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今年こそもう悩まない! 「自由研究」のお悩みに科学のプロがアドバイス

今年こそもう悩まない!  「自由研究」のお悩みに科学のプロがアドバイス

いよいよ夏休み。小学校3年生くらいから始まる自由研究の課題に頭を悩ませる親御さんも少なくないはずです。そこで今回は、講談社の子育て情報サイト「コクリコ」(https://cocreco.kodansha.co.jp)と科学雑誌『子供の科学』(誠文堂新光社)によるコラボレーションイベント「自由研究」解決セミナーから、自由研究の始め方やまとめかたなどを解説したいと思います。教えていただいたのは、メディア・アーティストの伊藤尚未先生と、『子供の科学』編集長 土舘建太郎さんです。

日経DUAL記事

一人で完結できて、学びにつながる自由研究が理想!

事前に行われたアンケートによると以下の通り。
Q子どもの自由研究、保護者として重視することは?
1位 子ども一人の力でできる難易度のもの
2位 研究したことが社会生活で生かせる
3位 時間がかからないもの
4位 準備・片付けが簡単

やはり、できるだけ一人で完結できて、学びにつながるネタを探したいという気持ちが強そうです。

Q 具体的に自由研究に関してどのような悩みがありますか?
「兄妹それぞれの研究を考えるのが大変」
「そもそも、テーマを決められない」
「最後まで終わらない(結果が出ない)」
「子どもが途中で飽きる」

「自由研究といっても観察から調べ学習、工作系などさまざまですが、科学や理科がテーマの方が、研究のまとめ方のパターンが決まっているので、自由研究としては取り組み安いと思います」(伊藤先生)

時間がなくても自宅のキッチンでできる実験

__ここからは実際におすすめの自由研究のアイデアをいくつかご紹介いただきます。
伊藤先生:これはビタミンCを調べる実験です。先にお見せしたのはマジックとしてコーラのボトルに入れていましたが、中身はうがい薬(ヨウ素液)です。これにCCレモン(炭酸水)を混ぜると、なんと透明になるんです。これは、ヨウ素はビタミンCが入ると無色化する性質があるからです。

土舘さん:例えば、オロナミンC、レモン果汁など、ビタミンCが入っていそうなものを集めて、色がどのぐらい消えるかを調べると立派な自由研究になりますよね。まとめかたは雑誌『子供の科学』でも紹介しています。

伊藤先生:深堀りするなら、例えば「黄色いモノにはビタミンCが含まれている」という仮説を立て、黄色の野菜やフルーツ、野菜を茹でた水などについて調べてみるのも面白いと思います。家の中にもたくさん実験素材があるので手軽です。
黄色のモノや野菜だけを集めてうがい薬に入れて、その結果をまとめるのでもいいですし、誌面にあるような化学式を使ってその原理まで調べてまとめると、中学生レベルの研究に発展できると思います。その子の興味次第で深堀りしていきましょう。
『子供の科学』2020年6月号より。
『子供の科学』2020年6月号より。(コカネットプレミアム(DX)会員になると、オンラインで過去の記事が電子版で見られます)

低学年にもおすすめ! リリエンタールの単翼グライダーを作ってみよう

__とにかく手軽にできる自由研究はありますか?

伊藤先生:このようなかんたんな単翼グライダーを作って飛ばす、工作系の実験がおすすめです。100均でも売っている素材を切り取るだけでできます。飛ばすのが楽しいので低学年も飽きずにできますね。翼の角度や素材を改良すると、飛び方や曲がり方が変わるので、その変化を表や自分の言葉でまとめてみましょう!

土舘さん:ちなみにリリエンタールさんは、ドイツの機械製作者で、ハンググライダーを開発して自ら飛んだ先駆者でもあるんですよね。シンプルだけれどとても奥が深い実験です。
雑誌にはこのグライダーの型紙がついていますから、それに沿って切るだけです。かんたんにつくれるので、何度でも工夫して、試しに飛ばしてみることができる手軽さは魅力的ですね。
『子供の科学』2022年1月号より。
『子供の科学』2022年1月号より。(コカネットプレミアム(DX)会員になると、オンラインで過去の記事が電子版で見られます)

伊藤先生:実はこの形は、アルソミトラという植物の種の形と類似しています。それを踏まえて、高学年には、いろんな形の種があること、植物が種を拡散する理由を調べてみると、植物の生きる力や仕組みが学べていいですね。

【上級編】絶対驚かれる! 伊藤先生の電子工作ポケデン

__人と被らないハイレベルな自由研究をしたい人におすすめはありますか?

土舘さん:アッと驚かれる研究と言えば、雑誌『子供の科学』で伊藤先生が連載しているポケットに入る電子工作、通称“ポケデン”があります。お菓子の箱の中に電子回路を組み込むことで、持ち運んで遊べる秘密道具になります。伊藤先生、自由研究におすすめのポケデンはどれでしょう?

伊藤先生:これは、光るLEDの色で温度が分かる「サモダス」というポケデンです。熱中症対策に役立つ便利な装置です。部屋に置いておくだけで、熱中症が避けられるかも? というテーマも夏にぴったりですね。
サモダス

こちらは、音が鳴る電子工作をポッキーの箱の中に入れた「スティックサウンダー」です。
シンセサイザーのような仕組みで簡単な音楽を奏でられるので楽しく遊べます。
詳しくはこちらの動画を!(https://youtu.be/j6IjXi3g96Y

パラパラ影絵箱Pi
こちらは、パラパラアニメを映す仕組みをお菓子の箱に入れ、箱の一面をスクリーンにして映し出す装置「パラパラ影絵箱Pi」です。絵が動くのが楽しく、女の子にも人気があります。詳しくはこちらの動画を!(https://youtu.be/Y5zIyt9TtAI

土舘さん:はんだごてなどの道具を準備して、はんだづけをする必要があるのでハイレベルな工作ですが、ワークショップに参加したお子さんは意外とすぐに慣れて、皆さん装置を完成させることができます。やってみたいという場合は、子供の科学のWebサイト「コカネット」(https://www.kodomonokagaku.com/)に道具の入手方法やはんだづけのやり方、ワークショップの情報などが出ているので、ぜひ見てみてください。

アウトドアなら100均材料で作る「サバイバル」実験も!

__親子で一緒に楽しくできる自由研究はありますか?

伊藤先生:夏休みを利用してキャンプなどに行かれる際に自由研究ができてしまう、「サバイバル実験」もおすすめ。テントづくり、火起こし、ご飯炊き、ソーラークッカーなどを100均やホームセンターにある身近な材料だけで作ってみようという実験です。
例えば、固形燃料やアルミの容器でご飯を炊くことができますが、さらに研究を深めるならご飯が炊ける過程を見るために透明の容器でやってみるのも面白いと思います。何分後に沸騰して、お米はどうなったか、などを観察して記録していけば、立派なレポートになります。どれくらいでこげるか、途中で蓋をとったらどうなる? なども面白いですね。

土舘さん:他にも飲み水の確保、火のおこしかた、ロープの結び方、布やトイレの作り方などサバイバルに関する知識は書籍『ビジュアル「生きる技術」図鑑』(誠文堂新光社)もヒントになると思いますよ!

自由研究に完璧な終わりはない!

__自由研究を上手にまとめるコツはありますか? 「わかったこと」、「考察」、「まとめ」などの項目の違いがよくわからないという意見もありました。
伊藤先生:やったことの結果が「わかったこと」、その結果からこういうことが考えられるというのが「考察」ですね。最初に紹介した実験だと、「黄色いものがビタミンCなのではないか」が考察ですね。そこから、もっとこんなことをやってみたい、調べてみたいという次の課題を見つけて「まとめ」にするのがいいでしょう。
思ったような結果が出なくて困ったというお悩みも多いようですが、そこまでやったことをアピールすればよいのです。失敗を踏まえて、次にやるならこういう方法でやりたい、など課題が導き出せていれば、いいレポートになるし、やる気のアピールにもなります。「自由研究に完璧な終わりはない!」と考えておく方がいいと思いますよ。

__観察系の研究だと、思うような変化が見つけられず時間切れになってしまうことがありますよね。アンケートでは生まれたばかりの妹さんを観察したものの、あまり変化がわからず夏休みが終わったという声がありました。何かいいアドバイスはありますか?
伊藤先生:どこを観察するかが重要です。赤ちゃんなら「こういう泣き方のときは何を求めているか」などを観察するのもいいですね。いつも赤ちゃんと一緒にいるお母さんに「この泣き方はミルク」「この泣き方は眠い」「この泣き方はオムツを変えてほしい」など具体的に聞いて観察して、レポートにすれば立派な自由研究になります。

土舘さん: 専門家に話を聞くというのは、自由研究のレポートを充実させるよい手です。ある意味、お母さんはその赤ちゃんの専門家ともいえそうですね。

__最後に、自由研究に悩む親御さんにアドバイスをお願いします。
伊藤先生:親御さんの関わり方としては、「案を出す」「親が自分で楽しむ姿を見せる」
「飽きないように導く」のが主な役目になると思います。先ほども話が出ましたが、自由研究を充実させるには、専門家に話を聞くことが有効です。例えば動物園や水族館に行ったらぜひとも飼育員に声をかけてみてください。専門家に話を聞くことで、本やネットにはないオリジナルの情報が得られるはずです。ちなみに、私が仕事をしている「伊豆シャボテン動物公園」もたくさんの動物や植物がいるのでおすすめです!

土館さん:体験をしながら自由研究のテーマ探しをしたいという人は、ぜひ「自由研究フェス!2023」(https://www.kodomonokagaku.com/jiyukenkyu-fes/)に参加してみてください。ワークショップに参加することで、その日にほとんど自由研究が完結できるプログラムもあります。7月30日、8月5日、6日、11日の4日間、8月6日だけは東京会場のリアル開催、他の3日間はオンラインで受講できます。
また、生き物の観察を自由研究にしたいという人は、雑誌『子供の科学』2023年8月号で付録「生き物観察自由研究BOOK」がついています。自由研究におすすめの昆虫や植物の種類や注目ポイントを紹介しています。さらに、全国の科学施設とコラボレーションして、付録を持っていけばアドバイスをもらえるところもあります。ぜひ参考にしてみてください。

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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