慶應義塾大学 中室牧子教授、TOMAS 伊藤輝明先生、伸芽会 大久保太郎先生が3分野で解説!「わが子に贈る最高の教育とは」

慶應義塾大学 中室牧子教授、TOMAS 伊藤輝明先生、伸芽会 大久保太郎先生が3分野で解説!「わが子に贈る最高の教育とは」

伸芽会の人気子育てセミナー。今回のテーマは「わが子に贈る最高の教育」です。

第一部は、『学力の経済学』の著書である中室牧子先生による「教育に科学的根拠を~子どもにとってよりよい教育とは~」、第二部はTOMASの伊藤輝明先生による「これからの時代を生き抜くために必要な力と中学受験・大学入試制度」、第三部は伸芽会教育研究所の大久保太郎先生による「私立・国立・公立小学校の現状と伸芽会の幼小一貫教育」。どれも子育て中のママ&パパに刺さるワードが盛りだくさんでした。

第1部慶應義塾大学総合政策学部教授である中室牧子先生による「教育に科学的根拠を~子どもにとってよりよい教育とは~」からスタート。経済学は非常に客観的に分析をしているので、それを教育にも用いようというのが中室先生のコンセプトです。

日経DUAL記事

例外的な出来事を真似しても再現性は少ない!

注意すべきは、「東大に合格したママの子育て法といった例外的な出来事は再現性が少ない」ということ。そこで私たちは科学的データやエビデンス、ビッグデータの中から観察される規則性に注目して研究しています。

友人の元オリンピック選手である為末大さんは、『ボルトの真似をしてもボルトになれないし、偏平足はオリンピックに出られるといった特殊な個人の経験は偶然に過ぎない』とおっしゃっていました。教育においても同じことが言えると思います。

日本では、子ども手当、ゆとり教育、英語の入試と、いきなり全国展開し、効果がよくわからないままに政策が中止になったりすることが多いと感じます。まずは小規模からスタートさせて、科学的根拠に基づいてきちんと効果を測っていくべきです。

エビデンスに基づく受験と教育のヒント

中室先生は、実際にエビデンスに基づく受験の例をいくつかご紹介してくださいました。

その1 第一志望の最下位で入るよりも第二志望の1位の方が、その後有利である

偏差値の高い学校に受かって優秀な友人たちに良い影響を受けて、わが子も高めてほしいもの。ですが、実際、子どもは自分とよく似た価値観(容姿、学力含む)の人を友達に選ぶことが分かっています。

進学校では1年1学期の成績が最下位だと卒業まで最下位な子も多いと言います。一方で進学校の分析によると入試の成績と入学後1年1学期の成績の相関はないこともわかってきました。

結局、我々大人は、わが子に「自分の能力を過小評価せず、受験はゴールではない」と励ましていくことが、使命なのではないでしょうか。

その2 別学、共学は、学力だけなら男女別学がいい

近年は共学化の動きもあり、全国的に見ても圧倒的に少ない別学校。とはいえ東大進学率上位校は主に別学です。ただこれは優秀な生徒が別学に集まっているだけとも言えます。

ですが、受験が過熱する韓国で、近年、政府が大胆な制度変更を行い、高校進学先を抽選でランダムにした結果、別学の方がテストの点が高く、4年生大学への進学率も高いことがわかりました。

競争心は男子が圧倒的に高く、リスク回避度は女子が圧倒的に高いといった男女の差を理解した上で、よりよい環境を効果的に与えられるのは、男女別学校ならではなのかもしれません。

その3 幼児期の教育で重要なのは、非認知能力を鍛えること!

「質の高い幼児教育がその後の人生にどのような影響をもたらしたか」という1960年代から行われたペリー幼稚園プログラムという実験は有名です。

子どもの将来の成功に影響している能力は、IQテストや学力テストのような認知能力よりも、意欲や自制心などの非認知能力であったことが明らかになっています。

近年では、アメリカ・シカゴで2010年に始まった壮大な実験があります。10億円をかけて実験用の3つの幼稚園(認知型、非認知型、保護者のための幼稚園)で、何が最も幼児期の教育上重要かを調査するためです。

まだ結論は出ていませんが、10年経過した現段階では、非認知型幼稚園が最も効果が高いことが分かってきています。

入試も変わる今、これからは「自分で考えて答えを見つけられる子」、「失敗から学べる子」が勝つ!

続いて第二部は、TOMAS入試対策本部の伊藤輝明先生による、「これからの時代を生き抜くために必要な力と中学受験・大学入試制度」。

これまで、たくさんの子どもたちを見てきて思うのは、小さい頃から積み重ねた習慣、自分への自信、勉強する意味、感覚の差は、非常に大きな学力の差を生んでいること

2020年度から英語が教科になり、2021年から大学入試共通テストが先行実施され、中学の英語は英語での授業になり、2025年からは大学入試が本格的に変わります。

これからの時代で求められるのは、思考力、判断力、表現力であり、「教わってないからできない子」ではなく、「自分で考えて答えを見つけられる子」、「失敗から学べる子」です。

今までの勉強には必ず答えがありました。テストの解答欄も答えを書くだけのものが多かったですよね。でも世の中の常識はどんどん変わっています。5年後、10年後どう変わっていくかは誰にもわかりません。仕事もそうです。ですから、新しいことを考えてくれる子どもたち、グローバルな視野で未解決の問題に取り組む人材が日本には必要不可欠なんです。大学や就職先も海外が当たり前の時代になるでしょう。21世紀後半を担うのは私たちの子だということを忘れてはいけません。

私学の学びがなぜ、支持され続けているのか

最後は、伸芽会教育研究所研究員の大久保太郎先生による、「私立・国立・公立小学校の現状と伸芽会の幼小一貫教育」について。

教育改革のきっかけは社会の変化です。経済状況が変わり、昔のような価値観が通用しなくなりました。知らないことはググって、友達とはSNSでつながる時代です。何を、どのように生み出すかクリエイティブ性が問われるようになりました。

学習も話を聞くだけの受け身のものではなく、能動的に考える学習がアクティブラーニングの鍵となります。ポイントは、主体性、双方向性、発展性です。私学にはそれぞれの理念や取り組みがあり、特色あるアクティブラーニングはもちろん、自分と向き合う機会や心の成長にも積極的に取り組んでいます。

ここでは、4つの私学を例にご紹介しましょう。

東京農業大学稲花(とうか)小学校(世田谷区)

2019年に設立された新設校です。多様な体験と表現する学びを重視しており、英語の取り組みも高く、1年生からネイティブ講師の授業が毎日あります。授業だけではなく、休み時間や給食にもネイティブ講師と交流できるのが特徴です。

東京女学館小学校(渋谷区)

女子校の特性を生かしながら、国際社会で活躍できるリーダーの資質を備えた女性の育成を目指す一貫校です。「すずかけ」、「つばさ」、「国際理解」が3本の柱です。中高はインクルーシブ(包括的)なリーダーシップ教育を掲げています。

暁星小学校(千代田区)

「鍛える教育」を掲げる男子校で、サッカーにも力を入れています。また、セカンドスクールといって2年生から行われる年2回の那須合宿では、土に触れ大自然で思い切り遊び、共同体の意識や社会性や忍耐力、奉仕の心を育成していきます。試験では、自制心や我慢も大事なキーワードになっています。

青山学院初等部(港区)

共学の人気校のひとつです。6年間で40泊(6年生は船で8泊)という宿泊行事に力をいれており、協力して生活しやり遂げる力、責任を学びます。

また、通知表がないのも大きな特徴です。到達度を結果だけで判断するのではなく、成長の記録という書面で毎学期ごとに3者面談をして家庭と共有していきます。ICT教育も盛んで、発表や意見交換も積極的にタブレットで行っています。

伸芽会の考える幼小一貫教育とは

伸芽会が掲げる3つの理念「想像力、体験力、自助力教育」。これは、ただペーパー問題を解いて正解を出すのではなく、本物に触れる体験を通して、自分なりの解決策を育成する教育です

たとえば、新年長クラスの野菜や果物の断面を知る授業では、リンゴ、柿、ミカン、ピーマン、レンコン、たまねぎを実際に切って見せていきます。意図としては、本物を見て覚えさせるのではなく、「リンゴはいい匂いがした」、「たまねぎで涙が出ていた」という印象をつけるためです。もちろん「自分でもやってみたい」と言う気持ちも沸いてくるでしょう。

また、授業では発表や発言の場を大事にしています。4~5歳の新年長さんにとっては、自己紹介も難しい時期です。客観的事実(誕生日や保育園名など)は言えますが、「好きな遊びを教えて」といった主観を交えた問いになると、自信がないのです。

こうした人前での発表を何度も繰り返し、周りの子も一緒に考えることが自助力教育です。他にも、受験のヒントは生活の中にたくさんあり、「コツコツと生活の基本をやること」が何よりも大切になってくるのです。

受験はゴールではありません。伸芽会も私学も、人格形成の土台を形成する大事な幼少期に、お子さんたちに自分で考える力、解決する力、自立する力を身につけて、これからの時代を担う子に育ってほしいと考えているのです。

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SHINGA FARM(シンガファーム)編集部です。ママ・パパに役立つ子育て、教育に関する情報を発信していきます!
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