インド式のインターナショナルスクールGIISは他のインターとどう違う?

インド式のインターナショナルスクールGIISは他のインターとどう違う?

グローバル・インディアン・インターナショナルスクール(GIIS)は、幼児教育から高等教育にいたるまで、国際的な評価の高いカリキュラムを提供する、インド式のインターナショナルスクール。

都内でも有数の私立小学校のIB初等教育でトップクラスの得点を出しており、CBSE(中央中等教育委員会)ランキングのトップ10に入る世界で唯一の海外インターナショナルスクールとしても話題に。

今回は、お子さんをGIISのシンガポール校と東京校に通わせていた穐吉さんにお話を伺いました。


穐吉なな子さん
戦略広報のジェイード代表。ロンドン大学卒業。リクルートで長年広報をした後、ベンチャー立上げと教育を目的に母子でシンガポール移住。上のお子さんが4歳のときにシンガポールへ。現地の幼稚園からGIIS、その後7歳で帰国しGIISの東京校へ転校。現在は老舗の男子校インターナショナルスクールの中学へ通う。子育てやインターに関する情報発信も(https://note.com/jayid_nanako)。
日経DUAL記事

インド式インターナショナルスクールの特徴とは?

__インド式のインターナショナルスクール(GIIS)は他のインターとどんなところが違うのでしょうか

【英語力について】
入学時の英語力は他のインターに比べて柔軟だと思います。

息子の話では、英語があまり話せない状態で入学してくる子もいたそうです。私が数年前にGIIS東京校の校長先生にお話を伺った際、選考基準に関しては入学時の英語力はあまり関係なく、「この学校に合う子かどうか」「自分の力を伸ばせるか」を見ているとおっしゃっていました。

シンガポール校でも同様にフレキシブルで、説明会や入試も大々的にはしておらず、見学時に英語と算数の簡単なテストを受けて入学資格を得ました。

【どんな授業があるの?】
日本でいう年長の4月から1年生が始まるので、最初は工作や遊びをしながら学ぶプログラムが多かったですが、高学年になるにつれ、いわゆるアメリカ系インターナショナルスクールのような主体的な学びだけではなく、日本的な座学もきっちり行います。

たとえば、サイエンスでは植物の特徴や部位の名前、社会ではインドの地理や民族といったことも覚えて、知識の定着をはかるテストもありました。

欧米式のインターナショナルスクールは「Googleで調べればいいことを覚えるよりも、正解のない問いに対する力に注力したい」と考えている学校が多い印象ですが、インド式のGIISでは、「ある程度のインプットがあってこそ学問は発展する」と考えていると感じます。


地球と月の自転についてみんなの前でプレゼンしている様子。その子の得意分野を生かして、みんなの前で発表する機会を与えてくれます。

【気になるインド式算数のこと】
2桁×2桁のいわゆるインド式算数は一応授業で教えてくれますが、実際に使うことはほとんどありません。

また、算数の授業自体がものすごく進んでいるわけではありませんでした。ただ、数学が好きな先生が多く、息子も算数が好きで得意だったので、そういう子に対しては授業以外の時間に難しい問題を出してくれたり、外部の算数のコンテストを勧めてくれるなど、押しつけはせずに学びたい子にはどんどんやらせてくれる環境はよかったです。

【部活動はあり?なし?】
GIISはグラウンドがないので近隣の小学校のグラウンドなどを借りて体育を行います。

日本の小中学校ほどはスポーツにはあまり力を入れていない印象です。物足りなさを感じた息子は小学校の頃から地域の野球チームに入り、体を鍛えることができました。野球チームのおかげで地域にも友達ができたのはとてもよかったです。

【先生はどんな人?】
圧倒的に女性が多いです。自分の子がGIISに在籍する先生も多かったので、としても話しやすく、子どものことをよく考えてくれていました。

【どんな家庭が多いのか】
出入りも多いので常に変化していますが、大体の印象としては、一番多いのはインド周辺の地域から仕事で日本に駐在している家庭(4割ほど)。

2割がインド系とのハーフ。2割が純日本人。1割がそれ以外の地域から来ている家庭でした。とは言え、駐在歴が長くかなりの確率で日本語が話せる方ばかりだったので、親同士の交流に困ることはなかったです。

【校内のグローバル度】
高いと思います。日本人が想像しがちな欧米系は少ないですが、インドやその周辺国にルーツがある方、海外暮らしが長い日本人など、かなり多種多様でグローバルな環境です。


こちらは、サイエンスの授業で、重力について「劇場型」の工作を作って説明している様子。

GIISでは主張する突破力が身につき、息子の進みたい道が見つかった!

__GIISに通わせてよかったなと感じる点は?

GIISでは「主張すること」を学びました。「国際会議でもっとも難しいのはインド人をだまらせて日本人をしゃべらせることだ」なんていうジョークがあるくらい、インド人はすごく主張をするんですね。そんな環境にもまれながら授業を受けることで、日本人には足りないと言われる“突破力”が身についたと思います。

余談ですが、昨年、息子が短期留学先のイギリスでインド人の子がクラスメートにいたそうなのですが、その子の前でインド国歌(超難解な歌詞)を歌ったそう。それで大爆笑を誘い、すごく仲良くなれたと話していました。インドは2025年に人口は中国を抜くと言われていますし、日本とは友好国。これからも長い付き合いとなる国であることに、間違いはありません。

また、息子は将来、数学や物理の道に進みたいと思っていまですが、一方で体育や音楽は苦手です。日本だと「それでもがんばれ」となるところを、「それでもいいんだよ」と息子の好きな部分を見つけて伸ばしてくれたのはGIISの良いところと思います。

GIISにかかわらず、インターナショナルスクールに通ってよかった点は、当たり前に「英語で」学べる環境です。日本語と英語はもっとも遠いと言わる言語ですが、幼いうちから習得できたことはラッキーだったと思います。活躍する舞台として世界という選択肢が増えたこと、視野が広がった点はとてもよかったです。


お弁当はサンドイッチなどの他、カレーを持ってくる生徒も大勢います。キャンティーン(食堂)で購入もでき、息子のお気に入りはバターチキンカレーとナンでした。

インターナショナルスクールに通わせる保護者が抱える不安との向き合い方

__インターに通っていて不安に感じたことはありますか?

親の覚悟という意味では不安になることは多々ありました。

たとえば、インターは日本の文科省の義務教育に該当しないので、毎年「あなたは子どもに義務教育を受けさせる義務を果たしていません」と書かれた書類が送られてきます。義務教育を受けさせていないから、と突然区の方が自宅まで調査に来たこともありました(確認して問題ないとわかっていただけましたが……)。

さらに、「本当にインターに入れ続けるの?」などと横やりが入ることや、日本の学校に通うお友達が受験塾に行き始める中、「うちは受験しなくていいんだっけ?」と不安になることもありました。そのたびに家族で話し合い、わが子を信じて進んできました。

この数年、少子化や円安、世界の時価総額上位に日本企業が1社も入っていないなど、国力の低下を肌で感じる中で、「これからは答えのない世界であること。自分で課題を見つけ、世の中のためにできることを必死で考えぬいて模索した子は強いのではないか」という考えに至り、ようやく夫婦でこの道でよかったと思う機会が増えたところです。

子育てに正解はありませんが、これできっとよいのだと信じて、未来も進むしかないと思っています。

文科省も普及を推奨する国際バカロレア(IBプログラム)とは

__現在は別のインターナショナルスクールに通われているそうですが、どんな理由からでしょうか?

きっかけは、GIISでスタートしたIBプログラムです。厳選された資格をもつ指導者が教えてくれたGIISでのIBプログラムが本当に楽しかったようで、GIISでのPYP(後述)が終了するタイミングで今の学校へ転校しました。

私もまだIBプログラムについて勉強中ですが、簡単に言うと、探求型の学習カリキュラムで日本国内に限らず、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの世界各国で認定校が存在します。カテゴリーは3~12歳のPYP、11~16歳のMYP、16~19歳のDPの3つに分かれています。

今の学校で採用しているのはDPなので、今13歳の息子は本格的なIBプログラムのための準備段階ですが、いわゆる暗記ものの勉強はほとんどなく、教科書もありません。

各教科、テーマをもとにディスカッションしていきます。たとえば、社会の授業では「世界中で子どもが毎年何百万人と姿を消しているのはなぜか」という課題を与えられ、自分たちで調べます。

人身売買、誘拐、など悲しい現実を知り、それらをなくすためにはどうすればいいかを話し合い、スライドを作って発表します。

いわゆるテストの点数だけで評価は決まりません。最終的には、社会活動などもしながら大学生のような探求学習をすると聞いています。

英語力に関しても、グレード8(中学生)になると、学校で扱う題材も抽象的になってきて、ポエムやSF小説、映画の台本などを読んで技法を論じるなど、母国語でも難しいレベルの内容だと感じます。

語学習得の先のビジョンを考えて進路を選ぶといい

__わが子をインターに入れたい親御さんにアドバイスをいただけますか?

今でも私はよくやっているのですが、親だけでなくお子さんとともに、どんなことに興味があるか、どんな学びをしたいか、将来どんな仕事をしたいか、などを色々話して、みんなで納得して進むのが良いのではないかと思っています。

英語はインターナショナルスクールに入れば話せるようになります。どこの学校へ行っても同じですが、成績、友達関係、先生との関係、思春期、反抗期など、さまざまなハードルは誰にも訪れます。ビジョンを家族皆で共有して進むことで、そうしたハードルも乗り越えられるのではないか、と思うからです。

__息子さんはいつ頃から将来やりたいことを見つけていったのでしょうか

長男は、小さいときから算数や物理が好きで、小2で相対性理論に興味を持ち始めました。「物理学者になって四次元の謎をときあかしてみたい」という夢を持つようになった小4からは(今でも)大学院生に家庭教師に来ていただき、世界を広げてもらっています。

英語を理解できることの良さのひとつは、文献やメディアなど情報ソースが無限に広がることです。

そうした情報のおかげなのか、今の彼の夢は、「物理の知見を使って社会課題を解決するサービス」を作るTechエンジニアだそうです。文系の私には理解不能ですが(笑)、いつまでも自分のワクワクを大切にする子であってほしいと思います。

一方、まだ未就学児の娘もいるのですが、彼女は幼少期の私にそっくりで、わが道を行く予測不可能なタイプです(笑)。

歌やダンスが好きなのかなと思っていますが、彼女が夢中になれることを応援してあげたいですね。これから先も、兄妹や誰かと比べず、本人が納得できるまで話をしながら、一緒に考えて乗り越えていけたらと思っています。

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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