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ロックダウン中でも、子どもの興味を学びからそらさないリモートスクールとは?

ロックダウン中でも、子どもの興味を学びからそらさないリモートスクールとは?

新型コロナウィルス感染拡大防止のため、長期にわたるロックダウンを強いられた米国カリフォルニア州ですが、子どもの学びを守るためにロサンゼルスのミドルスクールではどのような対策がとられていたのでしょうか。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に併設するミドルスクール(プライベート)にて、実際に行われていたリモートスクールの様子をレポートします。

日経DUAL記事

時代に合わせたトピックとアフターコロナを視野に入れた教育

ロサンゼルスの多くの私立校では、ロックダウンが発表された翌日からZoomやGoogle Classroomを利用したリモートスクールに切り替わりました。

日頃からパソコンを使用していたこともあってオンラインへの移行はスムーズに行われ、朝9時から午後4時まで、1授業15~20名規模のリモートスクールが実施されました。

新型コロナウィルスや、同時期に米国で起こっていた社会問題をトピックにした内容も多く扱われました。例えばヒューマニティ(教養)のクラスでは、アフターコロナの自分たちに向けたタイムカプセルをインフォグラフィックで作成するというグループワークがありました。

グループごとに着眼点はさまざまでしたが、ポイントとされていたのは「正解のない問いに自分たちなりの答えを出し、それを可視化すること」であり、自由な発想力が求められていました。

そして、新型コロナ関連で気になったニュースを選び、自分たちがニュースキャスターとなってスマートフォンアプリで番組を作るという授業もありました。

動物園の動物を感染から守るニュースや、南アフリカの野生動物が山から降りて来て街に出ているニュースなど、子どもらしい着眼点で選ばれたニュース番組はとてもポジティブなものでした。


(パソコンでのオンラインスクールの様子)

米国で始まっている新しいリーダーシップ教育

米国教育の特徴としてたびたび挙げられるリーダーシップ教育も、新型コロナにより変わりつつあります。

ロックダウン前に子どもたちが取り組んでいた不用品やアートサプライを材料にして「街を作る」グループワークは、リーダーシップやチームワークを学べる代表的な授業の1つですが、これもオンラインで実施されました。

ただ、実際に手を動かして工作をすることができないため、その部分に強い興味を持つ生徒に対しては、家庭でできる工作教育キットのサイト「ARTkit」が紹介されていました。


(休校前の直前まで学校で工作した街の様子)

米国では多くのミドルスクールで自己表現能力、想像力、コミュニケーション力を育てるためにシアター(演劇)の授業がありますが、こちらもオンラインで行われ、2~3名のグループが個々に撮影した動画を編集して1本の演劇作品を創るという課題が出されました。

子どもたちが順番にディレクターとなってショートムービーを作成することにより、オンラインであってもリーダーシップとチームワークを学ぶことができました。

ミドルスクールで一般的に行われている課外授業として、「タレントショー」というものもあります。

多くは有志がステージで歌やダンス、楽器や武道などのパフォーマンスを披露するもので、成績評価には含まれませんが、オペレーションも含めて生徒たちが主体となって行うイベントです。

今回は全生徒が自宅待機中であったため、基本的にすべての子どもの参加が推奨され、参加条件は「オンラインで3~5分のプレゼンテーションができること」のみでした。

そのため、ステージでは発表しづらかったお菓子作りやお裁縫、コンピュータープログラミング、ドラムやハープといった大きな楽器の演奏など、バラエティに富んだ内容になりました。

ステージに上がらずとも全員にスポットが当たる形となり、保護者からも好評であったため、今後もタレントショーの新しい形として継続される見通しです。


(実際に行われたタレントショーの一部)

興味をそらさないための学校によるさまざまな工夫

ロサンゼルスの公私立学校では、ロックダウンによるオンラインスクール中は成績評価をしない方針が大多数だったことから、授業に参加(ログイン)しない子どもがいることが問題になっていました。

そのため各学校は、ロックダウン中でもオンラインでの学びから子どもたちの興味をそらさず、楽しく能動的に参加してもらえるように、さまざまな工夫を凝らしていました。

例えばパジャマデーや正装デー、カラフルデーなどドレスコードのある日を設けたり、Zoomのバックとなる色とりどりの背景を自分たちで手作りして授業を行う日を作ったりなどの楽しい試みです。

自然と触れ合い自然を味わう「Nature Day」では、草花を髪や洋服につけて、できるだけバックヤードやテラスなどの屋外で授業を受けるよう推奨され、自粛中でも子どもたちが外の空気を吸って気分転換を図れるような気遣いもされていました。

通常の学校生活では、誕生日を迎える生徒のロッカーを皆でデコレーションするという文化がありますが、オンラインスクール期間中には、誕生日の生徒のバーチャルロッカーにオンライン上で装飾を施しました。

また、先生への日頃の感謝を表す「感謝週間」には子どもたちが手作りしたカードをスライドショーで流すなど、「周囲への思いやりを示すイベントは延期や中止をせず、今でこそのやり方を考えて実行しよう」という姿勢が一貫していました。


(Nature Dayの様子)

まとめ

印象的だったのは、アフターコロナについて「子どもたちと一緒に考える」という学校側の姿勢でした。

例えばディベートの時間には、オンラインでのディベートでどのようなことをしてしまうとほかの生徒の気分を害してしまうのか、オンラインで守るべきマナーはどんなものかを問いかけました。

または算数のクイズの時間には、オンラインでのテストではどのようなカンニング防止策が考えられるかという課題から、カンニングをする意味、すなわちテストを行う意味とは何かということを、子どもたちと一緒に考えていました。

2020年度高校卒業生に向けてオバマ元大統領が行った応援演説にあった「(今起こっていることに対して)大人たちは答えを持っていない」というメッセージと同様に、先生たちが「大人だから」「経験があるから」という理由で解決方法を持っているわけではないことを示していたのです。

例えばオンラインでのコミュニケーションなどにおいては、先生たちが教えることではなく、生徒たちと一緒に考えていくべき全く新しいチャレンジであることが伝えられていました。

リーダーとしての在り方や大学で学ぶ意義なども含め、今後米国をはじめとする世界の学校教育はシステム改革だけでなく、新しい形での大きな意識改革が求められていると考えられます。

【参考URL】
https://arckit.com

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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