対コロナ、長期戦に耐えうるマインドセットとは?

対コロナ、長期戦に耐えうるマインドセットとは?

世界で猛威を振るうコロナウイルス。日本でも緊急事態宣言が発令され、日々の行動が制限されています。分かってきたのは、長期戦になりそうだということ。そして、その間を耐えうるマインドセットが必要だということです。

私が住むコロナ禍のドイツで身近な人が教えてくれた言葉を引用し、長引くコロナ対策の中で、少しでも不安がやわらぐマインドセットをお伝えしていきます。

日経DUAL記事

感染が広まったドイツでの日々

4月上旬、日本では“自粛”という形だとどうしても外に出てしまう人が問題視されていて、「早く緊急事態宣言を!」という声が挙がっていましたが、ドイツも感染の爆発が起こるまではやはりそうでした。

しかし、いったん爆発が起これば状況が一変。外に出たら「感染するかも」という気持ちになるので、用もないのに外に出ようとは思えないというのが今のドイツです。学校の休校が続くのも、「大変だぁ」よりも、「ほっとした」。とても子どもを外に出そうとは思えない状況です。

ドイツは、3月22日から、接触制限といって、他者との接触を大きく制限する措置が取られています。たがいの距離が近くなることが感染のリスクを高めるということから、外に出る場合も、対人距離は1.5~2メートル以上、家族以外の人とは1人まで、と対人間の接触が極端に制限されています。

週に1回の買い物も、リスクを下げるため一人で行っており、もはやショッピングは楽しみという類ではなく、次週をつなぐための行動であり、混んでいる店は入店待ち、買い物時は手を守るためにビニール手袋をしています。

しかし、ここまでやっていても、市民が実感するほどの効果は感じられません。

こんな状況下のドイツですが、その中で学んだことも多く、長引くコロナ対策にはメンタルの強さが非常に大事だということも改めて感じています。ここ最近、周囲の人から見聞きして、「こういうマインドセットが大事」と感じたことがありましたので、それをまとめてご紹介していきます。

「新しいチャレンジだ」

今、世界中の子どもたちが休校という状況にあります。わが子がお世話になっている学校も、ドイツの他の学校と同様に3月半ばから休校になりました。

このような事態は、正直、現代の生活では想定していなかった出来事です。それにもかかわらず、この非常事態を、娘の学校の先生方は、「新たなチャレンジだ」と表現しました。子どもたちに、そういう前向きなメッセージを伝えてくれて、一人の親として本当にありがたく感じたのを覚えています。

休校措置が取られてから数日後、オンライン授業へと切り替わり、以降、Zoomというアプリを使って授業を続けてくれています。

もちろん、「アクセスできない」「アクセスしたけれど先生がいなかった」などなど、少々のトラブルはありますが、「大半はうまく行っている」とそちらの方に目を向けて、子どもたちを引っ張っていってくれています。

こういうとき、はじめから完璧にやろうとすると、「いや、できない」「ムリムリ」と逃げ腰になりますが、多少のトラブルはつきものだという姿勢だと前に進みやすくなるものです。

「できないこと、どうにもならないことを嘆いてもはじまらない」「こんな機会でもないとやれなかったことはきっとあるはず」と見方を変えることで前に進めることはたくさんあるのだということを気づかせてくれました。

「お水が出てありがたいね」

ドイツでもスーパーでの買い占めは起こり、消毒製品やせっけんなどはもちろん、トイレットペーパーや小麦粉などもずっと品薄が続いています。そんな「あれもない」「これもない」という日々の中で、娘が言ったのが「お水が出てありがたいね」という言葉。

たしかに、震災や台風などの被災地での状況に比べたら、なんてぜいたくなことを言っているんだということになります。

現代の便利な生活に慣れている私たちは、物にめぐまれすぎていて、ない中で暮らす経験が乏しいので、ちょっと何かが足りないだけで大騒ぎしてしまいがちです。「今週もトイレットペーパーを買えなかった~」と言っている私に、娘が、「トイレットペーパーが全部なくなっちゃったら、おしりを洗えば大丈夫だよ!」と。そうなんですよね。

お水があること、お湯が出ること、電気がつくこと、まだまだめぐまれていることはたくさんあります。こういうときこそ、ないものを欲しがるよりも、あるものを享受する気持ちが大切なのだと感じています。

「なんとかなるもんだ」

週1回、外に食料品を買いに行くだけの日々が続いています。買い物に行くときは、マスクとビニール手袋をして、1週間分の食料を買い込みます。

しかも、こんなご時世なので、買い物に行ったところで、ショッピングリストに書いていたものが必ずしもあるわけでもなく、あるものを買わせていただいている状態。しかし、「案外、なんとかなっている」とも思っています。

家にあるものだけで、なんとかレシピをつなぎ、手に入らなかったものは代用し、なんだかんだで1週間が過ぎるのです。

これまでの生活のムダに気づかされることも多い昨今。不要なものを買っていたり、行かなくていい買い物に行っていたり、と「お金のムダ」「時間のムダ」に気づけたのは今回の収穫で、確実にお金と時間をセーブできていると感じています。

心理学でもよく言われていますが、置かれた状況を心でどう捉えるかは、その人の気持ちや行動に直接影響を及ぼします。今回のような事態は、簡単にパニックにも陥る一方、「なんとかなる」と思えれば、実際になんとかなることは多いものです

自分の心で、事を大きくしないことは、こういうときこそ必要なストレスマネジメントと言えます

「終わったら○○しようね」

コロナ疲れという言葉も聞きますが、でも本当のカオスになってしまうと、「疲れた~」と言っていられないほどの現状があり、家族の免疫を落とさないように、ある程度の栄養が取れるように、と気を張ることになります。

飲食産業が閉鎖している中、家族全員分を三食作り続けるのは大変ですが、いつか普通の日々に戻った暁には、「外食たくさんするよ」「旅行にも行くよ」と既に宣言し、今はその分蓄えておこうと思っています。

最近、家族や友人たちと話すのは、「コロナが終わったら○○したいね」という会話。これを話すと、気持ちが明るくなり、みんなポンポンと自分のアイデアが出てきます。

大人もそうですが、子どもたちも行動が制限されて、ストレスがたまっている現状ですので、その緩和剤として、コロナ収束後にやりたいことリストを作ってみるのはいいアイデアです。

その日が来た暁には、これまで以上に、「普通の日々のありがたみ」を感じるのは間違いありません。それを指折り数えつつ、今は精神的に参らないように、それぞれが前向きなマインドセットを心掛けるのが大切だと感じています。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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