話題沸騰中!『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』 こど看さんインタビュー

話題沸騰中!『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』 こど看さんインタビュー

「児童精神科の病棟看護師」として、児童精神科に入院する子どもたちと10年間接してきたこど看さん。子どもと常に一緒にいる立場だからこそわかる、子どもの心の傷つきやすさと、傷ついてしまったあとの影響の大きさ、親としてできることなどを伺いました。著書の『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)は、子育て中の親御さんにぜひ読んでいただきたい一冊です。

こど看さん
児童精神科病棟勤務の精神科認定看護師。著書『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)も好評発売中。自身の経験を生かした子どもとの関わりを豊かにするコツを発信するSNSも、X(@kodokanchildpsy)フォロワー7万人、YouTube(http://bit.ly/3CWbIp5)登録者数は1.3万人と注目を集めている。

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子どもたちの精神疾患が増えている理由

__児童精神科の病棟看護師として長年勤務されるこど看さんですが、この10年で子どもたちの精神疾患は増えているのでしょうか?
うつ病、統合失調症、発達障害、摂食障害などの総数は増えていると思います。理由としては、この10年で発達障害や精神疾患への社会的認知度が高まったこともあり、精神科を受診する方が増えてきて、全体的に発見される数が増えているというのはあると思います。

__児童精神科に入院する子どもたちはどのような生活をしていますか?
みなさんが思われる以上に普通の生活です。朝起きてごはんを食べて病院内の学校に行き、帰ってきて宿題をしたり遊んだり話をしたり……。そうした日常生活を一緒に過ごして何気ないやりとりをしながら、子どもの心の声を聞き、心の傷に気づき、一緒に悩みながら課題解決の手がかりを見つけていくのが、私たち児童精神科の看護師の仕事です。通院と違って24時間見られるので、夜間の悩みなど親御さんと同じ視点で見ることができます。

__どんな子たちが入院してくるのでしょうか?
入院してくる子たちは、本当にさまざまです。家庭で養育環境が整わず児童相談所から一時保護された子、重度の知的障害の子、親御さんがお子さんを見るのに疲れてしまって一時的に距離を置くために入院する子……。入院の基本は3ヵ月程度ですが、生活が昼夜逆転して困っている場合なら1ヵ月程度の入院で済む場合もありますし、親御さんの負担軽減のレスパイトとして1週間入院するケースもあり、お子さんのケースによって期間はさまざまです。

精神科認定看護師が実践する関わり方「おすしさいこうかよ」とは?

__子どもと関わる際、どのようなことを意識していますか?
この本を執筆するにあたり、本を書いてから編集者の方に「子どもの傷つきやすいこころの守りかた」というタイトルをつけていただきました。ということは、結果的に僕が意識してきたのは子どもの心を傷つけない、というのがベースなんだと改めて気づくことができました。

この本では、子どもと接するときのキーワードとして「おすしさいこうかよ」(おびやかさない、すぐに助言しない、叱責しない、最後まで話を聞く、意見を軽視しない、子どもが使う言葉を使う、疑わずに一旦信じる、感情を否定しない、余計な一言を言わない)を掲げていますが、僕自身、最初からできたわけでも、いつもできているわけでもありません。「おすしさいこうかよ」を実践するには、子どもに集中して些細な変化に気づけなければいけませんから本当に大変です。何より、これらを実行するには、子どもとの信頼関係があってこそです。子どもは信頼関係がないと、薬も飲んでくれませんから。子どもは自分が大事にされているという信頼関係ができてから初めて、心の内を話してくれるのです。

__こど看さん流の子どもたちと信頼関係を深める会話術はありますか?
大人の失敗談は子どもをかなり勇気づけると思っていて、僕もかなり使っています。僕ら看護師は家族ではないので、子どもたちも最初は1枚2枚と壁があるのですが、そこを自分の失敗談や冗談を言っていくうちに「この人は看護師の前に人間なんだ」と認識されます。大人だって失敗するんだということは子どもたちをかなり勇気づけますから、親御さんもぜひお子さんにご自身の失敗談を話してあげてほしいですね。

子どもは大人の言葉の温度を敏感に感じるプロフェッショナル

__意外と大人が知らない「子どもの心」について教えてください
・子どもは大人の期待や言葉の温度を敏感に感じるプロフェッショナル
・大人の不機嫌が子どもをいい子にさせる

これらは子どもの心を理解する上で大事なキーワードなのですが、その理由をご説明しましょう。 大人はこれまでの経験から相手の言いたいことがなんとなくわかりますが、子どもたちはやり方がまだ分からないから、知ろうと頑張るんです。まして、身近な親に対しては特にセンサーが敏感だからこそ、強い言い方や変な言い方、機嫌に敏感に反応してしまうんです。

子どもの心の成長を育む上で前提となるのは、「ここは安全だという場所を増やすこと」「受け止めてあげる大人がいること」。その上で、真似したいと思う大人のロールモデルが身近にいるか、幼少期に異年齢の子と接する経験があるかもポイントです。
家と学校に居場所がなくて苦しい子、他の人がいるだけで怖い子もいます。彼らには自分を出せる場所がないのです。人に頼れないと、将来的にもの(アルコールやギャンブル)や薬など別の方法に頼る気持ちになってしまいます。まずは信頼、安心、安全を感じる場所がいくつあるかを改めて考えてあげてください。

子どもは自分の心の状態に名前が付けられない

__わが子の心の状態をチェックする目安はありますか?
改めて覚えておいていただきたいのが、傷つきやすい子どもの心を守れるのは保護者であるということです。SOSサインは本当にたくさんありますが、一例をあげるとするなら、
・子どもが笑えているか
・しょうもない話をできているか
・いつもと違う変化がある(増える・減る、強くなる・弱くなる)

というのがあります。とはいえ、通常状態がわからないと変化にも気づけませんから日ごろからよくお子さんを見ているかもポイントです。
また、子どもは「疲れ」「イライラ」など、自分の心の状態がよくわからない子も多いものです。大人だとイライラする、不安など感情にラベルをつけられるけど、子どもはうまくできません。原因を言葉にできないから、激しい行動に出たりする。
私はある子が疲れていそうに見えたら、「疲れてるね」ではなく、「疲れている感じに見えちゃったけど最近寝られてる?」と主観を入れて気遣いながらIメッセージで声掛けをするようにしています。イライラしてモノにあたる子には、まずは反抗してしまうほどの気持ちを何かの形で表現しようとしたんだなと受け止めます。気持ちが落ち着いたら、「やった行動はよくなかったよね。きみがケガをする可能性もあるし、他の子からも怖い子だと思われてしまうよ。どうすればいいか方法を一緒に考えてみよう」と振り返ります。

大事なのは、暴れたら話を聞いてくれると勘違いしないよう、言葉で伝えても伝わると学ぶこと。子どもがモノに八つ当たりするときは、大人が困ることをして、どうでるか試している可能性があるのです。

幼少期から自ら選んで、行動に責任が取れる練習を

__親が子どもを傷つけずにすむコツはありますか?
わが子にイライラするのは悪い感情ではありません。ただし、大人はそのイライラを言葉にせず心にとどめ、怒りをコントロールする必要があります。たとえば、親子で言い合いになっているとき、そのボルテージを下げられるのは大人の方です。子どもは怒りのボルテージもわからないですし、気づいても恥ずかしくなって自分が怒っていることを認めたくないものです。そんなときは、一旦お子さんから距離を置きましょう。別の部屋でもトイレでもいいので、自分の視界から外して「怒りの感情」を沈めましょう。そして、落ち着いたら、どうすればお子さんが怒りを自分でコントロールようになるか、一緒に話し合ってみてください。

親はわが子のことが常に心配だと思いますが、将来自立していくには、あれこれ介入せず、関心をむけつつある程度は放っておく(子どもに責任を返す)勇気も必要です。たとえば、絵を描くときに「何色がいいと思う?」と聞かれたら、肯定でも否定でもない最小限のうながし「うーん……」と返す。「〇〇君ならできると思うよ、自分で決めていいんだよ」と見守り、自分で色を選ぶ。たとえ失敗したとしても小さい時の失敗は、安全に責任を経験できる機会なのです。その積み重ねで、子どもは自尊心や自信を獲得し、自らの行動に責任が取れるようになるのです。

__最後に子育て中の読者の方々にメッセージをお願いします
子育て、毎日大変ですよね。本当にお疲れ様です。子どもは行動が予測できないし、親を心配にさせるプロです。でも実はその親御さんの不安や心配は子どもたちも敏感に感じているんです。子育ては「今日は優しくできない」と思っても仕方ないくらい大変なことなのですから、「もう無理」となる前に、メンタルクリニック、役所など第三者の相談できる人とつながっておくのは大事だと思います。また、子育てを「本人の人生を抱えた大仕事」と思わずに、「その子の人生の中に自分がいる」、「自分以外だと誰がいるか」と考えてみてください。大切なわが子に何か起きてからではなくて、信頼して相談できるチームを構築できるといいなと思います。

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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