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教えて飯田先生!「気になる5歳児の教育計画とは?」

教えて飯田先生!「気になる5歳児の教育計画とは?」

先日文科省から発表された、「5歳児の教育計画」。小1プロブレムが理由のひとつとされていますが、幼児教育が小学校の学びと結びつきにくいという声も上がっており、実行までの課題はまだまだ山積みのようです。

そこで、幼児教育のプロである伸芽会教育研究所の飯田先生に、気になる5歳児の教育計画や幼小一貫の学びについてお話を伺いました。

日経DUAL記事

5歳児教育計画とは?

2019年10月に無償化された幼児教育・保育。次なる狙いは、共通のプログラムにより「すべての5歳児に一定程度の学びの質を保障する」というもの。その理由として、小学校入学後に集団生活になじめなかったり先生の言うことが理解できなかったりする「小1プロブレム」の解消を図るためとされています。

特別委員会では、幼児期に重要な学びを「五感を通じた体験」「遊び」などと示し、「遊びの中で考え、経験を生かし、友達と協力しながら学び、一人ひとりの特性に応じた指導が大切であるとしつつも、「幼児教育が小学校教育にどうつながるかイメージがしにくい」「幼児教育の現場でカリキュラムの参考になる資料が少ない」などの声が出ており、今回の5歳児向けプログラムでは、より具体的に幼児教育の現場で実践できる学びを示す予定だとしています。現在、今年度中にプログラムをまとめ、来年度から一部地域の幼稚園や保育園で実施される予定だそうです。(2021年8月時点)

現状の課題

飯田先生に現状の課題を伺うと大きくわけて以下の3点があるとのこと。

その1 幼児教育は義務教育ではない

日本では小学校からが義務教育なので文科省で全国一律でさまざまな取り決めをすることができますが、幼稚園や保育園は義務教育ではありません。そんな5歳児にどのように教育プログラムを施すのか、まして全国一律とすると、さらに課題が多いように感じます。

その2 幼稚園(文科省)と保育園(厚労省)で管轄が違う

ご存知の方も多いと思いますが、幼稚園と保育園では管轄する省庁が異なります。さらに、それを解消すべくできた認定こども園(内閣府)も、構想はよかったけれど結局は3つがバラバラという状態です。管轄省庁を横断した教育プログラムを作るとすると、まとめるのはかなり難しいのではないでしょうか。

その3 誰が何をやるのか

もし仮に教育プログラムが出来上がったとして、指導するのは幼稚園や保育園の現場の先生たちですよね。ただでさえ多忙な先生方の負担を増やすことにもなりかねませんし、結局は枠組みだけ決めてあとは「園でおまかせ」となると、格差も生まれてくるでしょう。2020年教育改革による小学校の英語やプログラミング教育と同じことになるのではと思ってしまいます。

幼児教育は戦後からずっと「現場に丸投げ」状態

「幼児教育は戦後から今もずっと“現場に丸投げ状態”なんです」と飯田先生。

令和の時代になった今も、幼児教育を知育偏重で考えること自体が無謀のように感じます。幼児期は小学校以降の学びの土台となる時期であり、遊びを通して発達をしていきます。文科省や国は、幼児のことをもっと研究すべきです。

そして、園に負担をかける「丸投げ」ではなく、管轄する省庁の整理や法律の改正なども併せて行うことを望みます。世界では、幼児期の教育が最も重要であると考えている国が多い中、日本では戦後からほぼ変化なし。これでは、少子化の日本がこれからの世界に通用する人材を育てられるのか疑問に思うところです。

もちろん、そのためには幼稚園や保育園の現場の人材教育の育成、地位の向上についても早急に改善していくべきだと感じています。

今の時代にあった幼児教育論を議論すべき!

今の時代にあった幼児教育論の一例として、飯田先生が提案するのは以下の2つ。

・幼児から高校まで一貫した学びを

伸芽会が重要だと考える「幼小一貫」という学び。私立ではこの考えが主流になっていますが、子どもの発達を考慮すると、幼児と児童を分断しない学びがとても重要です。たとえば、幼稚園と小学校の交わりがある小学校が公立でも一部ありますが、これはお互いの刺激にとてもいい影響があります。指導する小学校の先生方も幼児の発達状況の理解があるかはとても重要です。幼小一貫の学びの重要性を改めて議論するとともに、私自身は幼児も高校も義務教育にしていいと思っています。

・子育てと働く環境を分断しないこと

今は、小学校受験されるお母さんもワーキングマザーが半数程度入る時代です。つまり幼児の教育を考える上では子育てと働く環境を分断しないこと。企業内託児も増えつつありますが、これから起業する人はそこまで考えてほしいですね。

小1プロブレムが都市部に多いわけ

飯田先生曰く、「都市部全てをひとくくりにはできませんが、傾向として小1プロブレムが都市部に多いのは、親の意識の変化と一部教師の力量不足にある」と考えているそうです。

親の意識の変化というのは……
・都市部の親は一流企業務めが多い→学校の先生をリスペクトしなくなる
・叱らない教育の誤解→何をやっても許され、毎日学校に行くのが嫌な子が出てくる
・忙しい親の都合で幼児期の体験力が不足→学びの土台が作られず学習についていけない
など。

「地方(やかつての日本)では、都市部に比べて親から先生への信用や信頼感が高いですし、子育てにおいて体験不足のお母さんがいれば地域の人たちなどが“それじゃダメよ”と教えてくれたりしますよね。交流が少ない都市部の子育てでは、お母さんたちが孤立していて頼れない環境にありますし、中には“しつけも教育もお金で解決すればいい”と考えていらっしゃる人がいて、そこが問題なんです。

もちろん、都市部でバリバリ働く共働き世帯の保護者の方に比べると、教師側(多くが地方の国立大学教育学部を出てすぐ学校に勤務する公務員)の社会人としての経験不足や力量不足についても目を向けなければいけません。学校側もさまざまな分野から現場の刺激となる人材を投入するなど、今の時代にあった改革をしていく必要があると思います」(飯田先生)

地域や家庭を巻き込んだ幼小一貫教育の必要性

「ワーキングマザーも多い今、家庭だけにしつけや教育を押し付けるのはナンセンスです。

私は、今の時代こそ、“地域で子どもを育てるべき”だと思うんです」と飯田先生は言います。

たとえば元気な老人たちが子どもを見てもいいですし、孫を世話するじじばばに手当をあげるのもいいでしょう。老人たちの医療費を削るなら収入源も確保してあげるという発想です。もちろん子どもが独立した元気なシニア世代やお子さんがいないけれど面倒を見たいという人もいるでしょう。働くママたちも放課後の数時間を安心して働けますし、核家族の子どもたちにとっても家族以外の地域の人たちとの交流はいい刺激になるはずです。

「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」にも注目!

文科省では先日、中央教育審議会「初等中等教育分科会」から「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」が発足しました。
・すべての5歳児に生活・学習の基盤を保持
・幼保小連携で一人一人の発達を把握し早期支援につなぐ
・市町村教委と連携し、小学校教育に円滑に接続する
ことを目的としているようです。

「メンバーには、秋田喜代美先生(学習院大学文学部教授・東京大学名誉教授)や無藤隆先生(白梅学園大学名誉教授)など、伸芽会でも日頃からお世話になっている先生方も多数いらっしゃいますので、先述したような幼保小の円滑な架け橋となるような議論を期待して今後の取り組みに注視していきたいと思っています」(飯田先生)

著者プロフィール

SHINGA FARM(シンガファーム)編集部です。ママ・パパに役立つ子育て、教育に関する情報を発信していきます!
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