美食の国フランス、子どもへの食育を推進する「味覚週間」とは?

美食の国フランス、子どもへの食育を推進する「味覚週間」とは?

毎年10月中旬の1週間、フランスでは食育を推進する「La semaine du gout(味覚週間)」が開催されます。このイベント期間中、学校や幼稚園では具体的にどのようなことが行われているのでしょうか?味覚文化を大切にする美食の国フランスの食育事情について紹介します。

日経DUAL記事

33年目を迎えた「味覚週間」、国内での認知度は8割以上

毎年恒例の「味覚週間」は、「より多くの人に味覚について伝達する」ということを目的としています。1990年から始まり今年で33年目を迎える国を挙げての大イベントで、フランス国内での認知度は8割以上にのぼるといわれています。

イベント内容は年によって違いますが、各地域のレストランや小売店、農家、健康団体、地方自治体などがそれぞれ自由に企画。試食やワークショップなど味覚に関するアクティビティを地域ごとに登録し、プログラムに参加します。

学校では食のプロによる特別授業などを実施

期間中は全国各地で「味覚」に関するさまざまなイベントが開催され、学校では「食」に携わる地域のプロが食に関する特別授業に取り組みます。

学校の先生がオフィシャルサイトを通してプロに特別授業を申請することもできるため、ほとんどの学校が特別授業を実施。「食べるものを選ぶ重要性」について、子どもの年齢に合わせた授業がプロによって行われます。

また、この期間は学校も積極的に食育推進の取り組みを進めます。学校食堂には普段は提供しないような外国料理が並び、クラス単位で街のマルシェやパン屋さんを見学します。授業にも食に関する内容を積極的に取り入れるなど、いつもとは違ったイメージで食の楽しさを知ってもらうように工夫を施すのです。

校外への見学参加や外部の人との触れ合いで興味が深まる

授業の具体的な取り組みとしては、「味覚の授業」「味覚の食卓」「味覚のアトリエ」の3つがあります。

「味覚の授業」では、「“五味”をじっくり味わうレッスン」や「自分の五感を使って1つの素材を味わう」といった授業が行われ、味覚の原点をさまざまな体験を通じて学びます。

「味覚の食卓」では、味覚週間の期間中に企業や飲食店が街に設置したさまざまな試食ブースやワークショップを見学したり、参加したりします。課外活動のように学校から出かけるため、ちょっとした遠足気分を味わえて子どもたちも楽しそうです。

「味覚のアトリエ」は、シェフやパティシエ、パン屋、八百屋、魚屋など街にいる食のプロフェッショナルが学校の授業に参加。有名シェフやパティシエとの調理実習や、魚のさばき方や小麦の挽き方などを体験できるクラスもあるそうです。生徒の保護者が食に関する職業の場合も、積極的に参加してくれます。

このように学校外へ見学に行ったり食に携わる人たちと触れ合ったりすることで、子どもたちの味への関心や興味はより深まるのです。

小学校や幼稚園ではさまざまなプログラムを提供

筆者には年中組と小3の娘がいるので、各クラスのプログラムの一部を紹介します。

年中組のクラスでは、その日の「色」を決めて食育や調理を掛け合わせるという内容です。

全員で毎朝マルシェに行って買い物をし、まず食材の匂いや味を体験。そして「紫の日には紫色の野菜や果物の絵を描き、葡萄といちじくのタルトをみんなで作る」、「緑の日には緑色の果物だけでフルーツサラダを自分で作る」というように、一週間の毎日で工夫されていました。

小3のクラスには街の有名な星付きレストランのシェフが来て、干し葡萄を徹底的に味わいました。まず、葡萄についての講義を受け、さまざまな品種があることや葡萄を使った加工食品などについて学びました。用意された全種類の干し葡萄を味わった後に、一粒を指で触り潰してみた音や食感、色味、味などをそれぞれが言葉で表現。さらに水で戻したり焼いたりして味わうなど、干し葡萄でありとあらゆることをしてから、シェフと一緒に干し葡萄を使ったレシピで料理を作り食べたそうです。

この期間の学食では、インドやタイ、ポルトガル、メキシコなど、さまざまな国の料理が提供されました。こういった体験をしたあと、娘たちは毎日のように進んで夕食作りの手伝いをしてくれるようになり、食への興味が深まったことを筆者は実感したのです。

まとめ

食育推進期間の目的には、とくに子どもに対して味覚教育を行うことが挙げられています。大切な文化の1つである「食」への理解を深め、食べる喜びを体感する機会を彼らに提供することが重要としています。

食べ物の役割や大切さを小さい頃からしっかりと理解させるフランスの「味覚週間」は、将来もバランスがとれた食生活を維持するためにとても役立つといえるでしょう。

<参考URL>
La semaine du gout:https://www.legout.com.

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

  • twitter
  • はてなブックマーク
  • LINE

関連記事

新着記事