災、そして原発事故の記憶を風化させないためにも、親子で読んで欲しい1冊です。

心理学のプロが解説!「ニュースや絵本を怖がってしまう子への正しい伝え方」

「絵本やニュースを見て過度に怖がってしまわないか心配……」。そんなママたちに向けて、公認心理師の佐藤めぐみさんに、怖がりなお子さんへの正しい伝え方や関わり方についてアドバイスいただきました。

子どもそれぞれ感じ方は違うため、同じニュース、同じ絵本でも、怖がる子もいればそうでない子もいます。いったん「怖い」と思ってしまうと、それを引きずりがちなのが恐怖心の特徴なので、「うちの子は怖がりかも」と感じている場合は、前もって配慮することも大切です。

一般的に子どもたちは、言葉よりも、映像や画像で恐怖を感じやすいものです。ニュースの内容よりも、そこに流れる生々しい映像や音の大きさにびっくりしてしまうことが多いので、怖がりの傾向がみられる場合は、ニュースをつけたままにするのは避けた方がいいでしょう。

一方で、自然災害の多い日本に住んでいる以上、防災意識というのはとても大切です。“正しく怖がる知識”はその場での動きにつながりますので、実用的な防災対策の絵本からスタートするのはいいアイデアだと思います。怖い映像だけが心に刻まれるという状態を避けつつ、“正しく怖がる知識”を伝えていきましょう。

子連れ防災の専門家に聞く!「防災意識を高めるために今すべきこと」

最後に、みずから考えて動く「アクティブ防災」を提唱し、子連れ防災に関連した著書も出されている、子連れ防災のプロ「NPO法人ママプラグ」(https://web-mamaplug.com)理事の宮丸みゆきさんに、防災意識を高めるために今するべきことについて伺いました。


宮丸みゆきさん
NPO法人MAMA-PLUG 理事・アクティブ防災®事業副代表。自治会での自治会長および自主防災会会長や、幼稚園でのPTA防災委員長を経て、ママプラグ アクティブ防災®ファシリテーターとしての活動を開始。3児の母。

 

__「アクティブ防災事業」を立ち上げた経緯を教えてください。

東日本大震災の体験談をもとに、家族の視点で考え、「取り組みやすい、やってみたくなる防災」を広めたいという思いで「アクティブ防災」を立ち上げました。大切だとわかっていながら、重い腰をあげることができない防災について、「楽しく学び、賢く備え、自分で考え行動できる防災を!」をモットーに、それぞれのライフスタイルを考慮したオーダーメイド防災を提案しています。

__「子連れ防災BOOK -1223人の被災ママパパと作りました」(祥伝社)の見どころをお願いします

ここ数年、地震や噴火、台風や大雪など災害は多様化しています。それぞれの災害によって特徴や対策・避難方法が様々ですが、「どんな災害にも共通すること」というものもあります。

【どんな災害にも共通すること】

その1 ふだん当たり前のものがなくなる

地震のあと、停電してテレビが見られなくなった。不安の中、ラジオやネットの情報を頼りに、ろうそく1本で過ごした(北海道胆振東部地震・34歳女性・娘9歳・息子2歳)

その2 子ども一人でも頑張れる訓練が必要

「下校して家に帰ってきていた子どもが、テーブルの下で危険がないようにして待っていた。日頃から防災訓練をしていてよかったと思った」(東日本大震災・36歳女性・息子7歳)

その3 事前の確認をしっかりと!

「懐中電灯を買っていたのに、どこに置いたのかわからず、モノが散乱した部屋の中で探し出すのに一苦労だった」(東日本大震災・30歳女性・娘4歳)

こうした災害の体験談をもとに、どんな災害が起きても自分で判断し行動する力をつけられるよう、具体例をもとに自分ごととしてイメージしやすい「家族のための防災本」をつくりたい、という思いで制作しました。読者からは「読んでおしまいではなく、実際に行動を起こせた」という声がたくさん届いています。

__防災について、改めて親子で話しあっておくといいこととは?

家族の安否がわからない時間はとても不安で怖いものです。普段から外出する時の「行き先」「時間」「誰といるか」の情報は共有しておくことが大切です。また、いざというときの連絡方法や落ち合う場所についてもきちんと具体的に決めておきましょう。

__あれもこれも入れると避難リュックがパンパン。最低限用意しておくべきものとは?

自分が絶対に無いと困るもの、手に入りにくいものから優先して入れましょう。なかなかイメージ出来ない場合はちょっと不便な場所に旅行に行くことを考えて準備してみるといいかもしれません。どうしても荷物が多くなってしまう場合は避難リュックを登山用などの高機能なものにすると、容量も大きく、重さを感じにくくなるのでおすすめです。

__スマホに入れておくといい「防災アプリ」がありましたら教えてください

お住いの自治体の防災サイトやアプリは大切な情報源になるので登録しておきましょう。その他、「NHKニュース防災」や「YAHOO!防災速報」などもおすすめです。自分で使いやすいものをいくつか選んで登録しておくと安心です。

__最後に、ママたちに、防災に関するメッセージをお願いします

災害時は「命」を守ること、避難生活では「心身の健康」を守ることがとても大切です。でも災害時だから特別なのではなく、子どもの安全や健康は普段から意識して生活しているはず。防災を「特別なこと」と考えすぎず、日常の一部と捉えて普段の生活から災害に強いライフスタイルを過ごしてほしいと思います。

またお子さん自らが生きる力を備えられるような教育を普段からしておくことも大切です。アウトドア体験をする、公衆電話や和式トイレを使えるようにするなど、できることを楽しみながらやってみましょう。

著者プロフィール

女性誌やママ雑誌などを中心に活動するフリーランスのエディター&ライター。育児系の記事から美容企画、タレント取材まで幅広く手がける。6歳・4歳・2歳の三姉妹の母。

  • twitter
  • はてなブックマーク
  • LINE

関連記事

新着記事