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小学校受験で「食育」に関する出題が多い理由

小学校受験で「食育」に関する出題が多い理由

「食事の様子を聞くと、その家庭の雰囲気がわかる」といいます。実際に、小学校入試でも、面接や行動観察で食育に関する問題が多く出題されています。そこで、小学校受験で問われる食育の課題や学校側が見たい理想の食卓、さらに、家庭で意識したい食育などについて、伸芽会の麻生先生にお話を伺いました。

日経DUAL記事

小学校における食育の位置付けについて

__なぜ、小学校受験では食育に関する問題が多いのですか?
食事には、栄養を摂る生理的な面と「おいしそう!」「きれい!」といった心理的・情操教育の面、さらにマナーなどの教育的な面があると考えています。学校側はこれらのことを、その学校が大事にしているさまざまな視点で聞いてきます。
例えば、面接では「お母様が食育で気をつけることは何ですか?」
子どもには「嫌いな食べ物が出てきたらどうしますか?」など。

この場合、残さずなんでも食べる子に来てほしいというわけではなくて、学校側は、苦手なものに対しても克服する努力をしているかであったり、お子さんの体を作る基本としての食事を大切に考えているかといった食を通した愛情を知るための質問と言えるのです。

何を食べるかだけではなく、誰と食べるかも重要!

__他にはどんなことを聞かれますか?
最近では何を食べるかに加えて、「おうちでは誰と食事をしますか?」という質問もよく聞かれるようになりました。これは、共働きの家庭が増えたことで、より家族がバラバラに食事をする“孤食”が増えているためです。小学校高学年になると、塾や習い事で夕飯を食べる時間が遅くバラバラになることも多くなりますが、せめて幼児期の間は、家族で食卓を囲んで食事をとる時間の密度も大事にしてほしい、と学校側は考えているのです。なぜなら、あるアメリカの研究では、食事を1人と家族で食事をする場合、家族で食事をする子の方が、将来心が安定したまま成長できる率が低いというデータも出ていますし、幼児期は食卓を囲むことで得られるメリットが多いと考えるからです。

とはいえ、30代40代の働き盛りの親御さんは、帰りも遅く、夕食を一緒に食べるのは難しいという方もいらっしゃると思います。その場合は、朝ご飯は家族そろって一緒に食べたり、週末だけは家族で食べる、というのでも全く問題ありません。

学校側は、どんなにいいものや手の込んだ食事を食べているかではなくて、家族での食事の時間を大事にしている温かい雰囲気の家庭であるかが知りたいのです。
テレビを見ながら個々で食べたいものや食べられるものだけを出すのではなくて、同じものを一緒に食べたり、大皿料理を取り分けたり、その日あったことを話題にするといった楽しい食卓の時間は、ぜひ心掛けてほしいですね。

__大皿料理も食育になるのですか?
最近では、洗い物を少なくするワンプレート料理をされるご家庭もあると思います。もちろん、それ自体を否定するわけではないのですが、食育という観点からすると、たまには大皿から取り分ける料理もしてあげてほしいですね。理由としては、大皿から自分で食べられる量を取ったり、バランスよく盛り付ける経験は学校給食の配膳にも役立ちますし、家族のために取り分けることで、「美味しそうなものを妹にあげよう」「この野菜はママが好きだから多めに入れてあげよう」といった譲る経験も増やせます。食事を通して家族の好みがわかることはとても大きいのです。もちろん、「今日は、パパはお仕事を頑張って遅いから、後で食べられるように取っておいてあげよう」という思いやりの気持ちも育めます。

食卓を囲むこことは、「おいしいね」の共有でもあります。これは大人が側にいないと教えてあげられないことですし、食べ方や姿勢などいいお手本を見せるのが親の役目でもあるのです。

面接や行動観察で受かる子と落ちる子の受け答えの違い

__受かる子と落ちる子の受け答えの違いについて教えてください。
必ずしもこれを言えば正解、というものはありませんが、例えば以前、「お母さんのご飯で好きなものは?」と言う質問に「ズッキーニとかマッシュルームとか、お野菜がたくさん入ったオムレツ」という答えを用意していて、当日野菜の名前が出てこなくて何も答えられず不合格になってしまったお子さんがいました。
一方、「ラーメンです」と答えたお子さんでも、具材を聞かれて、チャーシューやねぎ、卵などまで答えられたお子さんは合格しています。

何が言いたいかというと、お母さんの得意料理はいくつか知っていて欲しいですが、その場で子どもが思いつきで答えることもよくありますから、どんな回答が来ても親御さんは動揺せず、普段通りの会話ができればいいのです。
学校側は質問を通して、親子のコミュニケーションを見ているのです。

お母さんだけでなく、「お父さんは料理をされるんですか?」という質問をした女子校もありました。そこである子が「カレーです。でも、あんまり美味しくありません」と答え、先生たちはその回答が可愛らしくて笑ったそうです。受け取った大人の思いとはウラハラに、その子は自分の答えが失敗したと思って、試験後に大泣きしたようですが、無事合格していました。
その素直さと、その答えを聞いていた親御さんが恥ずかしそうにしながらも、笑顔で対応されていたその雰囲気が良かったのだと思います。用意した回答ではなく、自然な受け答えでご家庭の雰囲気がしっかりと伝えられたのだと思います。

家庭で意識したい食育のポイント

__家庭でできる食育にはどんなものがありますか?
一緒に食べるだけが食育ではありません。一緒に作ることや、食事に関する絵本を読み聞かせすることも立派な食育です。図書館で日本の昔の食事、海外の食事に関する絵本を見たり、牛乳や大豆からできるものを調べたり、命をいただくことにも触れられるでしょう。
以前見た図書館の展示で「はらぺこあおむし」は、食べたものが体の一部になり、そのおかげで立派に成長していくというメッセージが込められていたり、「ぐりとぐら」では、自分も友達も一緒に食べてわけ与える幸せ、おいしさの共有が幸せにつながるメッセージが描かれていると知りました。食を通してお子さんが何を感じ、親御さんは何を伝えるか。あまり難しく考えすぎずに、今の食生活が当たり前ではないということに感謝できると素敵ですね。

__忙しい時には冷凍食品やお惣菜を使うこともあると思います。そんなときでもできる食育はありますか?
全部手作りは素晴らしいことですが、忙しい時は冷食を取り入れたりお惣菜を買ってきても全然いいと思います。その分親子の時間が増えると考えてみましょう。疲れて帰ってきてイライラしながら食事の準備をするなら、時にはチンしてゆとりを持つこともよいのではないでしょうか。ただ、チンしてパックのまま出すのではなくて、できればお皿に盛り付ける一手間はかけましょう。

さらに、ピザでも唐揚げでも買ってきたものを食べていたら、「おうちのと味が違うね。何が違うのかな? 今度手作りしてみようか!」と会話の材料にすれば立派な食育になります。

食事中のテレビについてはさまざまな見解があると思いますが、私は、食べながら見ることが上手にできる年齢であれば、有効活用できる番組であれば見ながらでもいいのかなと考えます。例えば、前に家族で旅行した場所の特集だったり、会話が弾むようなクイズ番組などは食事中の会話が増やせることもあります。ただし、それは学童期に入ってからです。
幼児ですと、「見る」「食べる」が同時にはなかなかできず、どちらかが止まります。たいていそれは「食べる」が止まります。幼児は、誤嚥につながってしまったり、咀しゃく回数が減ってしまったりしますから、年齢が下であるほど、食事の時のテレビは消して「食べる」ことに集中させてあげたいですね。

小学校受験における食育の重要性がお分かりいただけたでしょうか。「食事の様子を聞くと、その家庭の雰囲気がわかる」、ということをぜひ頭の隅に置いて過ごしていただければと思います。

著者プロフィール

SHINGA FARM(シンガファーム)編集部です。ママ・パパに役立つ子育て、教育に関する情報を発信していきます!
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