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小学校受検 過去問の効果的な活用法とは

小学校受検 過去問の効果的な活用法とは

小学校受検にも過去問は存在します。でも中学受験や高校受験の過去問とはちょっと違う点が……。そこで、毎年過去問題集を制作している伸芽会で幼児教育歴42年の牛窪先生に、過去問をいつから、どんな風に使うといいか、効果的な活用法をお聞きしました。

日経DUAL記事

小学校受験の過去問は子どもたちの聞き取りで作成している!?

__伸芽会では「有名小学校別過去入試問題集」を毎年出版されていますが、過去問はどこも子どもたちへの聞き取りで作っているって本当ですか?

最近では学校側が試験問題をHPで公表しているところもありますが、中学校のように学校側が過去問を販売していません。ですから、試験問題を再現するために、試験の帰りに教室に寄ってもらって子どもたちからどんな問題が出たかを聞き取って制作しています。毎年都内の試験日は大変な慌ただしさになります。

__6歳の子たちが試験問題を覚えてくるのですか!?

メモもない状態の幼児から問題を聞き取るのは至難の業です。子どもたちは試験を複数校受けてごちゃまぜになっていることもよくありますから(笑)。そこは聞き取り専門のベテランの先生の腕の見せ所ですね。とはいえ、幼児の記憶力はものすごいので、試験問題の「お話の記憶」など、そのままテープで録音したいくらいのクオリティの子もいます。

過去問はいつ買えばいいか

__過去問はいつ買えばいいですか?

親御さんの参考資料用であれば、どれだけ早くてもかまいませんが、遅くとも年長の4月には志望校の過去問を購入して一通り目を通しておくのがおすすめです。

また、注意したいのが「志望校を1つだけに絞ると失敗しやすい」とういことです。小学校受験は総合力がポイントになってきますから、「うちは慶應義塾幼稚舎だからペーパー対策をしなくていい」とか「第一志望ではこういう単元はでないからやらない」では危険ということです。ペーパーテストは親御さんが想像するより遥かに決断力がいるので、たとえペーパーテストがない学校でも、対策をしていくことで問題解決力が養われていくのです。

親がチェックするポイントは?

__過去問を買ったら何を見ればいのでしょうか?

志望校の過去問を何年間か見ていくと、協調性、想像力、瞬発力……などとその学校側の「求める子ども」が見えてきます。

企業が「新たにこういう人材が欲しい」と弱い分野を補強するのと同様に、学校も節目節目で「ここをもっと強化したいから、この分野ができる子を取ろう」といった変更点が出てきます。

また、過去問で難しい問題を見た時に、「解くための解法を覚えさせる」のではなくて、「どうしてこういう問題を出しているのだろう?」と考えることが大切です。

たとえば、折り紙を何十回も折るという課題がでたときに、「この問題ができるために巧緻性を強化しなきゃ」は勿論大切ですが、それだけでは陸上競技等と同じです。そうではなくて、「無理難題が出たときの取り組み方を見ているのだな」と考えられれば、対処法も変わってきます。この場合は、周りをちらちら見る子と集中してもくもくとチャレンジする子、どちらが良いかという考え方になってきますよね。

いつから使えばいい? 過去問に取り組む時期の目安

__いつから取り組めばいいですか?

過去問は毎年アップデートされますが、本来この問題は年長の11月の試験で解けるようになっていればいいのです。つまり、入試1年前の年中の秋にやっても解けるわけはないということです。年中の11月から年長の秋までの1年間での伸びは、目を見張るものがあります。

伸芽会のプリントも年中の11月と年長の8月では、その密度も倍くらいになっております。親御さんは「入試本番に解けるようになればいい」という余裕を持ったレベル感で、成長を踏まえて見ていくことが重要です。

また、過去問に取り組む時期の目安としては、たとえば年長になって日常生活の中で近所にお遣いを頼んで一人でできるかどうか(もちろん家の中のお手伝いでもOK)。目の前のことを自分で解決する力やその習慣があれば過去問にチャレンジしても良いでしょう。とはいえ、大抵の子は過去問を早い時期から見せてしまうと、「うわーむずかしそう、やりたくない」となりがちなので、モチベーションができていない状態で早く見せるのは注意しましょう。

解けない問題は易しい問題集まで振りかえろう

__通常の問題集と過去問をどのように使い分ければいいですか?

伸芽会でも分野別の問題集「ステップナビ」がありますが、こうした分野別の問題集は苦手分野の克服など日々の演習に最適です。そんな日々の家庭学習でとても重要になってくるのが、「分野別と段階別で徐々に試していくこと」。

子どもの学習定着度を「階段」でイメージしてみましょう。小学校3~4年生以上であれば上ってきた階段がしっかりと残っていますが、幼児の場合は、振り返ると登ってきた階段が消えています。つまり、過去にできた問題ができなくなることは当たり前ということ。ですから、『幼児の場合は駆け下りて足場を踏み固めて、また上っていく作業』の繰り返しがとっても大事なのです。

もし、過去問で解けない問題が出てきたら、簡単な問題集まで振りかえって、どこまで理解できているのか確認してみてください。伸芽会でも、一年間のカリキュラムは易→難、易→難、を繰り返し、夏休みの学習が最も難易度が高く、直前期は易しい問題からを復習していくサイクルをとっています。「多くの幼児は、同じ内容を繰り返さないと定着しない」ということをお忘れなく。

過去問の効果的な使い方と残念な使い方

__過去問はどんな風に使っていけばいいですか?

学習にも運動と同様に全習法(ゲーム形式)と分習法(ある単元を重点的にやる)があります。日々の家庭学習で完璧主義を続けていると、試験本番で1問目が解けないと「もう嫌だ」と心が折れてしまう子がいます。もちろん、単元別の学習も大事ですが、リズムをつける実践ゲーム形式の練習も大切です。ですから、直前期になったら、1日の学習の中で何問か過去問を続けて解く全習法の割合を増やしていくことをお勧めします。

また、中学受験はテストで「漢字や計算からやろう」など自分で解く順番を決められますが、小学校受験の場合、試験は決まった順に進んでいくので、1問解けなかったからと引きずっている暇はありません。「できなくても次頑張ろう!」と気持ちを切り替え、試験の流れにのっていくか大切です。この「できなかったら次頑張る」という切り替えは、プリント学習だけで身につくものではなく、生活習慣やお友達との関わりの中で学んでいくものです。日々の遊びや園での集団生活、運動などでも集中力や切り替えを大事にしていきましょう。

__逆にNGな使い方があれば教えてください

過去問をせっかく解いても逆効果になってしまう使い方としては、
・できない問題ばかり繰り返してやらせる 
・やらせる時期が早すぎる
・偏った単元のみやらせる
・制限時間にこだわりすぎる

などが挙げられます。

試験で100点をとる必要は必ずしもありませんし、経済の法則でも言われますが、幼児にも「2:8の法則」が当てはまります。
基礎土台となる部分をしっかり身につけ、自分で活用できれば8割は解決できるはずです。

また、制限時間に関しても最初から意識しすぎる必要はありません。すでに制限時間内に対応できるお子さんは良いですが、のんびりマイペースな子には逆効果です。
大人でも目標がギリギリ達成できなければ「次頑張ろう」となりますが、半分も終わらなかったら、やる気は出ませんよね。

マイペースなお子さんの場合は、制限時間にこだわらず、例えば点図形であれば後1本線を引けば完成という時に「はい。残念でした。次頑張って!」とゲーム的に楽しく次に取り掛らせることで、本人が少しでもスピードアップする気持ちになってもらうことが大切です。

直前期は学習の開始時刻と終了時刻を決めてメリハリを

__直前期の家庭学習では、どんなことに意識すればいいでしょうか?

試験が近づいてくると、どうしても「なんでできないの!」と焦りがでてきますが、幼児において何かできないことは「ただ単にやる機会が少なかっただけ」であり、「楽しく繰り返せば定着する」ということを肝に銘じておきましょう。

不安な分野を詰め込みたくなる親御さんの気持ちもわかりますが、直前期こそ家庭学習の「開始時刻と終了時刻を決めること」をおすすめします。

開始時刻を守る→子どもとの約束
終了時刻を守る→親との約束

となります。たとえ調子がよくても延長せず、時間になったらピタッとやめるのです。ダラダラ勉強しても良いことはありません。時間内で学習することで、結果的に試験での集中力向上にもつながります。

さらに、日々の生活でも規則正しいメリハリを意識しましょう。
よく、「食事の様子と学習の様子は似ている」と言われますが、「いただきます」と「ごちそうさま」をしっかり言えて自主的に食べられる子は学習も効率よく終わるのです。

逆に好き嫌いが多く、テレビを見ながらダラダラと食べていたりして「お願いだからこれ食べてよ」と親御さんに言われているような子は、食事も学習も「やらされてる」感があります。食事も着がえも遊びも学習もメリハリや切り替えが大事なのです。

__小学校受検を控えた親御さんにメッセージを

試験本番まで2ヵ月をきったら、今から実力をつけるより、今持っている力を100%以上出せるメンタルケアを意識しましょう。開始時刻と終了時刻をしっかり守る。規則正しい生活を送る。あとはお子さんを信じて、焦らず、飽きずに、楽しく過ごしていきましょう。

著者プロフィール

SHINGA FARM(シンガファーム)編集部です。ママ・パパに役立つ子育て、教育に関する情報を発信していきます!
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