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進路や将来への分かれ道は13歳!イギリスの子どもたちの進路を決める「中等教育終了テスト」とは?

進路や将来への分かれ道は13歳!イギリスの子どもたちの進路を決める「中等教育終了テスト」とは?

イギリスのイングランドでは小学校を卒業したら日本の中学校に当たる「セカンダリースクール」に入学し、11歳から16歳まで学びます。

中等教育終了テスト「General Certificate of Secondary Education (GCSE)」 によって義務教育が終了しますが、その前に13歳になると自分の将来に向けて必要となる科目を選択することを迫られます。

関心がない科目は13歳で学習を終了できるメリットと、そこで科目を選び間違えると取り返しがつかなくなるデメリットとの両面から、進路選択の分かれ道であるイングランドの中等教育終了テスト「GCSE」を紹介します。

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「GCSE」に向けて幅広い選択肢から興味がある科目を自分で選ぶ

連合王国であるイギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4国で構成されていますが、それぞれ独自の教育システムがあって少しずつ違います。

イングランドでは学年数をイヤー(Year)で表わしていて、義務教育期間の最後の学年に当たるイヤー11(16歳)の最終学期末に全国統一テスト「GCSE」が行われます。この結果は進学や就職の判断材料になる大切なものです。

必修科目の国語、数学、理科はGCSEテストまで学ぶことが決まっていますが、そのほかに平均3~4科目をGCSEテストのために自分で選択します。不得意な科目や嫌いな科目は選択しなくて構わないものの、進学や将来にかかわってくる「科目の選択」を13歳の時点で迫られることになるのです。

選択できる科目は幅広く、日本語を含む18カ国の外国語や、宗教学、天文学、音楽からダンスまでさまざまな科目があります。ラテン語などの古語を含む語学や、地理、歴史も選択科目です。

そのほかに、美術、技術家庭科、音楽といったクリエイティブ科目のなかから1科目選択することが一般的になっています。

選択したあと、それら科目のGCSEテストに向けて2年間学ぶことになります。文系の生徒は記述式の論文が中心で、理系の生徒は理科を物理、化学、生物に分けて勉強します。勉強が得意でなかったり芸術系を好んだりする子どもは、クリエイティブ系の科目を中心に学ぶようです。

いったん選び間違えると高等教育では学べないというデメリット

イヤー11の最終学期末にGCSEテストを受けたあと、大学進学希望者は2年後にさらに高等教育終了テスト「General Certificate of Education Advanced Level(A Level)」を受けて進学するのが一般的です。

ただ、GCSEテストで選択しなかった科目は、次のA Levelテストで選択することはできません。従って、13歳のときに興味がなかった科目について2年の間に気持ちが変わったとしても、その科目を高等教育では選べないのです。

ただ、わずか13歳で自分の将来や大学の専攻を考えて科目を選択することは、そう簡単ではありません。学校側もその点は理解しているので、友人の選択や先生の好き嫌いで科目を選んではいけないと念を押します。

しかし、時間割の関係があったり将来の可能性が見えなかったりする子どものなかには、科目の選択を間違えてしまいあとで後悔するケースもあります。

地方にある学校やレベルがそう高くない学校では3~8科目、進学校や国立、私立の人気校の場合は10科目程度を、子どもたちはGCSEに向けて2年間かけて勉強します。なかには3つのテストが必要な科目もあるのですが、GCSEの全科目のテストを6月中の数週間で受けなければならないためかなり大変です。

科目ごとに家庭教師をつけて試験に備える富裕層も多い

現実的に英国ではまだ“階級制社会”の名残があり、GCSEテストの結果にはそれが現われているといえます。

国立校や有名私立校ではほぼ全員が上位の成績をとりますが、低所得者層が住む地域では初めから成績目標が低いなどの理由もあって、なかなかよい成績をとることはできないのが実情です。

階級制社会という歴史的背景もあってか、富裕層の多くは上位の成績をとらせるために子どもに家庭教師をつけています。GCSEテストの全科目それぞれに家庭教師がいる子どもも、珍しくありません。

有名校に在籍していてもなかには成績レベルが低い子どももいるため、高得点をとるための情報やテクニックを有するこういった家庭教師は需要が高いのです。

入学後の授業についても、生徒をサポートしてくれる学校ばかりではありません。選抜式の進学校でも授業についてくるのは生徒と責任とされているため、遅れてしまった生徒には家庭教師をつけるように学校からいわれます。そのため受験のあとも、そのまま家庭教師のサポートを受ける生徒も多いようです。

まとめ

学校や子どもにもよりますが、イングランドではどの科目であってもGCSEテストを早期受験することが可能です。多国籍の人が住むロンドンではバイリンガルの生徒も多く、賛否両論はあるものの、とくに語学テストの前倒し受験は珍しくありません。

また、興味のない科目を終了できる年齢が13歳ということについては、ネットでいくらでも情報を入手できる現代では遅過ぎると感じる人もいるようです。一方で、13歳で自分の進学先や将来を考えて科目を選択するのは時期尚早との議論もあり、義務教育についての考え方はさまざまといえるでしょう。

ちなみに2020年のGCSEテストは新型コロナウィルスの影響で中止となりましたが、これを機に将来はネットを活用した試験へと移行する可能性もあるかもしれません。

執筆者/かなこ

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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